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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

<NHK「朝ドラ」&「大河」の明暗>記事全文

2014年05月05日 | メディアでのコメント・論評



先日、週刊新潮に掲載された、「朝ドラ」と「大河」の記事。

新潮社のセレクトメディア「Book Cafe 矢来町ぐるり 」にアップされました。

これで、私のコメントを含む全文を紹介できます。


NHK「朝ドラ」絶好調なのに
「大河」絶不調の明暗

NHK朝の連続テレビ小説『花子とアン』が好調だ。昨年の『あまちゃん』、『ごちそうさん』に続き、またまた高視聴率を叩き出している。一方、NHKのもう一つの看板番組大河ドラマはどうか。ここ数年、絶不調に喘いでいる。この明暗、どうして?

1961年に始まるNHK朝の連続テレビ小説は、半世紀以上にわたって、“朝ドラ”の名で親しまれてきた。視聴率は常に上位。中でも83~84年放送の『おしん』は、平均視聴率52・6%という驚異的な数字を記録した。

その後、やや視聴率は低下したとはいえ、80年代は30%台、90年代も20%台をキープした。しかし、2000年代に入ると長い低迷期に突入する。03~04年『てるてる家族』(18・9%)から、12年『梅ちゃん先生』(20・7%)まで10年近くも10%台が続く。

そんな中、朝ドラの復活を高らかに告げたのが、昨年放送のご存じ『あまちゃん』(20・6%)。

「これまでの朝ドラにはなかった異色作でした。“女性の一代記”という定石を破り、脚本の宮藤官九郎さんのユーモアを取り入れながら、わずか4年間という異例の短い物語でした」

とは、上智大学の碓井広義教授(メディア論)。

「さらに、主役の能年玲奈のほか、小泉今日子、宮本信子も物語の中心人物として活躍する、“トリプルヒロイン”のドラマでした。実際の出来事である東日本大震災も取り込んで、朝ドラの既成概念を崩しましたね。朝ドラを見なかった新しい視聴者を多数呼び込んだと思います」


その『あまちゃん』に続いて放送されたのが昨年度後半の杏主演『ごちそうさん』である。

「新しいファンに加えて、『あまちゃん』から離れていた固定客の視聴者も戻ってきたのではないでしょうか」(同)

視聴率は前作を上回る22・3%を稼ぎ出した。

「この作品は専業主婦が主人公だから、主婦層に受けが良かったのでしょう。浮気騒動や小姑のいじめがあったりして、朝ドラならぬ昼ドラ的な要素が女性に支持されたと思います」

とはライター兼イラストレーターの吉田潮氏。

「それに『あまちゃん』の流行以来、朝ドラは職場や学校で話題になり、見ないとついていけないのが嫌で見ている人もいる」

加えて『ごちそうさん』の人気を高めたのは、番組に登場する料理ではなかったか、と見るのは映画評論家の北川れい子氏である。

「私の周りの女性陣からも『あまちゃん』より良かったと評判です。出てきた料理を作ってみようとか、こんな料理の仕方があったんだとか、ためになるんですね。ドラマに実用的というのは変ですが、女の人って実利を求めるというか、お得感がありました」

■歴史上のスターの払底

『ごちそうさん』に続いてこの3月末からスタートした新しい連続テレビ小説『花子とアン』も好調だ。初回の視聴率は21・8%を記録し、平均でも20%台をキープしている。小説『赤毛のアン』を翻訳した村岡花子の半生を描いており、

「貧乏な話や女学校で苦労するエピソードもありますが、彼女がちゃんと家庭を築き、翻訳家として大成することを知っているので、安心して見ていられるんです」

と北川氏。

「主演の吉高由里子さんは個性的な女優さんです。映画の授賞式などでとんちんかんな受け答えをしたり、癖のある女優だなと思っていました。見ていてハラハラさせられます。ドラマは筋書きがあるはずなのに、何かやらかすんじゃないかと思ってしまう。そういう彼女が主演なので、退屈しないのかもしれませんね」

ともあれ、朝ドラは絶好調。一方、NHKにとって、もう一つの看板である大河ドラマの不振は頭の痛いところだ。

63年にスタートし、87年の『独眼竜政宗』では平均39・7%という記録を打ち立てた大河ドラマだったが、ここ数年は低迷が続いている。10年の『龍馬伝』18・7%、11年『江・姫たちの戦国』17・7%、12年『平清盛』12・0%、昨年の『八重の桜』14・6%と低空飛行。今年の『軍師官兵衛』も4月20日放送は16・2%だった。

「豊作続きの朝ドラの一方で、大河ドラマを見る動機がない、というのが正直な感想です」

とは先の碓井教授。

「黒田官兵衛は歴史好きしか知らないし、軍師はあくまでサポート役。視聴者からは距離がある人物です。むしろ、彼が仕えている織田信長や豊臣秀吉の方が、これからどうなるのか気になってしまう。題材がマニアックなんです。主役の岡田准一は悪い俳優だとは思いませんが、線が細く、大河ドラマの重さに比べるとどうしても軽く感じます。『八重の桜』も、同志社の創立者・新島嚢は知っていますが、ほとんどの人がその奥さんは知りません。『平清盛』にしても、清盛は日本人の歴史観では悪役のイメージが強すぎる。そんな悪役の話を1年間も見る気にはなれません」


大河ドラマは、主に源平、戦国、そして幕末などから素材を集めてきたが、

「もう、歴史上のスターが出尽くしてきた、という感は否めませんね」

こう言うのは作家の麻生千晶氏である。

「大河ドラマ2作目の『赤穂浪士』であれば、その後も大石内蔵助に焦点を当ててスピンオフ作品も作ることができます。でも、戦国武将や剣豪、幕末の英雄などでテーマとなりうる人物はそれほど多くない。NHKは大河からの引き際を間違えたと言えるでしょう」

大河ドラマそのものが時代と合わなくなった、と言うのは、映画評論家の白井佳夫氏である。

「以前、私が携わっていた徳島テレビ祭に朝ドラのプロデューサーを招いた時、彼は“現代の忙しい人々が意識を集中できるのは、せいぜい15分”と言っていましたが、正にその通り。大河は実在の人物のドラマを45分間、しかも1年間にわたって見なければいけない。15分しか集中できない今の日本人にはとても無理」

日曜日午後8時になると多くの人々がNHKにチャンネルを合わせる。そんな時代はとうに過ぎ去ったのかもしれない。

(週刊新潮 2014.05.01号)

【気まぐれ写真館】 深夜のオアシス 

2014年05月05日 | 気まぐれ写真館

信州・安曇野・田植え

2014年05月05日 | 日々雑感














毎年恒例。

家内の実家で、田植えの手伝い。

この年中行事について、6年前に、このブログに文章を書いていたことを思い出しました。

懐かしいので、転載してみます・・・・


信州田植え紀行

この数日、信州にある<実家>2軒を回ってきた。それぞれの親の顔を見ること、こちらの顔を見せることが目的の第一。そして、大町にある家内の実家では、孫たちが「田植え」の手伝いをするのが恒例となっている。

母方の祖父母の家が農家だったため、私も子どものころは田植えや稲刈りをよく手伝った。特に田植えのときの、ふだんはあまり経験しない、あの泥の中に素足を入れる感触は今もしっかり記憶している。その年、初めて足を踏み入れた田んぼ。足の指と指の間に、にゅるっと浸入してくる泥も、しばらくは違和感があるが、そのうち、へんに気持ち良くなってくるのだった。

当時の作業は、まず「びく」と呼ばれる竹で編んだ小ぶりな籠に苗を入れ、腰にひもで縛りつける。その格好で田んぼに入り、親戚や近所の人たちと共に横一列に並んで、植え始めるのだ。大人たちは植えるのも速い。どんどん進んでいく。みるみる遅れながらも、こちらも必死で植えていく。ゴールとなる向こうの畦が、子どもたちには遥か彼方に思えた。それでも、数日がかりで何枚もの田んぼの田植えが終わると、ちょっと一人前になったような気がしたものだ。

そして現在。田植えは、ほとんど機械で行われる。家内の実家でも、もうだいぶ前に導入された田植え機「ISEKI 500DX」が活躍している。トラクターの後部に、苗のブロックみたいなものが5列セットされていて、田んぼの中を走行しながら次々と苗を植えていく。5列であるから、昔なら5人が並んで植える分を、一台で淡々と植えていくのだ。機械の中でも、植える「手」に当たる部分の動きは見事で、まるでロボットである。以前、人の手で行っていたころに1日がかりだった広さの田んぼも、田植え機なら3時間で済ませてしまう。こんなものを「普通の道具」にしてしまう技術力に、あらためて感心した。

で、人間である我が家の子どもたちが何をするかといえば、田植え機が植えられない「死角」の部分に苗を植えていくのだ。田植え機は田んぼの中を何往復かするが、畦の近くまで行ってはターンする。すると、「四角い部屋を丸く掃く」感じとなり、そこに余白が生まれる。機械が植え残した部分を、人間が手で植えていくわけだ。

こうして家内の実家がもつ何枚かの田んぼは、すべて田植えを終えた。昨日はややぐずついた天気だったが、今日はまったく雲のない晴天。苗が植えられたばかりの田んぼの水面に、北アルプスの山々が逆の姿で映っている。苗は急速に伸びるため、この美しい風景は期間限定の貴重なものなのだ。

その美しい田園風景の背後には、減反政策でしばられ、安い米価でいじめられる農家の現実がある。実際、一般的な農家が、米だけを作って生きていくのはほとんど無理というのが現状なのだ。生活していけなければ、当然後継者も生まれない。自分ちの代で農家は終わり、という家が集落全体で何軒もある。アルプスを逆に映す水田の風景も、いつまで見られるのか、わからない。

さて、田植えの手伝いのご褒美は、地元の女衆がやっている蕎麦屋さんだった。店の名前は『そば処 しみず』。清水という地区の農家が栽培した蕎麦粉を使って、清水の女性たちが打っている蕎麦を食べた。もりそば、かけそば、各650円。もりそばの大盛が800円で、それに山菜のかきあげ150円を追加した。そば本来のいい香りと、こしの強さ、素朴な味のつゆもよかった。

帰り道、近くの酒屋さんに寄って地酒探し。今日選んだのは『白馬錦 雪どけ吟醸』だ。720ml、1470円也。これまた蕎麦屋さんのある清水地区でとれた米で造られている。ラベルに刷り込まれた「安曇野契約栽培美山錦」の文字が嬉しい。入手した1本を大事に抱えて、信濃大町駅から新宿行きの「特急あずさ」に乗った。

(碓井広義ブログ 2008.05.06)


・・・・上の文章で、6年前、田植えを手伝っていた「我が家の子どもたち」。

大学生だった姉は、現在社会人となっており、このゴールデンウイーク中も、取材で関西を走り回っています。

また、中学生だった弟は大学生となり、運動系サークルのキャプテンとして、70名の仲間と河口湖で合宿中。

どちらも今年の田植えには参加できませんでした。

6年というのは、(当たり前とはいえ)結構まとまった時間なんですね(笑)。


【気まぐれ写真館】 信州・松本駅 

2014年05月05日 | 気まぐれ写真館