碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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ペプシCM「桃太郎」をめぐって

2014年05月06日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

日経MJ(流通新聞)に連載している、コラム「CM裏表」。

今回は、「ペプシネックスゼロ」の『桃太郎 エピソード・ゼロ』篇を取り上げました。


CM裏表
サントリー食品「ペプシネックスゼロ」

桃太郎の鬼退治 なにかの象徴か

童謡「桃太郎」では、桃太郎がイヌ、サル、キジに黍(きび)団子を与えて「家来」とし、鬼退治へと向かう。実は、戦(いくさ)装束である陣羽織の桃太郎が登場したのは明治期。「強い国へ」という時代を反映したものだ。それまでは2匹と1羽との主従関係もなかった。

ペプシネックスゼロのCM『桃太郎 エピソード・ゼロ』篇は、そのスタイリッシュな映像が見事だが、ここでの動物たちは桃太郎(小栗旬さん)の家来ではない。ナレーションでも「仲間」と呼んでいる。古来の桃太郎物語へと回帰しているのだ。

倒すべき敵は島の住民をおびやかす「巨大な鬼の一族」。全身が赤黒く焼けただれ、ぶすぶすと煙を立ち上らせる姿は不気味で怖い。また彼らとこの「島」の関係も、なぜ侵略するのかも不明だ。

時節柄、領土問題や集団的自衛権や同盟関係などホットな話題が頭をよぎる。鬼だけでなく、桃太郎やイヌたちも何の表象か。って、
それはもちろん考え過ぎだけど。 

(日経MJ 2014.05.05)


・・・・このCMの制作は、岡康道さんたちのTUGBOAT(タグボート)。

さすが映像のクオリティは尋常じゃなく、だから余計に「なぜ、今、
桃太郎?」とも思うんでしょうね。