東京新聞に連載中のコラム「言いたい放談」。
今回は、先日行ってきたAKB48の「握手会」について書いています。
AKB48の握手会
AKB48の「握手会」に行ってきた。いや、握手するためではない。
握手会というイベントそのものを見てきたのだ。
最近、AKB 48について書いたり、コメントしたりする機会が多い。
また大学のゼミでは、卒論のテーマにする学生も現れている。専門であるメディア論の研究対象として、「現地・現物」に接しておきたかった。
会場は晴海の東京ビッグサイト。一万人を超す人間が何十もの列に分かれ、自主的かつ整然と並んでいる光景はちょっと不思議だ。
しかも長い行列の先にあるのは、横並びの白いテントに過ぎない。
もちろん中には「直接会えるアイドル」がいて、握手と短い会話ができる。ただし、列の人数には違いがあり、人気度は一目瞭然。格差ならぬ完全な“落差社会”だが、その差をどこまで自分で埋められるシステムなのか、興味深い。
実は一番感心したのが、会場の一角に設けられた「支配人の部屋」だ。ここにはAKB 48を運営する事務所の代表がいて、ファンと個別面談をしている。支配人が聞くのはAKB 48への応援の言葉、意見や要望、時に強いクレームだったりする。
一人で何時間も立ったまま対応するのは大変なはずだが、ファン(顧客)と直接向き合うことで得られる“市場感覚”はかなり貴重だろう。このあたりにも人気の秘密がありそうだ。
(東京新聞 2012.10.17)