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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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産経新聞で、「10月改編」についてコメント

2012年09月12日 | メディアでのコメント・論評

この秋は、かつてのヒット作のリメーク版が並びます。

産経新聞の「10月改編」に関する記事の中でコメントしました。


10月テレビ改編 
往年の名番組が復活

□「料理の鉄人」「マジカル頭脳パワー!!」

フジテレビ系「料理の鉄人」、日本テレビ系「マジカル頭脳パワー!!」といった往年の名番組が、10月の改編で装いも新たに復活する。

制作者側は「焼き直しではない」と口をそろえ、かつてのファンを再びテレビ視聴に取り込みながら、新たな名番組の創造を目指す。(織田淳嗣、豊田真由美)

■海外から“凱旋”

フジは平成5~11年に放送した料理対決バラエティー「料理の鉄人」のリメーク、「アイアンシェフ」を、「奥の深道~同類くんの旅~」(金曜午後7時57分)の後番組として投入する。

「料理の鉄人」は、和食の道場六三郎氏、中華の陳建一氏ら「鉄人」と称される料理人と挑戦者が、与えられた食材を使って1時間の勝負を行う番組。F1調の料理実況も人気で、午後11時台の放送ながら平均視聴率が14・8%、特番で23・2%の人気を誇った。

米テレビ局が番組のフォーマット(制作手法)を購入し、2004年から「アイアン・シェフ・アメリカ」のタイトルで放送。人気は世界に拡大し、世界約80カ国で放送されている。

リメークに当たって司会者や料理人、対戦方法とも一新するといい、荒井昭博・編成制作局長は「海外でブラッシュアップされ、大きくなったアイアンシェフを放送したい」と話す。

■「脳トレ」先駆け

日テレの新番組「快脳!マジかるハテナ」(木曜午後7時)の前身は、「マジカル頭脳パワー!!」(平成2~11年)。板東英二の司会で最高視聴率31・6%を記録し、「脳トレ」の先駆けとしても知られるバラエティーだ。

プロデューサーの国谷茉莉氏は、前作の人気クイズ「マジカルバナナ」などについて「決して封印はしないが、ヒットさせるためには現代に沿った新しいものを追加しなければ何も生み出せない」と強調。

ジェスチャーやリズムなどヒットした要素を取り入れつつ「新しいクイズを開発して届けたい」としている。

ただ、こうした復活の動きに対して、上智大の碓井広義教授(メディア論)は「アイデア不足がここまで来たかという感がある。フジも日テレも作るべきものが見えなくなり、安心感の材料として、テレビが精力にあふれていた時代のヒット作に頼っているのでは」と手厳しい。

成功のカギについては「当時とは違う今の社会と視聴者の気分を、どれだけ古い企画の中に取り込めるかがポイントだろう」と話している。


■キョンシーも

素材を引用しつつも、全く新しい内容の番組もある。

10月12日スタートのテレビ東京のドラマ「『好好(ハオハオ)!キョンシーガール』~東京電視台戦記~」(金曜深夜0時52分)は、1985年公開のホラー映画「霊幻道士」のヒットでブームを巻き起こしたキョンシーを現代日本によみがえらせる。

今年1月、子供向けバラエティー「ピラメキーノ」でキョンシーのコーナーを設けたところ好評だったことを受けての制作という。

10月1日スタートのBS-TBS「それがしりたい~ニッポンおもしろいネ~」(月曜午後7時)は、TBSの「そこが知りたい」(昭和57~平成9年放送)のリメーク。

「当時の視聴者だったヤングアダルト層と呼ばれる35歳以上の人たちは、今、BSの視聴者になっている」と山口恩門(おきかど)プロデューサー。

「地上波では知的エンターテインメントが不足しているという声がある。以前の『そこが知りたい』支持層をめがけてやっていきたい」と話す。(視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区)

                  

■テレ朝 守りの姿勢


民放キー局の10月の番組改編率を見比べると、好調を維持したいテレビ朝日の“守りの姿勢”が浮かび上がる。主要局のプライム帯(午後7~11時)の改編率はTBS47.9%▽フジ27.4%▽日テレ14.0%▽テレ朝10.2%-で、テレ朝の低さが際立っている。

テレ朝の基本路線は現行のレギュラー番組の継続で、連続ドラマの目玉も「相棒」の新シリーズと手堅い。

「日曜洋画劇場」(日曜午後9時)の枠は、洋画の安定的なラインアップが難しくなっているとして、ドラマやバラエティーを不規則に組み込むなど「弱点のない番組編成」(同局)を目指す。

最も改編率が高かったTBSは「バラエティーの復権」を掲げる。月曜午後7時には女性向けバラエティー「私の何がイケないの?」を開始。テレ朝の裏番組「お試しかっ!」からの女性視聴者の奪還を狙うという。

(産経新聞 2012.09.11)



ドラマ「眠れる森の熟女」(NHK)の熟女たち

2012年09月12日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

日刊ゲンダイに連載している番組時評「TV見るべきものは!!」。

今週の掲載分では、NHKよる☆ドラ「眠れる森の熟女」について書きました。

NHKが、タイトルに堂々と「熟女」の文字を入れてきたあたり、いろんな意味で面白いです(笑)。


主演・草刈民代は疑問だが
見る価値のある熟女ドラマ

熟女ブームだ、そうだ。で、さっそく出てきたのがNHKよる☆ドラ(火曜夜10時55分)「眠れる森の熟女」である。

主人公は46歳の専業主婦(草刈民代)。銀行マンの夫と中学生の息子がいる。ごく普通の穏やかな生活が夫の浮気で一転、離婚話へ。妻は自立すべく仕事を探し、ホテルのメイドとなる。

実はホテルの若き総支配人(瀬戸康史)が裏で手をまわしたのだが、そのことを彼女は知らない。庶民熟女とイケメン御曹司の恋という、まるで“逆韓国ドラマ”みたいな設定だ。

まあ、それはいい。わからないのはヒロインがなぜ草刈民代か、である。これほど主婦が似合わない女優も珍しい。キッチンに立っても、夫や息子と向き合っても現実感が希薄なのだ。完全に演技力の問題である。

草刈民代といえば映画「Shall we ダンス?」。あのヒット作から16年経つが、バレリーナ(3年前に現役引退)としてはともかく、女優としてどれだけ進歩したのか疑問が残る。確かに熟女には違いないが、主役を張る“熟女優”の芝居とはとても思えない。

ならばこのドラマ、見る価値はないのか。いや、夫が走った中学時代の同級生で初恋の人、森口瑤子がいる。役柄というだけでなく、熟女優ならではのツボを心得た、余裕の振る舞いが魅力的だ。大人のオトコが見ておいて損はない。

(日刊ゲンダイ 2012.09.11)