『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

・『愛と青春の旅立ち』-13/リネットにプロポーズするシド

2012年07月05日 20時36分14秒 | ◆映画を読み解く
 
 【26】 高度訓練「不適性」により「DOR」をするシド
 
 ……「高度3万フィート(約9,000m)」想定の減圧訓練室。その中にザックシドシーガーたちの姿が見える。
 
       ☆
 
 戦闘機搭乗時には「酸素マスク」を付けるのですが、ここではそのマスクを外し、酸素欠乏による目まい、息切れ、閉所恐怖などを体感させるのでしょう。そういう徴候を感じたら、直ちに「酸素マスク」を着用して酸素を補給するという訓練です。
 
 のみならず、低酸素での「パイロット適性」のチェックという狙いもあるのかもしれません。結果としてシドは「不適性」となり、自ら「DOR」(自主退学)を申請します。あとわずか1週間で「訓練修了」でした。
 
       ☆
 
 ところが、この「DOR」をフォーリー教官による圧力と考えたザックは、それを「撤回」させようと「やっき」になります。そのアピール方法に、激高しやすいザックの一面が出ています。上官でもあるフォーリー教官に無礼な態度をとるわけですが、言葉遣いはひどいですね。
 
 しかし、ザックとフォーリー教官との間には、「シゴキともいえるあのペナルティ訓練」以降、不思議な「連帯感」が感じられます。「連帯感」というより、「できの悪い無礼な息子」を「好きなようにさせている父親」というところでしょうか。
 ザックも甘えているわけではないのでしょうが、「実の父親と息子」にしか判らないような「特異な馴れ」を感じさせます。
 
 まるで「実父バイロン」に甘えられなかった部分を、フォーリー上官に求めているような気がしないでもありません。無論、両者ともそのような意識はないのでしょうが。
 ともあれザックの一番の親友は、「パイロット(海軍士官)」への道を自らの手で閉ざしたのです
 
 
 【27】 リネットへのシドのプロポーズ
  
 ……タクシーに乗ったシドが、リネットの家にやってくる――。
 
       ☆
 
 彼はリネットに「指輪」を渡すため、つまりは「プロポーズ」をするための訪問です。リネットのことで思い悩んでいたシドが、「DOR」(自主退学)によって導き出した結論でしょう。
 
 久しぶりに見せるシドの明るい笑顔。“吹っ切れた”表情をしていますね。
 リネットは、シドが士官候補生の軍服姿ではないことに気づきますが、シドは無視したように上着のポケットから、「指輪」の入ったケースを取り出します。
 
 海兵隊の「パイロット」にこだわっていないシドと、あくまでも「パイロット(士官)」との結婚にこだわり続けるリネット。その違いが表れる場面です。
  
 指輪を渡されたリネットは、「パイロットとの結婚」という夢が、今まさに実現しようとしている感激と興奮を抑えることができません。
 
 シドは、すぐにでも判事の所に行って「婚姻の手続き」をしようとするのですが、ひとりはしゃいでいるリネットは、最初の赴任地にハワイを希望するなど、興奮冷めやらぬ状態です。
 
 しかし、その興奮も――、
 
 ――DORしたんだ。
 
 というシドの「ひと言」で吹き飛んでしまいます。何が起きたか信じられないといったリネットの表情。シドは再度「DOR」という言葉を口にするとともに、さらに追い討ちをかけるかのように言葉を続けます。
 
 ――パイロットには向かない。自分をごまかしてた。
 
 信じがたい表情のまま、リネットは聞き返します。
 
 ――じゃ、どうするの?
 
 シドはオクラホマへ戻り、そこで以前勤めていたデパートの仕事をする旨を伝えます。それに加え、母親が喜んでくれることや、お金がないため当分は親と同居することなども。
 
 失望と落胆の表情のリネット。無理もありません。パイロットの妻の夢も、海外赴任地での生活も、夢のまた夢と消えたのですから。
 意を決したように、リネットは口を開きます。
 
 
 ――シド。赤ん坊は間違いよ。
 
 つまりは「妊娠」していなかったことを明かしたものですが、言うまでもなく「妊娠」は、シドに対するリネットの「罠」だったのです。
 
 『何てこった』と言ったきり、すぐには言葉も出ないシド。大きな衝撃を受けたのは当然でしょう。
 
 それでもシドは、リネットから告げられた言葉の意味を確かめながら、これから先の「あるべき自分自身」を導き出そうとしているようです。そして、出した「結論」は――、
 
 ――とにかく結婚だ。君を愛している。いまそれがはっきり判った。ここにきて初めて幸せを知った。素直になり、君はありのままの僕を愛してくれた。僕の妻に、僕を世界一の幸せ者に……。
 
 シドは、左手の薬指に「指輪」をはめたリネットの手を握り締め、あらためてプロポーズの言葉を伝えます。
 
 しかし、シドの「プロポーズ」を受け入れることができないリネット。「断わりの言葉」を述べながら指輪を返し、はっきりと告げるのです。
 
 ――わたしはパイロットと結婚して外国へ行きたいの。パイロットエイビエイター)の妻に……
 
 リネットはそう告げた後、『あんたは馬鹿よ。大馬鹿よ。12週目にDORするなんて。大馬鹿よ』と言葉を浴びせます。そしてシドに背を向け、叩きつけるようにドアを激しく閉めて家の中に入ってしまうのです。
 
       ☆
 
 落胆と哀しみに打ちひがれたシド
 リネットを妊娠させたかもしれないと、「その事実に責任をもって立ち向かおうとしていた」シド。兄の身代わりとしての「パイロットの任務」と「戦死した兄の恋人との結婚」という二つを否定した上で、リネットとの結婚を選択したのですが……。
 
 素直に自分を振り返り、自分らしいと思って下したシドの結論……。
 
 それが「そうでない」としたら。「これしかない」との究極の選択が「否定された」としたら。シドは、これから先“どのように生きて行く”べきでしょうか……。(続く)
 
 
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   交わるはずのない世界にいきる一人と一体。
   そんな彼らが出会いふれあい語り合い、
   見つけた喜びは片手に収まる程度のものだった。
   思い出は、ささやかでいい。
   これは、棄てられた世界で生きる女とアンドロイドが、季節をたどる物語。

 〈日時〉 7月14日(土)・15日(日) 両日とも 13時~/18時~ 
 
 〈場所〉 エンジョイスペース大名
         (福岡市中央区大名1丁目14-20)
        ・地下鉄:空港線「天神駅」下車、徒歩10分
        ・西鉄バス:「西鉄グランドホテル前」バス停下車、徒歩7分
              「今泉一丁目」バス停下車、徒歩5分

 〈料金〉 前売り500円  当日700円
 
 〈ご予約・お問い合わせ〉erikoro4416@yahoo.co.jp
                  090-1196-7569 酒井
 〈公式FBページ〉  http://www.facebook.com/playunitkagikakko


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