昌栄薬品です
渡辺武著『わかりやすい漢方薬』第一章 漢方薬はなぜ効くか 1土と水と空気から生まれた
頭を使えば胃が痛む 気の病―頭が重いとか気分がすぐれないという程度の病気は、西洋医学では病気のうちに入りません。
普通、病院では薬物で中枢神経の興奮を抑えたり、眠らせたりするだけで、〝臭いものにフタ〟式のろくな治療法もない病です。
気とは大ざっぱにいって、精神や神経などと訳していますが、漢方では気はもっと広い意味にとっています。
気は気力でありエネルギーの源であるのですから、人間の主体性にも関係があります。
病気だって、〝気を病む〟と書いているくらいですから、人間にとっては、重要な役割をもっているのです。
気剤は気のたかぶりや停滞など、気の変調を整える方剤です。
気とか気剤は漢方独特のものです。
血とは血液であり、心臓や循環系統のこと、血剤は循環系の変調や結滞から起る瘀血などを治療する薬剤です。
水とは水代謝のことであり、口から吐き出す喀痰、汗、涙、大小便の排泄物関係のことです。
水分代謝の変調で起る病気を水毒ともいって、その治療には水剤、利水剤が用いられています。
人間の病因は大きく分けて、この気・血・水の関係から七つのパターンに当てはめられます。
気・血・水のそれぞれ単独の原因から来る病、気と血、血と水、気と水という二つが組み合わされた原因による病気、気と血と水の三つの要素が重なった病気、この七通りに分けられます。
たとえば、神経性胃潰瘍は、頭を使ったために自律神経の変調で胃に潰瘍ができる病気です。
頭と胃とどういう関係があるのでしょうか。
神経を使うことは頭部に血液を充血させることで、発汗作用が盛んになり、俗にいわれる血が頭にのぼって、胃の消化器官などには血液がまわらずお留守になり、食物も消化されないままヘドロ化して、胃や腸に潰瘍を起し、潰瘍が進むと出血や吐血をして貧血になります。
神経を使い、血便を出したり吐血して、貧血するのだから、気・血・水の三拍子そろった病気です。
この神経性胃潰瘍の場合は、気剤、血剤、水剤を証(診察)によって処方することになります。
血とか水は形のあるもので肉体そのものを指します。
気は無形の精神とか神経です。
漢方でいう無形の精神とか神経です。
漢方でいう無形の気が、人間にとってどんなに大切であるか、例にあげた神経性胃潰瘍からもわかります。
気・血・水という人間の原点から、気である精神や神経を抜きとったら、人間は肉体だけの〝植物人間〟になってしまいます。
気剤は香りのするもの、辛いものをいいます。
前にあげた諺「立てば芍薬、坐れば牡丹、歩く姿は百合の花」は、いわば古人が諺に託して伝えた病の一つのパターンを示したものです。
芍薬は水剤、牡丹は血剤、「歩く姿は百合の花」というのは、百合が香りの高い気剤だからです。
香辛料は水分を発散させる作用があります。
通常、手のひらが湿っているウェットな人は、過剰な水分が発散できないからです。
それだけ皮膚や粘膜、神経、呼吸器に負担をかけています。
だから心臓は人一倍ムダに働かされていることになります。
ノイローゼとか、自律神経の失調とか、アレルギーは、医者にも不可解な病で、体質だと片付けていますが、体質ではありません。
水分の発散ができなくて心臓に負担をかけているのです。
気剤でどんどん発散をしてやれば、改善できることを請け合いです。
人間の病は四百四病あるといわれていますが、このたくさんな病気も、気・血・水の変調の七つのパターンに分類されるのです。
p12薬学博士 渡邊武著わかりやすい漢方薬より 『立てば芍藥座れば牡丹』
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