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p223「見て聞いて」という〝望証〟〝問証〟だけで薬剤は決められない!

2013-06-09 07:00:00 | 日記

おはようございます昌栄薬品の宮原 規美雄です

薬学博士渡辺武著『漢方が救う人体危機』

 

現代医療の誤りを正す

 

第4章 漢方による心身の健康法

 

公害や難病のない漢方薬

 

p223「見て聞いて」という〝望証〟〝問証〟だけで薬剤は決められない!

 

漢方薬は、病気の原因を気・血・水の判定からはじめて、体質や陰陽虚実、適応薬の薬性・薬能を決め、寒熱温涼平の薬剤を処方します。

その一つ一つの条件によって、同じ病名でも処方する薬剤が違ってくると述べてきました。

 この漢方の薬の決め手、薬の選定方法を「証」といっています。

つまりこの証は、現代医学でいう診断とは基本的に違います。

 診断は病名を決めることであり、病名が決まれば、自動的にその病名薬は決まりますが、的確な薬ではありえません。

証は処方する薬剤を決めることであり、百人百様の患者の歪(ひず)みをチェックする方法です。

どちらかというと、現代医学は病名を決めることに重点があり、漢方は病のための心身の歪みを正常化するのに最適の薬剤を決めることに重点が置かれているわけです。

 この薬剤を決める証の採(と)り方には、六つの見方――望証、聞証、問証、脈証、腹証、背証――があります。

望証は目で見ることです。

体全体を見ると、ちょっと具合が悪いとか、太りすぎているとか、姿勢が曲がっているとか、全身の状態がわかります。

 聞証は耳と鼻で決めます。

声がかすれているとか、いびきのかき方、口臭(こうしゅう)、体臭、排泄物のにおいを鼻でかぐわけです。

 問証は口で問答をして状態を確かめます。

脈証は手の「寸関尺」の三ヵ所でみます。

薬はその脈証によって桂皮(けいひ)を処方するか、麻黄(まおう)にするか、柴胡(さいこ)を使用するかが決まります。

 内臓の状態もこの脈証でわかります。だから俗に、桂皮の脈とか、麻黄の脈とか、柴胡(半表半裏)の脈証といわれています。

 腹証は腹にふれて、腹の緊張度や感覚、動悸(どうき)の状態などで、内臓の歪みをさらにこまかく確かめます。

背証は肩のこり、背筋のこり、腰のこりなど、その位置によって、病位が違ってきます。

腹も背部も上からこってくる場合と下からこってくる場合では、病状も薬剤も違ってくるのです。

 このように目で見て、耳と鼻できき、口で問いただし、手でふれて病位病状を確かめるという六つの方法で、薬剤を決めるわけです。

ところが、よく脈や腹にふれると「診察じゃないか」という人がいますが、これは薬剤を決める手段で、病名を決めるために医師がやっている診察ではありません。

 では、六つの証でいちばん決め手になる証は何か、これは古来、日本でも中国でも論争されている問題です。

日本では江戸時代から腹証がだいじだといい、中国では脈証が決め手とされています。

 中国では、望証だけで正しく薬剤が決められるのは神医(神技をもった者)だ。

聞いただけで薬が決められる人は聖医だ。

問証だけの情報でやれる人は工医(名医)で、脈を見たり、腹証を取ったりしてわかる人は技巧者で巧医だと、すぐれた漢方家(上工・じょうこう)の序列をさらに四段階に分けているのです。

 ただ、これは脈証も腹証も必要がないというわけではありません。

正しい薬剤をきめる有力な方法と情報の収集方法が六種類もあるのですから、基本的にはていねいにこの六種類の方法で病位・病状や病因をさぐり、それを総合して病気を改善する最適薬を決めるのがオーソドックスな漢方の技術です。

 それぞれの証の採り方に熱達すれば、ひと目見ただけでも、声を聞いただけでも、的確に薬剤が決められますが、だれしも、努力も経験もないのに、一足(いっそく)飛びに神技や聖技を身につけられるわけではありません。

今日の日本の漢方では、腹証のことはよく知られていますが、背証(背視)のことはほとんど忘れ去られています。

 江戸時代の先達が開発した有力な薬の決め手である腹証、背証の二方法は、現代中国でも忘れられている日本独特の技術ともいえるものですから、漢方を学ばれる人は、薬剤師でも医師でも、脈証と同次元で身につけることがだいじだと考えます。

いいかえると、漢方の証とは、薬剤を決める証拠ですから、証人や証拠となる情報は多いほど確率が高く、正確度を増し、正しい漢方決定と治療につながることになります。

 漢方の薬局の主人などは、ふつう、目で見て、聞いてという望証と問証だけで薬剤を決めていますが、これでは五〇パーセントの確率しかない薬を処方していることになります。

 握手をしたって、別に法律に違反するわけではありません。

肩をたたいたり、背中にさわっても人を傷つけるわけではありません。

要は的確な漢方薬をいかに処方するかということではないでしょうか。

 ここで六つの証をあげたのは、漢方薬の処方は、いろいろな条件でチェックされており、薬にはかならず歯どめがされているということをいいたかったからなのです。

 漢方が救う人体危機西洋医学一辺倒からの脱出

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