ちわきの俳句の部屋

メカ音痴おばさんの一念発起のブログです。
人生の後半を俳句にどっぷりと浸かって、…今がある。

まだ〝花冷え〟なのかしら?

2021年04月11日 | 俳句

 このところズウッと快晴が続いて、気温もほどほどの気持良い日和です。でも、やっぱり夜になるとちょっと冷え込んで…これは、もう桜も散ってしまったので、〝花冷え〟とは言わないんでしょうね。じゃあ何といいましょうか?いや、いや、今は遅咲きの八重桜が満開になっていますから、これも〝花冷え〟でいいのかも…。

  花冷はかこちながらも憎からず  富安風生

 確かにこの句のように〝花冷〟という季語…。「花」なら桜ですから大歓迎。でも「冷え」は寒いからイヤだと…。一見理屈を述べたような句ですが、その時の偽らざる気持を何の衒いもなくズバリと言い止めています。

 「かこつ」とは、〝何かのせいにして恨み嘆く。愚痴を言う〟という意味ですが、〝この寒さは桜が満開のせいだ〟と、口ではぼやきながらも、その冷えの中で咲き誇る桜への愛おしさ…それがこの句の主眼〈憎からず〉なのです。

 ちょっと考えて見て下さい。もし花冷えがなかったらと…。ほら、抜けたようでしょう。冷えがないということは引き締まるところがないから、花も一遍に満開になり、その後すぐに散ってしまうという、何ともあっけないもので終わってしまうのです。そもそもこの原因は花にあるのでは無く、ちょうどこの時期に起る陽気の変動からくるものなのですからね。しかし、それが却って桜を長持ちさせるという事にもなっているです。

 最近は異常気象により思わぬ寒さに戸惑うことが多々ありますので、この季語も実感した上で句が詠めるというもの。ですが、歳時記を見ると例句には江戸時代のものが全くないのです。ということは、昔は〝花冷〟のような季語は用いられていなかったということなの?

 他にこの季語と似たものでよく使う季語に、〝若葉寒〟とか〝梅雨冷・梅雨寒〟とかがあります。が、これにも昔のものは全くありませんでした。ネットで調べてみて、やっと若葉寒に江戸時代の句が2句ほど見つかりましたが…

 このことをあれこれ考えてみますと、花にしても若葉や梅雨にしても、昔はその旬の時期の気温というものに余り変動がなかったのかもと。今日のように寒暖差のハッキリ分かるような時代の方が異常なのかも知れませんね。

 そもそも江戸時代と現代の毎月の気温差を調べてみたら、2.5度ぐらいだったとか。昔は4月の気温も平均15度前後のようでしたから桜の開花もきっと遅かったでしょうし、急激な暑い日がない限りは、この〝花冷え〟という状態を感じることがなかったのではと…。さて、さて、どうなのでしょうか?

 ちなみに今年の花見時に山口県では、最高26度まで上がり、それが次の日には17度前後に下がったのですから、当然〝花冷え〟を実感しますよね。そういう急激な気温の変化がなかったとすれば、江戸時代の人たちには花冷えなど言う語は必要なかったんでしょう。

 ところで、次の句…

  花の影寝まじ未来が恐しき    小林一茶

 この句を詠んだ後、半年もしないうちに一茶は亡くなりました。解釈は〝この真っ盛りの美しい花の影でも寝るのはいやだ。もし寝たりしようものならその先はどうなるか分からないし…まだ死ぬのはいやだ!〟というような意味でしょう。が、一茶の経歴を見ると、この時期に病気になっていて、もしかしたら死ぬかもしれないというような状況ではなかったようですから、なぜこんな句を詠んだんでしょうか。

 しかし、こんな句を残したということは何か虫が知らせたの? 人には自分の死期を悟るような潜在的能力が備わっているともいいますし…

 平安期の歌僧・西行は、〝願はくは花の下にて春死なむその如月の望月のころ〟と詠んで、自分の願った通りの死を迎えましたものね。

 でも、こればかりは自分の思い通りになるはずもなく、ただ〝神のみぞ知る〟としか、私には言いようがありませんが…

  生誕も死も花冷えの寝間ひとつ  福田甲子雄

 桜にはそんな人の生死のイメージと重なるところが多く、古今東西死と桜を結びつける物語や作品は多く存在しています。どっちにしても、〝さくら〟は、絢爛であり、哀しくもはかなくもあって、日本人の根源にある心を揺さぶって止まない魅力的なものなのです。

 今日も1年前のblog記事が届きました。見れば桜が真っ盛りでしたよ。今年は完全に散ってしまって、もう葉桜になっていますのに…。

 去年もコロナで大変だったはずですし、今年もまだ…。こんな時代ですもの、誰にも明日のことは分かりません。ただしたたかに生きるしかないっちゃ!ガンバロウ!ねッ。 

 この2、3日、宇部ではちょっと寒い日が続いて、風もないのでさくらがまだ満開でした。少し散り始めたのもあったかな…。最後のは山桜で、もう葉がずいぶん出ていましたよ。

 


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7 コメント

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ちわきさんへ (ミルク)
2021-04-12 17:44:46
花冷えに、色んな意味があるのですね。
<かこちながらも>ちわきさんの説明がなければ
さっぱりわかりません(^-^;

こちらは満開ですが、明日午後から雨のようで
散り始めるでしょう。はかない命ですね~

お婆ちゃまは、お元気になったかしらと、気になってました。
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Unknown (ちわき)
2021-04-12 21:50:41
ミルクさん、こんばんは!
コメントありがとうございます。
そちらは今桜が満開なんですね。ということは青森とか北海道の函館とかは今からなんでしょうか。
一度は弘前や函館の五稜郭の桜を見たいものと…はかない願いです。
義母はまだ入院中で、何時までかかるか?一日も早く元気になって退院してほしいのですがね。
このコロナのために面会もダメ、差し入れもダメなんで…とっても心配なんですが、どうしようもありません。
本当にこれでは元気になりようがありませんよ。ただ弱っていくだけのようで…
ひたすらおばあちゃんの底力を信じるほかないんです。悲しいけど…
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Unknown (グライセン)
2021-04-15 07:19:19
おはようございます。
今日も楽しく勉強させて頂きました。
昨日は大きな決断が2つありました。
結社の事ですが主宰とお話しして入会に至りました。
気持ち新たに頑張りたいです。
今週ははじめてのインターネット句会に参加します。
少しどきどきです。
返信する
Unknown (グライセン)
2021-04-15 07:20:11
おはようございます。
今日も楽しく勉強させて頂きました。
昨日は大きな決断が2つありました。
結社の事ですが主宰とお話しして入会に至りました。
気持ち新たに頑張りたいです。
今週ははじめてのインターネット句会に参加します。
少しどきどきです。
返信する
おはようございます。 (ミルク)
2021-04-15 08:59:00
だいぶ前の記事に、ピーヤについてかいてありましたね。
あまり理解できずにいましたが、地元紙に詳しく掲載。
そうだ!ちわきさんが記事にしてあったんだと思い出しましました。
と、言いますのは、秋田県大館市にも同じような事があったのです。 
花岡鉱山七ツ館抗事件・落盤事故で朝鮮人と日本人の犠牲が。
その翌年、「花岡事件」と言われる大勢の強制労働者(中国人)の
脱走事件がありました。詳しくはネットでご覧になってください。

お婆ちゃまの、早いご快復をお祈りしています・・・
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Unknown (ちわき)
2021-04-15 09:07:28
グライセンさん、お早うございます。
お元気になられ、またやる気を起こされて良かった!
人生は〝七転び八起き〟。
最後は起き上がる方が1回多いのですから、それでその人生は勝ちですよ。
起き上がる度に人は強くも優しくもなれますから。
結社というものに自分の理想を全て預けないで…ねッ。
思いがけない出会いも喜びもある代わりに裏切られることもありますから…
大らかな心で伸び伸びとした句をグライセンさんらしく詠んで下さい。
ガンバって!
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Unknown (ちわき)
2021-04-15 22:11:22
ミルクさん、こんばんは!
早速「花岡事件」の記事を読みました。
ちょうど終戦直前の大変な時期だったんですね。戦争というのは人を狂わせてしまって、普通では考えられないことでも起っていて…それを読んだり知ったりすると、イヤになります。
ドラマや映画などでも目を覆いたくなるような場面を見たことも…これは日本人だから出来たというのではなく、戦争というもののなさる技でしょう。
状況次第では人はここまで残酷になれるということ。恐ろしいことですよ。
でも日本に限らず、大昔から古今東西そういうものを歴史に刻んできて、今があるんですものね。
今のように人権が尊重されなかった時代…イヤ、今でもまだまだなくなってはいませんが…。
でも、ピーヤのことをミルクさん良く覚えておられましたね。
慰安婦の問題やこの宇部の長生炭鉱の問題など…事実からは曲げられているところもあったりして、全てが悪事を働いたというふうには言えないんですが…
しかし、花岡事件の集団脱走後の対応には目に余るものがあったようですね。75年以上経っても消えないような日本の恥部とでもいっていいでしょうか。
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