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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

私家版 日本語文法

2011-06-08 19:52:51 | 読んだ本
井上ひさし 昭和59年 新潮文庫版
きのうのつづきで、もうひとつ井上ひさし。
日本語の文法に関するエッセイ(なのか?)集。
学校の国語の時間で習う文法は面白くもなんともないんだが、本書中には“ある動詞では受身がつくれるのに、べつの動詞ではつくれない”とかって例について、
少年たちは(おそらく少女たちも)、ことばに興味を持ち、そのまかふしぎな仕掛(からくり)を知りたくてうずうずしている
と見抜いてる記述があるんだけど、当時の私もそのとおり、こーゆー本を読んで、ふだん普通に使えているのに意外と知らないような、日本語の仕組みを改めて考えることが好きだったんである。
自分は学者ではないから私見だけどって感じのトーンで書かれてるけど、やっぱ作家なんで突いてるとこが鋭い。それに教科書と違って、現代的だし。
すっかり忘れちゃった今となって読み返しても、おもしろいとこがいっぱいある。いくつか挙げてみましょうか。
「論より情け」と題された章では、接続詞について採り上げてるんだけど、>谷崎潤一郎が『文章読本』のなかで、接続詞は、品位に乏しく、優雅な味わいに欠ける、それは接続詞が含蓄を減殺して、古典文にみられる叙述の間隙を充填してしまうから、と嘆いている なんてとこは、最近私はこのブログでも改行するたびに、行のあたまに何て接続詞をもってこようか悩むことが多いんで、ガーンと殴られたような気がした。
「……台の考察」では、日本には地名がいくつあるんだろうってとこから始まって、新聞の不動産広告を調べると、最近つくられた知名には「…台」「…丘」「…野」が多いって分析をみせてくれる。
それとか、日本の新聞の天気予報は信じられぬほど情緒的であり、まるで珠玉のエッセイ、新聞社は指折りの名文家を「お天気記者」として起用する、なんてのを読むと、言われてみりゃ面白い書きものだなーって思って新聞を読むことになる。
良い作家の文章はエントロピーが大であるってのも、いい話である。次にどんな文・句がくるのか見当がつかない、文の推移を予測できる確率が低いほうが、読んでて意表をつかれるんで、読者をひきつけるっていう理論、当たってるっていうか、穂村弘のいう「オートマチックな表現」を避けるのと同様、大事なことだ。
んで、日本語の正書法についても考えているんだけど、漢字、ひらがな、カタカナの使い分けがあるんで、正しい書き方なんて決まらない、使い分けにはそれぞれの「思い」があるとしている。>「なにをするのよ」と「何をするのよ」とはちがうのだ なんてのを読むと、油断すると漢字変換を機械任せにしがちな最近の自分の姿勢を反省しちゃったりする。
コメント
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