もう何十年前の話だ。
近所に工場経営者の御嬢さんがいました。
下町では珍しく、ファッションの勉強にパリに留学していました。
20歳を少し超えたぐらいの、「エリさん」
我が家とそんな親しい付き合いはしてなかったと思うのですが
パリから戻ったお土産にミニチュアの香水のセットを、
それも私に、とくれました。
細長い箱に並べられた6種類の美しいミニボトルは、
まるで宝石のようでした。
私はおそらく10歳ぐらいで、母の化粧水の匂いぐらいしか知らず、
そっと栓をあけた一本の、その芳しい香りに、名前しか知らない「パリ」を思い描きました。
勿論、その香水の名前は記憶にはありません。
でも、もしあの香りに今出会ったら「これ!」と言い当てる事が出来そうです。
半世紀前の香りの記憶・・・、
ロンドンから、超高速列車ユーロスターに乗ってパリに行きたい。