かなり以前に書名に引かれて買って効果を期待した本です。でも「その基礎理論」とうたっていますように、ヒトの意識についての話で夢のこともわかりやすく書かれていました。このなかにオオカミに育てられたこどものことが紹介されています。
この話を興味深く読み、人間の学習というものをどう理解すべきかを教えてくれました。写真はその子どもで、発見された当時8歳くらいの少女です。食物は手を使わず昼は寝ていて夜になると遠吠えをする、四つ足で歩き素早い、とあります。
この子が孤児院に預けられて六年目位でやっと夜より昼が好きになり、他の子と寝室で過ごしたり一緒に騒いだりするようになったそうです。著者の心理学者・宮城音弥さんはこう書かれています。
「彼女を人間にしたのは、人間の社会という環境だった。彼女が人間の習慣を学習した結果であった」
この例はインドでの話ですが、フランスでも同様な事例があります。
フランスの場合はオオカミに育てられたわけではないのですが、4歳か5歳で捨てられ捕らえられた12歳と推定される時まで人気の無い所にいたのです。この本では思春期を迎えた少年が、どう人間的な感情らしいものを持てるようになるか、が観察されています。先に人間が人間になるのは社会という環境だと書かれていましたが、それはその人に触れる具体的な人間関係の水準によることを示しています。