当院では鍼灸によるがんの患者さんに疼痛緩和ケアを行っております。
患者さんから『鍼灸は免疫作用を高めますか?』と質問されました。
鍼灸施術の治療的作用の中には「鎮痛作用」「防衛作用」「免疫作用」があります。
「鎮痛作用」は内因性モルヒネ様物質あるいは下行性抑制などの機序により、鎮痛作用が発現するとされています。
「防衛作用」とは白血球や大貪食細胞などを増加させて、各種疾患の治癒機能を促進させ、生体の防御機能を高めるとされています。
「免疫作用」とは免疫能を高める作用ですが、鍼刺激による免疫系への影響は神経系、内分泌系および免疫系の応答による末梢の反応に加えて、中枢の関与による相補的な効果と考えられています。
血液中の生体防御機構として働く補体系、肥満細胞、プロスタグランジン、サイトカイン、B細胞、T細胞、リンパ球に対するβーエンドルフイン、NK細胞など様々な要素がありますが、鍼刺激により血中へのT細胞やNK細胞の移行が促進することが動物やヒトで報告されています。
鍼灸刺激による免疫系への作用は自律神経を介した作用である可能性が示唆されています。
自律神経は免疫組織に分布しており、免疫組織の血管を支配する事により組織内の血流を調節する関接作用と、免疫担当細胞に直接作用する働きがあります。
鍼灸治療は鍼・灸により自律神経系、内分泌系、免疫系に刺激を与え生体の恒常性維持機構の賦活を導きだす治療法とされています。
ですから鍼灸で直接がんが治癒することは残念ながらありませんが、免疫系が活性化することで体調が良くなることはあります。