『右足の先が痺れて膝も痛い。』と言う患者さんがお見えになりました。
触診すると『右足の指先から脹脛(ふくらはぎ)・太もも・臀部に電気が走る様な痛みと痺れ、膝の痛みと左足の脹脛(ふくらはぎ)も痛み、また下腹部(臍の下の恥骨結合の上縁部)に痛みがある。』との事です。
診察すると右足の膝上に硬結があり両足先が氷の様に冷たく、右足・左足とも筋肉が固く凝っている状態です。
痛む場所は坐骨神経の走行ラインと合致している様であり、坐骨神経の症状の様に思えます。
恥骨結合の上縁部は任脈上の曲骨穴と呼ばれるツボがありますが東洋医学の腹診では「腎のエリア」となります。
腎が虚していると此処に痛みが出ることが多いようです。腎の気が虚している事が経絡を通して足先まで影響を与えている様です。
また大地の冷気が足先から膝を経由して少陰腎経を通り恥骨結合まで上って来ているようです。
今回は腹診して曲骨穴付近の圧痛が最も顕著であるので「腎虚証」として治療を進めて行く事としました。
腹部接触鍼・脈調整をして背面部に丁寧に鍼をしていくと、徐々に背面と足の筋肉が緩んで来ます。足も暖かくなって来ました。
基本治療を終えて督脈上の腰陽関に箱灸をしながら、臀部と下腿の坐骨神経のラインを意識して鍼をすると患者さんから『足に何かしていますか?足がジュワージュワーとして暖かい物が流れて行きます。』との事。
「鍼をしています。」と答えると『鍼を刺したのに全然気が付きませんでした。』と答えが返って来ました。
鍼をすることで体全体の気血の流れが良くなり、冷えていた足先に気や血流が回復するのでジュワージュワーと感じるのですね。
鍼は痛いと思われ勝ちですが、鍼管を使い細い鍼を刺すと痛みも無く、刺された事に気が付かない事も多いですね。
今度は「腰陽関」にお灸をして熱をじんわり浸透させます。「腰陽関」は下肢の疾患に効果があり、神経痛・関節炎・膝痛・下肢麻痺等の他に腰部と下肢の冷感に効きます。
背面で治療を終えて、今度は仰臥位で治療、右足の膝陽関と血海に鍼とお灸、膝陽関も膝関節炎・外側大腿皮神経痛・下腹部の冷え込みを治する名穴とされ腰陽関と膝陽関は響きあう関係と言われています。
膝陽関にお灸をすると患者さんから『そこ気持ち良いですね。』と感嘆の言葉が漏れました。
今回の足先の痺れは冷えと坐骨神経が直接の原因の様でしたがその根本には「精気の虚」があります。
患者さんは治療を終えて『足の痺れが無くなり温まりました。』と喜んでお帰りになりました。