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成道会の立禅・9 定中

2023-08-21 09:59:29 | 格闘技、武道

膝の上抜きと前抜きを同時に行なうことで、ブレのない強靭な下半身の軸を作ることができるようになる。

関節の動きは全て円運動である。
指の曲げ伸ばし、膝の曲げ伸ばし、背骨の動きなど、全身の動きは全て円運動の組み合わせであり、武術や格闘技においては、これらの円運動のつながりによって打つ、蹴るといった動きが成立する。

円運動においてはその動きには必ず中心があり、より効率的に円運動から威力を発揮するためには、動きの中でこの中心の位置がより固定されていることが望ましい。つまり、ブレのない状態、あるいはブレの少ない状態である。

人体の骨格の中で最大の大きさを持つ骨盤を力の発生源とすることはどの運動でも追及されていることであり、腰を動かすことの重要性はどの種目でも要求されていることである。

そのような重要なユニットである骨盤はあらゆる動きにおいて力の源泉たる役割を持つ。
その骨盤の動きを横方向に回転させるとして、中心部に軸がある場合、左の股関節に軸がある場合、右に軸がある場合に分類してとらえてみる。

例えば右のパンチを繰り出していく場合、骨盤を反時計回りに回転させていくことになるが、この時、中心の軸に対して右の股関節は前に、左の股関節は後に動く。
拳が目標にヒットした瞬間に左の股関節が後側に動き続けていたら、パンチの衝撃が左側から後方に逃げることになり、目標とする対象に与えるべき衝撃は相殺されてしまう。
これに対して左の股関節が軸となってそこを中心に骨盤が回転して、右拳が目標にヒットした場合、左の股関節の位置がずれることなく骨盤が回転しつづけるとすれば、その威力は前方にのみ働き、衝撃を余すことなく対象に伝えていく。
骨盤の回転する動力はその力を余すことなく対象にぶつけていくことになる。

このように円運動の威力を漏れなく対象に伝えるためにその中心を固定するというのは、物理的に重要な要件となる。

動きの中では中心がグラグラ動いてブレてしまう要素を少なくする必要があり、この中心を定める状態を「定中」と呼んでいる。

武術や格闘技の動きにおいては、骨盤の横方向の回転はあらゆる場面で機能するものであり、その中心は骨盤の間にあるが、左右の股関節にあることでより大きな力を発生させられるものと考えられる。

動きの中で左右の股関節での定中を確立するためには「膝の上抜き」と「膝の前抜き」を作用させることによって、前後にブレることのない軸を作り出すことが可能となる。

これができてくると股関節を中心として回転するような働きが常に確認できるようになる。

実際に動いてみた場合、股関節が後ろ側に動いて軸がブレてしまい相殺的な効果を生み出してしまうが、その動きを抑制させるための下半身の状態を訓練することができるようになってくる。

しかし、その状態が微妙であって確認することすらも難しい。
立禅においてはこのような微妙な感覚をひとつひとつモノにしていく必要があり、段階が進むにしたがって、より微妙となってくる。
それは通常の運動では全くと言っていいほど気が付くことの無いようなものであり、だからこそ、立禅のような静止した状態でのみでしか得られないのかも知れないし、段階を踏んでひとつひとつ進めていけば獲得できる可能性があると思うので、門下生にとっては自身がどのあたりにいるのかを判断してもらうためにも、立禅の段階を示しておきたくてこのような記事を書いてみた。
筆舌に尽くしがたい部分が多いので限界があることを感じながらも書いてみたが、門下生各位は参考にしていただきたい。

 

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成道会の立禅・8 下肢の前方出力

2023-08-07 08:26:47 | 格闘技、武道

前方出力がなされると、それは前側からの負荷を強靭に支えようとする支撑(ししょう)能力であることが理解できる。
肘は落として広げた肩甲骨によってやや前に押し出されて続けている状態となる。

次の段階ではこの支撑能力を下半身、つまり脚に求めていく。

形体運動のひとつに座ろうとしたり立ち上がろうとしたりする運動があるが、膝を上に引き抜こうとすることによって股関節は折りたたまれ座りこもうとする力が働き、反対に座りこもうとすることによって、膝を上に引っこ抜こうとする力が発生するとも言える。
上に行こうとする力と下に向かおうとする力が同時に発生することにより、この動きが成立する。
上下の力であり、その作用として結果としてこのような動きを形成する。
このような動きを筋肉の大きな収縮力にのみに頼ることなく、骨格の相互作用によって繰り広げていく。
私はこれを勝手に「膝の上抜き」と呼んでいる。

この動きの中に存在する膝と股関節の作用と反作用のような力を立禅の中に落とし込んでいく。

立禅の状態は動きが外に出ている状態ではないので、この膝の上抜きも静止している状態で、外見上はほとんどわからないような微妙な動きとして、しかし、自身の身体の中では存在するものである。
客観的には動きとして確認することはできないとしても、その作用、働きは自身の身体の中でのみ確認できると言ってよいものである。

この「膝の上抜き」の状態で立つ。

すると、膝は常に引き抜かれているような、引き抜かれていくような感じがあり、同時に股関節は常に後ろの高いイスに座り込もうとしているような感じがあり、骨格を上下に引き合う力はより強靭になる。

次に、形体運動のひとつに中腰の姿勢で膝を前に突き出してひざまずくような動きがある。
以前はこの動きを自身の骨格を相手に対してぶつけていく際に物理的な力積を生み出すために、安定と不安定の変換を体認するようなものだと解釈していたが、本当の内容はもっと重要なものだった。

膝を前側に突き出していく時に股関節を使って膝を前に押し出していく。
股関節で膝を押し出してくために上体は後方に動いていく。上体を後に動かすことによって股関節は前に動き、結果として股関節で膝を前側に押し出していくような動作になる。
さきほどの上下の動きに対して前後の動きと言える。
さきほどの膝の上抜きに対して「膝の前抜き」と勝手に呼んでいる。

立禅の際に「膝の上抜き」で立つことができたなら、次にこの状態を維持したままで「膝の前抜き」が作用している状態で立ってみる。
これもその動きは外に出ているものではないので、自身の身体の中でのみ確認できるようなものであるが、しかし、間違いなく存在する。

膝を前に押し出そうとする力が働くことによって足裏の重心はやや前側に置かれるようになり、その部分で地面を軽く踏んでいるような状態になり、踵の方はその皮をつぶさない程度に軽く浮いた状態で立つようになる。
これが、踵の下に小蟻をはさんで殺さないようにそれでいて逃がさないようにして立っている状態である。

このようにして、膝を前に押し出そうとする力が常に働くようにして立てるようにしていく。
すると、「膝の上抜き」と「膝の前抜き」とが同時に作用している言葉では表現しようのない独特の状態になる。
実際には実に微妙な感覚なので、そのような力が働いているかどうかをとらえること自体が難しいのだが、これができるようになってくると、動きの中で体軸や股関節のブレを最小に抑えることが可能となってくる。
そして次の能力の獲得に移行する準備が整ったことになる。

 

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