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立禅筋③ ~ローテーターカフ筋~

2013-06-13 00:40:00 | 格闘技、武道
前回のブログで、肩の根元である肩甲骨を前鋸筋によって強靭な構造に変換するということを書いた。
その状態が四足動物の前足に相当する強靭な機能に由来するとも書いた。

肩甲骨が常に前方向に可動する状態によって、肋椎に対して強力に連結されるが、肩甲骨の先端に肩関節があるので、肩の根元を強靭な状態にしながらも、肩関節自体はある程度自由に動くことが出来る。
つまり、肩甲骨を前側に移動させても、上腕骨は比較的自由に動くことが出来る。

その状態でも強い位置とそうでない位置がある。
肩関節、股関節は球関節であり、臼蓋に対して骨頭が収まっている構造になっている。
従って、関節自体はあらゆる方向に可動することが出来る形状なのであるが、実際には靭帯によって強力に連結されているので、あらゆる角度に動かすことは出来ない。関節自体の可動範囲がある。
そして、肩について言えば肩本来の構造に基づいた靭帯や筋肉の強さを発揮出来得る角度がある。

この角度が前に45度、下に45度、左右に45度、大体このくらいの角度が理想的とされ、それは、肩に対して斜面を形成する。
いわゆる斜面力であるが、この場合は肩関節の構造的な強さにおける斜面の形成である。

この理想的な角度に於いて、肩関節に上腕骨を強力にジョイントするのが、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋といった肩甲骨に付着する筋肉群である。
これらの筋肉群は肩甲骨に付着して、上腕骨にまとわりつくような形状であるので、ロ―テーターカフ筋とも呼ばれる。
ローテーターはまとわりつく、カフは袖(そで)という意味で、袖の様にまとっているという意味でもある。

先述の角度が、本来の関節の強さが発揮出来る角度であり、あまり大きくその位置から離れてしまうと関節自体の支持力が薄れてしまう。

ローテーターカフ筋によって、上腕骨が肩関節に対して強力にロックされる。

例えるなら、肩関節と上腕骨がネジやビスで連結されているとして、普段はゆるゆるの状態でも、腕に何らかの負荷が加わった場合、瞬時にこのネジやビスが締まって、肩関節と上腕骨をビシッ!とつないでしまう様な感じである。

太氣拳で用いられる肩の構造能力においては、斜面の原理を使用できる範囲を超えない様な形でのみ使用して、接触して負荷が加わると、瞬時にこれらの筋肉の収縮によって上腕骨が強靭にロックされるものと考えられる。
それも、三角筋や三頭筋といった大筋肉によってガチガチに固めるのではなく、ロックしつつも柔軟にその変化に対応できる可動性を有する特殊なものである。

肩関節や股関節は球関節であるが、靭帯、筋肉は、上腕骨や大腿骨に螺旋状に付着しているので螺旋力の強さも構造本来の特性とも言える。

立禅においては、意念によってのみ鍛錬されることが可能な、これも重要な立禅筋と言えよう。

ちなみに佐藤聖二先生のTシャツ姿を後ろから見ると、肩甲骨のあたりが異常に盛り上がっており、長年の鍛錬によってであろう、このローテーターカフ筋が非常に発達していると思われる。

実際に、その腕に接触した時に感じられる異常とも言えるあらゆる方向に漏れのない強さ、それでいて自在に変化する柔軟性は前鋸筋による肩甲骨の安定度、ローテーターカフ筋による肩関節の安定度がケタ違いに高く、それらが実に精妙に連動しているのではないかと考えられる。

さて、このローテーターカフ筋による上腕骨のホールド能力は、腕を自由に使いこなすことができる人間の特性であるのかも知れない。

私の武術の師匠である猫の「みやちゃん」の肩甲骨あたりを触診してみても、この筋肉群が特別発達しているとは思われない。

動物は物をつかんで投げるなどの運動は出来ないが、人間はそれが可能である。
石を投げるにせよ、やりを投げるにせよ、ボールを投げるにせよ、これは進化の中で人類の獲得したひとつの運動の特性なのかも知れない。

そのような特性も立禅によって引き出され、武術的に強化されていくのは実に興味深いところである。


太氣拳成道会
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