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クレージーなオヤジたち・3・元祖クレージーな老人編

2008-03-31 10:55:00 | 格闘技、武道
 太気拳修行者にとって、クレージーなオヤジたちの元祖は言うまでも無く澤井健一先生である。
 クレージーなオヤジではなくクレージーなジジィ、いや老人である。クレージーというよりデンジャラスな老人と言った方がいいのかも知れない。
 少なくとも、私はそう思う。
 
 弟子に素面素手の激しい組み手をやらせて切磋琢磨させるばかりか、60歳を過ぎてからも自ら組み手に参加して弟子に稽古をつける、ということからだけでもそのクレージーぶりがうかがい知れようが、私が岩間先生からお聞きした様々なエピソードからもそのクレージーさは半端ではないということを知ることができる。

 今回は、岩間先生からお聞きしたことのある澤井先生のエピソードの一部を紹介しよう。


その1.

 雀荘で麻雀に興じていた澤井先生。何かでトラぶって他の3人と言い合いになったらしい。

雀荘のおかみさんも心配げに事の成り行きを見守っていたらしいが、突然、その中の一人が澤井先生に襲いかかってきた。

澤井先生、意に介さずカウンターの打拳炸裂!一撃で昏倒させると、残りの2人も一撃でノックアウト!!

あまりに一瞬の出来事で、おかみさんが止めに入る間もなかったとのことである。

 このおかみさんとは岩間先生が実際にお会いしており、その時の様子を「あれは、まるで映画のワンシーンの様でしたねぇ・・・。私が生きてきた中であんな鮮やかな喧嘩を見たのは後にも先にもあの時が初めてでした・・・」」と回想していたとの事である。


その2.

 澤井先生が池袋の立教大学近くを歩いていた時のこと。

8人位の学生が「よぉ、ジイちゃん、いい帽子かぶってるねぇ」と言いつつ、澤井先生のかぶっていた帽子をつかみとってしまった。

瞬間!怒り心頭に達した澤井先生「サムライのこうべに手をかけるとは何事かぁ!!」

数秒後、学生8人は路上で失神していた・・・。


その3.

 戦時中、中国にわたって生活していた澤井先生。クレージーな老人となる前はやっぱりクレージーなオヤジであった。

 さわやかな朝、澤井先生の長男で当時2歳くらいであった昭男さんが庭で元気よく走りまわり、その姿を奥さんが見つめていた。
どこの家庭でもある、微笑ましい風景である。

そこへ澤井先生が現れた。しかし表情は険しく、手にはなんと日本刀を持っている。
その異様さに気が付いた奥さん、まだ幼い昭男さんを連れて家の中に逃げようとしたが、澤井先生、一喝!
「昭男はおいていけー!」

そして、昭男さんの頭の上にリンゴを乗せ、スラリと日本刀を抜いた。
「今から、このリンゴを真っ二つにしてみせる!!」

奥さんはビックリなどという言葉では、表現できないほどの衝撃である。
「何言い出すんですか!お願いだからこんなバカなことやめて!!」

しかし、完全にクレージーのスイッチが入ってしまっている澤井先生「失敗して昭男が死んだらわしも腹を切る!!」

もう何が何だかわからないといった状況の中、瞬間、奥さんは(もし、昭男が死んだら主人を殺して私も死のう)と心の中で決心したらしい。

当の昭男さんは何もわかっておらず(当たり前だが)ウロウロ歩き回っている。
その昭男さんに対して日本刀をかまえ、ジリジリと近付く澤井先生・・・。

「ハァーッ!!!」

裂ぱくの気合いとともに刀が振り下ろされた!
奥さんが目を覆った次の瞬間!!

スパーッ!!

リンゴは真っ二つに割れ、髪の毛数本がハラリと地面に落ちた。
昭男さんはかすり傷一つ無く、その命も無事であった・・・。

剣道、居合いにおいても高段者である澤井先生ならではの絶技である・・・。

しかし何故、澤井先生はこの様な行動におよんだのか?

数日後、澤井先生の部屋から「世界の昔話」という本が発見され、ページのハシッコが折ってあるところに「ウィリアム・テル」の話が書いてあったらしい・・・。
(スイスの昔話で、意地悪な役人から息子の頭の上に乗せたリンゴを矢で射るように命ぜられたウィリアム・テルが、見事そのリンゴを射抜いて見せたというお話です)


その4.

 晩年、池袋界隈では地域の人たちから何かと頼りにされていた澤井先生。
地元の顔役のような存在で、何か困ったことがあると相談に訪れる人が大勢いたらしい。

 そのうちの一人、メガネ屋の店主が「澤井さん、うちの高校生の娘が不良になってしまって、私ら親の言うことも聞かなくなってどうしようもない、どうにかならんだろうか?」と相談。
「よし、それならわしが会って話してみよう」とその家に出向き、不良娘と会うことになった。

見ると、髪にはパーマをかけ、セーラー服の長いスカートといった一昔前の典型的な不良少女である。

澤井先生「お前なぁ、親の気持ちを考えてみろ」と諭すように話していたらしいが、この娘、人の話を全く聞こうとしない。

それでも澤井先生、根気強く説教を続けようとしていたが、その娘が「うるせーんだよ、ハゲジジィ」と言い、ライターに火を付けタバコを吸おうとした瞬間、澤井先生、ブチギレ!

いきなり娘の首根っこをつかみ、近くにあったハサミで娘の頭を虎刈りにすると次に、娘の着ていたセーラー服から下着までを全部はぎとりスッポンポンにすると、そのまま店の外に放り出しシャッターをガラガラガラと閉めてしまった。

外では娘が「お願い!中に入れてー!私が悪かったですー!!」とシャッターをダンダン叩きながら泣きわめいていたらしいが澤井先生、無視。
その後、数時間にわたって外に出しっ放しにしていたらしい。

それからというもの、その娘は澤井先生の前では借りてきた猫のように大人しくなったとのことである・・・。


(これらはあくまで公開できる範囲のもので、もっとすごいエピソードが他にたくさんあります。念のため)


 それにしても戦争での戦場体験者である澤井先生にとっては、このようなことは別に特別でもなんでもなく日常生活のひとコマに過ぎないのかも知れない。

 澤井先生と同じ時代に活躍されていた極真空手の故大山倍達館長、合気道養神舘の故塩田剛三館長なども皆同様にクレージーであったのであろう。まともであろうはずが無い。

 現在、学校教育の現場などでは教師の権威は失墜し、少子化の影響なのか、家庭でも子供の顔色ばかりをうかがう親が多くなっていると聞く。
そんな話は、昭和の武術家にとっては無縁な話であろう。

 成道会の門下生よ、時代に逆らいクレージーなオヤジを目指せ!
そしてやがて、クレージーなジジィとなれ!!


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成道会の這い・2

2008-03-09 16:22:00 | 格闘技、武道
這いは立禅に次ぐ、動的な内勁の養成手段であると書いた。
身体の中に眠っている潜在的かつ根源的な動きの能力を引き出していく訓練法である。

立禅が、各種の内勁を感覚の上でとらえ、最後はそれを感覚によっては感知し得ない状態で、しかし存在するといった状態にまで昇華させるべきである、と以前に記したが、這いも同様である。

まず、腰を低く落としてユックリ動くと、初期段階では足腰や肩が大変に辛いし、神経的にも疲労するものだが、これはまず身体の各所で重心を調整したり、全体のバランスを支えたりといったことに筋力以外にもエネルギーを消耗していることが考えられる。

慣れるに従い、このバランス能力は向上してくるのであるから、エネルギーの消耗は軽くなる。
しかし、足腰や肩は相変わらず辛い。

次に、全身各所が動作に伴い微動する段階になると、両足で身体全体を支えている状態から片足で支えている状態に変化していく中で、微妙に上半身の姿勢も変化していくことで各所の負担が軽減されることが理解できるようになる。

両足で身体を支えている時、体軸は身体の中心にあるが、片足になるとその足の股関節上に軸が現れる。

体軸の存在箇所の移動に伴い、身体全体も微妙にその形態が変化する。

これは、目視してわかる範囲のものなので、客観的にその段階に来ているかどうかとらえ易い。

岩間先生から伝授された太気拳は、動物を思わせる様な動きがその特徴としてある。

特に猫などは、動きの中でその柔軟な身体によって体軸の変化が自由自在である。

太気拳の千変万化といわれるその動きは、這いによっていつの間にか養成され得る体軸のすみやかな移動、変化が可能なさしめているのかも知れない。

次に、這い自体に身体的な負担を感じなくなる段階に至ると、意識的な動きではなく、何かを感じた際に現れる、自然な本人にも予測し得ない動きとなるのではないかと思われる。

更に、身体の中のどこかが何かをしている、といった感覚すらなくなってくる段階では、これまでのパンチや蹴りが格段に強くなってくるが、これは手足をいかに効率的に連動させるかを追求していた動作が、脊椎からその動きを発するように変化してきているからだと考えている。

その際、手足の力感、加速感は全て邪魔モノになり、脊椎主導の動作の妨げになる。

これは、立禅同様に客観的に確認することは不可能であり、本人のみぞ知る世界である。

職人的な技術や手法が要求される分野では、この言葉にすることができない、本人のみぞ・・・といった世界が必ずやって来る。

故に頭で理解することよりも、自身の身体でつかみとる能力が要求され、そのため、誰一人として同じであるものは無いのである。
皆が異なるのが、正しいのである。

何やら哲学的な話になってしまったが、這いも最終的には常識的な身体鍛錬のレベルを超えるものになってしまう、ということを記しておきたい。








中野浩二・初段の這い



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