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立禅筋

2013-04-19 14:13:00 | 格闘技、武道
前回のブログから、だいぶ空いてしまった。

ホームページを自前のソフトで作成、公開したのだが、少しずつやっていくつもりだったのが、やり始めると2週間近くパソコンにかかりっきりになってしまい、結局、一気に仕上げてしまった。

持ち前の凝り性のなせる業(?)とは言え、未だにスマホのこともよくわからない、携帯電話のメールすら打ったことのない、根っからのアナログ人間の私にしてはよく頑張ったものだと我ながら感心する。

しかし、案の定「もうパソコンなんか見るのもいやだ」状態となってしまい、おかげでブログもだいぶ遠ざかってしまった。
ここ最近、パソコン拒絶状態もだいぶ収まってきたのだが、この5ヶ月間で自身の立禅にも又、少し変化が感じられている。

普段の稽古への取り組みの中で、感じたことを記していきたいと思う。

立禅に取り組むことで、日常生活で使用される骨格運動とは異なる状態での筋肉の活動状態を獲得できるといったことを以前に書いたことがある。
表層の筋肉よりも深層の筋肉を優位に活動させることで、表層の筋収縮による平面的な骨格運動が、立体感のある3次元的な運動に転換される、ということでもある。

筋肉の役割をおおまかに分類すると、骨格を可動させる役割をより多くを持つ筋肉と、骨格を支える役割をより多く持つ筋肉の2種類になる。
立禅では骨格を支える、支持する、安定させるといった、骨格の支持機能を優先的に強化する働きがあるものと考えられる。

上半身では肩関節、下半身では股関節ということになり、さらに脊柱そのものの支持もあるが、肩関節の支持機能で重要な役割を担うのが「前鋸筋(ぜんきょきん)」である。
前鋸筋は肩甲骨の裏側から肋骨に付着しており、通常は広背筋、大胸筋に隠れていて、目でその全容を確認することは出来ないが、皮下脂肪の少ない人で前鋸筋の発達している人であれば、わずかに脇のあたりにノコギリの歯の様な形状の筋肉があることが確認出来る。

肋骨が固定されている状態でこの前鋸筋が収縮すると、肩甲骨を外転(外側に移動させる)、前側にスライドすることになる。
わかりやすく言えば、肩甲骨を前側に押し出した様な状態になる。

前鋸筋は別名をボクサー筋とも呼ばれ、パンチの強い、KO率の高いボクサーはこの前鋸筋が発達しているとも言われている。
フィリピンの英雄と呼ばれているマニーパッキャオは、上半身裸の写真で見る限り、この前鋸筋が実によく発達している。

佐藤聖二先生の立禅におけるご指導で「肩甲骨が肩を押し出し、肩が肘を押し出し、肘が手首を押し出し、手首が指のひとつひとつの関節を押し出し、指の関節が指先を押し出している、という意念を持って立つ」とは、前鋸筋の収縮によって肩甲骨を前側に移動させている状態であると考えられるが、あらかじめ肩甲骨を前側に移動させ固定させることで、外部からの加負荷で肩関節がブレることのない、強力な状態が獲得できるものと考えられる。

通常、前鋸筋等の深層筋は自身の身体の感覚でその収縮活動を捉えることが難しく、意識が及びにくいとされる。

意拳や太氣拳では、立禅時の意念活動によってこの前鋸筋を機能させることに成功していると思われるが、立禅時の腕の中に感じられる膨張感は、前鋸筋の収縮により肩甲骨を前に移動させて、肩関節の保定状態をより強くなさしめてこそ、得られるものと考えられる。

初心者が立禅を開始して膨張感が現れるのに数分間の時間がかかるのは、表層の筋肉の収縮によって上腕骨を支えている状態から、前鋸筋の収縮により肩甲骨を前に移動させている状態に移行するまでにある程度の時間を必要とするからである。
上級者になると、いつでも自在にこの状態になれるし、前鋸筋の強化鍛錬も進んでいるので、見た目は筋肉も乏しい意拳、太氣拳の拳法家の腕に触れるや否や異様な重さ、強靭さを感じるのは、この筋肉によるものと考えられる。

この前鋸筋を使いこなせるようになると、肩甲骨を内部で強力にホールドした状態で上腕は上下左右と比較的自由に変化できるので、腕全体をリキませて硬直させるのとは異なる、強靭でありながらも柔軟に変化できる動きを可能にするものと考えられる。

私自身、昨年5月くらいから、自主稽古の内容が立禅中心となってから、自身の腕に変化が生じ、46歳の現在にして打撃までもが変化している。

意拳や太氣拳では立禅を通じて様々な能力の獲得に取り組むが、前鋸筋は特に重要なパーツである考え、勝手ながら、この前鋸筋を「立禅筋」と呼んでいる。

無論、「立禅筋」は前鋸筋だけでなく、連動して機能する筋肉は全身でまだまだある。
前鋸筋の鍛錬のみが立禅の目的ではないということは言うまでもないが、初心者はこのあたりを当面の努力目標に設定してもよいのではないだろうか?

さらに、このような骨格を支持する筋肉の制御や鍛錬が重要であることを自身の身体で納得できると、ウェイトトレーニング等のレジスタンストレーニングも、どの様な方法や負荷のかけ方が武術の補強として適しているかも考察できるので、やたらと荷重に耐えて筋力をアップさせる事のみに終始することがなくなる。
私自身、ウェイトトレーニングを継続してしているが、その内容は随分と変わった。そのあたりのことは気が向いた時に書き込んでいきたい。

次回も「立禅筋」について考察してみたい。


太氣拳成道会
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