福岡に戻ってからも自身の稽古は続けていたが、自分の道場や研究会を持つことなど考えてもいなかった。
正直、仕事が面白く、稽古は本村さん(現在、練士五段)と他に1名とで行なっていた。
その後、私の自宅の近所に太氣拳に興味を持つ若者がいて、彼を含めて4人での稽古が続いていた。
聞くとテコンドーをやっているが、そのテコンドーの先生が太氣拳の人と交流があって、興味があったらしい。
そんな訳で、数名で稽古を続けていたところ、「地元のフリーペーパーに門下生募集の告知を出してみませんか」ということになって、どうせやるなら大々的にやってみようと、ポスター張りやら何やらで活動してみた。
やってみるもので、何人かの門下生が集まってきた。
今思えば、これが成道会を立ち上げるきっかけとなった。
やがて、門下生に組み手を教える段階まで来たが、太氣拳で行われている素面素手の組み手をいきなりやらせることには抵抗があって、大道塾の頃に行なっていたマスク着用による組み手方式を採用することにした。
その際、練りによる太氣拳特有の動きは一切禁じて、通常の打撃攻防にて組み手をすることを条件にもした。
それは、人と人とが全力でぶつかり合うという非日常体験に慣れていくことが必要であり、自身の経験から最初はこの方法が適していると考えていたからである。
動画で私の相手をしている長身の門下生が井上顕雄(現在、参段)、もう一人が田中旭臣。
井上弐段は先述のテコンドーの経験者で、昨年11月下旬に参段に昇段している。
現在は独自の組み手を追求しているが、こんな時代もあった。
田中はこの組み手形式を繰り返すことで才能を開花させた一人である。
そのキレのある動きは、これまでの門下生の中でも印象に残るものがあった。
田中は地元福岡での格闘技大会でも2回優勝し、普段の組み手稽古でも特筆すべき動きを見せ続けていた。
残念なことに、田中は仕事にて稽古に参加できなくなったことを理由に数年後に退会している。
組み手は非日常体験の繰り返しであり、そのハードルを少しずつ上げていく方法を採用しなければ、目標近くに行くまでに気持ちが折れてしまう人がほとんどだと思う。
そこで、ハードでありながらも顔面への加撃に対する安全性を確保したこの方式は、訓練として優れていると考える。
成道会では組み手に対する「馴らし体験」をより安全に行なうことで、誰でも一定の段階に到達できる方法を、今現在でも模索している。
太氣拳成道会
http://www.joudou.jp/