意念による身体内部の調整が理解できたら、その部位を増やしていく。
これは指導者によって様々だと思うし、意念の持ち様などはこうでなくてはならないといったものはないので、それによって内勁を理解できることができるのであればどんなものでもよいと思う。
今回紹介するのは成道会で標準的に用いている意念の持ち方であり、各自の内勁獲得の方法の手助けとしてとらえてもらっていいと思う。
骨格の先端が伸び続けようとする意識に加え、指の間に綿を挟んでいるような、手の平ではボールを包み続けているような感覚、顎の下にボールをはさんで落とさないようにしている感覚を持ち続ける。
これまでの骨格が伸び続けているという意念に「はさむ」というものが加わる。
これを用いて、手首と肩の間、右肩と左肩の間、両肘の間に棒をはさんで落とさないようにイメージする。
これにより、腕の支持力は格段に向上し身体の中の弾力感は増大する。
触れるものをはじき返すような弾力が現れ、腕の前後方向の支持能力、両肘を横に支える支持能力、両肘を下に降ろそうとする支持能力が確認できるようになる。
両肩の前では棒をはさみ、右の肩と右の股関節でも棒をはさみ、左の肩と左の股関節でも棒をはさみ、骨格を支えてみる。
これができたら、右の肩と左の股関節、左の肩と右の股関節でも棒をはさんでみる。
そのようにすると、腕にかかる負荷を肩甲骨で受けている状態から股関節で受けている状態に移行する。
このことにより骨盤という人体の中でもより大きなユニットを支持能力に参加させることになる。
推手の場合、相手から伝ってくる力に対してどのように対処していくということを立禅における静止した状態の中で模擬的に訓練できるようになる。
この段階に入ると、打撃においてはパンチの性質に明らかな違いが現れるようになり、より漏れの少ない状態で衝撃が相手に伝わる、いわゆる硬い打撃が自然に身に付いてくる。
このようにして「何かはさむ」という意識が使えるようなってきたら頭と仙骨で何かをはさんでいく。
すると、背骨は弓のような状態になり、腰の後ろ側にある命門というツボは開いたようになり、背中側の骨格は広がり動物の骨格により近づいた状態となり、腕は動物としての前足に近づき、その支持能力を発揮しやすくなるものと考えられる。
これが、成道会における立禅の第4か第5段階である。
この「背骨ではさむ」という意念が獲得できたら次の段階に入っていく。