成道会実践空手道で採用している運動理論に「体幹運動」がある。
これは、故・伊藤昇氏が提唱された「胴体力」を参考にして、成道会で実践しているものである。
人間の動きを客観的に捉える場合、その腕や足の動きに注目していることが多いものである。例えば、肘の角度が云々とか、膝の位置が云々とかいった具合である。
しかし、実際に人体の動きで重要となるのは、腕や足よりも体幹部分、すなわち腕や足を除外した「ボディ」の動きが、あらゆる動きの性質を左右する。
陸上競技、水泳、球技、ダンス、舞踊、格闘技など、ありとあらゆるスポーツ、運動において、然りである。
腕や足を除外して考えた場合、体幹の動きは横方向に「伸ばす⇔縮める」、前後に「丸める⇔反らす」、さらに「ねじる」の3通りに分類され、あらゆる身体動作はこの3つの体幹動作が複合されて運動参加し、全体の動きを形成する。
これを打撃に採用した場合、パンチもさることながら、蹴り技に著しい上達が見られることが多い。
蹴りは足を使って行われるが、体幹がどれだけ運動参加しているかで、その性能が決まる。
股関節がもともと固くて足が上がりにくい人でも、体幹を使いこなすことで蹴りの性能を向上させることが出来得る。
体幹を使いこなせると、廻し蹴り等で、ヒットする瞬間のインパクトを足の力によらず、骨盤の動作で行うことが出来るようになる。
これは、小柄な人や腕力や脚力に自信がない人でも、体幹部分をフルに使いこなすことで、筋力のハンディを補って余りあるものがあると言える。
次に、肩関節についてである。
通常、肩から腕が伸びているように思われがちだが、実際には前側では鎖骨、後側では肩甲骨も腕の一部と考える。
であるから腕の始まりの部分は、肩関節ではなく、鎖骨の根元である胸鎖関節である。
従って、肩甲骨と鎖骨がどれだけ自由に動くか、ということが体幹運動の成否を左右するとも言える。
具体的には、鎖骨、肩甲骨を有効に可動させることで、ストレートパンチの伸びは20~30㎝は違ってくる。
前回の重心移動で、不必要な「意」による影響は、力み(りきみ)というかたちで肩に現れる、と書いた。
それは、体幹の運動参加を妨げる要因のひとつであるが、過度なウェイトトレーニング等で肩周りの筋肉が固くなってしまっていても、同様に体幹の動きを制限してしまう。
又、太ももの後ろ側の大腿二頭筋、通称、ハムストリングは全身運動の際、バネの役割を持つ。
この部分の筋伸張反射を引き出すためには骨盤が前傾している必要があるが、肩甲骨の諸筋郡が必要以上に硬化していると、脊柱全体の構造的な問題から、骨盤が前傾しにくくなるとされている。
加えて、肋骨の可動性も問題となる。
これも、ウェイトトレーニング等によって硬化させてしまいがちなパーツである。
肋骨は12本の肋椎のうち、真肋、加肋と呼ばれる10本はカゴ状の骨格であり、肺呼吸の際、胸が大きく動くことから可動性があることが理解できる。
この肋骨も、ある程度、自由に動くことが体幹運動の上ではより望ましい。
この様な体幹運動を有効に活用していくためには、先の肩甲帯、肋椎が柔軟である方が有利であるが、個人的には、それほど以上に柔軟でなくとも、全身運動のレベルを引き上げることは可能であると考えている。
これは、立禅によって各自の関節の可動範囲を認識することによって、その人なりの動きの性質を引き上げることが出来ると考えているからである。
しかし、初心者は、必要とされる体幹部分の柔軟性を向上させることで、全身運動の際、体幹が運動参加していくことがいかに有効であるかを知る必要がある。
そして、これは立禅によって動きの性質を変容させることに比べると、はるかに獲得しやすい。
実践空手道クラスの目的は、早くて1~2年で組み手に参加していけるだけの打撃技術の修得であり、その点、体幹運動は修得しやすく、それでいて太気拳修得の妨げ、つまり、立禅による内勁の開発の妨げにはならないと思われる。
会員各位、参考にされたし。
⇔伸ばす⇔縮める
⇔反らす⇔丸める
⇔捻じる
(体幹運動の基本3動作)
参考文献
「スーパーボディを読む」(伊藤昇著/マガジンハウス)
「新トレーニング革命」(小山裕史著/講談社)
「野球トレーニング革命」(小山裕史著/ベースボール・マガジン社)
「黒人リズム感の秘密」(七類誠一郎著/郁朋社)
空手拳法成道会
http://www.joudou.jp/
これは、故・伊藤昇氏が提唱された「胴体力」を参考にして、成道会で実践しているものである。
人間の動きを客観的に捉える場合、その腕や足の動きに注目していることが多いものである。例えば、肘の角度が云々とか、膝の位置が云々とかいった具合である。
しかし、実際に人体の動きで重要となるのは、腕や足よりも体幹部分、すなわち腕や足を除外した「ボディ」の動きが、あらゆる動きの性質を左右する。
陸上競技、水泳、球技、ダンス、舞踊、格闘技など、ありとあらゆるスポーツ、運動において、然りである。
腕や足を除外して考えた場合、体幹の動きは横方向に「伸ばす⇔縮める」、前後に「丸める⇔反らす」、さらに「ねじる」の3通りに分類され、あらゆる身体動作はこの3つの体幹動作が複合されて運動参加し、全体の動きを形成する。
これを打撃に採用した場合、パンチもさることながら、蹴り技に著しい上達が見られることが多い。
蹴りは足を使って行われるが、体幹がどれだけ運動参加しているかで、その性能が決まる。
股関節がもともと固くて足が上がりにくい人でも、体幹を使いこなすことで蹴りの性能を向上させることが出来得る。
体幹を使いこなせると、廻し蹴り等で、ヒットする瞬間のインパクトを足の力によらず、骨盤の動作で行うことが出来るようになる。
これは、小柄な人や腕力や脚力に自信がない人でも、体幹部分をフルに使いこなすことで、筋力のハンディを補って余りあるものがあると言える。
次に、肩関節についてである。
通常、肩から腕が伸びているように思われがちだが、実際には前側では鎖骨、後側では肩甲骨も腕の一部と考える。
であるから腕の始まりの部分は、肩関節ではなく、鎖骨の根元である胸鎖関節である。
従って、肩甲骨と鎖骨がどれだけ自由に動くか、ということが体幹運動の成否を左右するとも言える。
具体的には、鎖骨、肩甲骨を有効に可動させることで、ストレートパンチの伸びは20~30㎝は違ってくる。
前回の重心移動で、不必要な「意」による影響は、力み(りきみ)というかたちで肩に現れる、と書いた。
それは、体幹の運動参加を妨げる要因のひとつであるが、過度なウェイトトレーニング等で肩周りの筋肉が固くなってしまっていても、同様に体幹の動きを制限してしまう。
又、太ももの後ろ側の大腿二頭筋、通称、ハムストリングは全身運動の際、バネの役割を持つ。
この部分の筋伸張反射を引き出すためには骨盤が前傾している必要があるが、肩甲骨の諸筋郡が必要以上に硬化していると、脊柱全体の構造的な問題から、骨盤が前傾しにくくなるとされている。
加えて、肋骨の可動性も問題となる。
これも、ウェイトトレーニング等によって硬化させてしまいがちなパーツである。
肋骨は12本の肋椎のうち、真肋、加肋と呼ばれる10本はカゴ状の骨格であり、肺呼吸の際、胸が大きく動くことから可動性があることが理解できる。
この肋骨も、ある程度、自由に動くことが体幹運動の上ではより望ましい。
この様な体幹運動を有効に活用していくためには、先の肩甲帯、肋椎が柔軟である方が有利であるが、個人的には、それほど以上に柔軟でなくとも、全身運動のレベルを引き上げることは可能であると考えている。
これは、立禅によって各自の関節の可動範囲を認識することによって、その人なりの動きの性質を引き上げることが出来ると考えているからである。
しかし、初心者は、必要とされる体幹部分の柔軟性を向上させることで、全身運動の際、体幹が運動参加していくことがいかに有効であるかを知る必要がある。
そして、これは立禅によって動きの性質を変容させることに比べると、はるかに獲得しやすい。
実践空手道クラスの目的は、早くて1~2年で組み手に参加していけるだけの打撃技術の修得であり、その点、体幹運動は修得しやすく、それでいて太気拳修得の妨げ、つまり、立禅による内勁の開発の妨げにはならないと思われる。
会員各位、参考にされたし。
⇔伸ばす⇔縮める
⇔反らす⇔丸める
⇔捻じる
(体幹運動の基本3動作)
体幹運動による蹴り(田中旭臣・初段)
参考文献
「スーパーボディを読む」(伊藤昇著/マガジンハウス)
「新トレーニング革命」(小山裕史著/講談社)
「野球トレーニング革命」(小山裕史著/ベースボール・マガジン社)
「黒人リズム感の秘密」(七類誠一郎著/郁朋社)
空手拳法成道会
http://www.joudou.jp/