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成道会実践空手道~体幹運動~

2009-09-26 15:59:00 | 格闘技、武道
成道会実践空手道で採用している運動理論に体幹運動」がある。
これは、故・伊藤昇氏が提唱された「胴体力」を参考にして、成道会で実践しているものである。

人間の動きを客観的に捉える場合、その腕や足の動きに注目していることが多いものである。例えば、肘の角度が云々とか、膝の位置が云々とかいった具合である。

しかし、実際に人体の動きで重要となるのは、腕や足よりも体幹部分、すなわち腕や足を除外した「ボディ」の動きが、あらゆる動きの性質を左右する

陸上競技、水泳、球技、ダンス、舞踊、格闘技など、ありとあらゆるスポーツ、運動において、然りである。

腕や足を除外して考えた場合、体幹の動きは横方向に「伸ばす⇔縮める」、前後に「丸める⇔反らす」、さらに「ねじる」の3通りに分類され、あらゆる身体動作はこの3つの体幹動作が複合されて運動参加し、全体の動きを形成する。

これを打撃に採用した場合、パンチもさることながら、蹴り技に著しい上達が見られることが多い。
蹴りは足を使って行われるが、体幹がどれだけ運動参加しているかで、その性能が決まる。
股関節がもともと固くて足が上がりにくい人でも、体幹を使いこなすことで蹴りの性能を向上させることが出来得る。

体幹を使いこなせると、廻し蹴り等で、ヒットする瞬間のインパクトを足の力によらず、骨盤の動作で行うことが出来るようになる。

これは、小柄な人や腕力や脚力に自信がない人でも、体幹部分をフルに使いこなすことで、筋力のハンディを補って余りあるものがあると言える。

次に、肩関節についてである。

通常、肩から腕が伸びているように思われがちだが、実際には前側では鎖骨、後側では肩甲骨も腕の一部と考える。
であるから腕の始まりの部分は、肩関節ではなく、鎖骨の根元である胸鎖関節である。
従って、肩甲骨と鎖骨がどれだけ自由に動くか、ということが体幹運動の成否を左右するとも言える。

具体的には、鎖骨、肩甲骨を有効に可動させることで、ストレートパンチの伸びは20~30㎝は違ってくる。

前回の重心移動で、不必要な「意」による影響は、力み(りきみ)というかたちで肩に現れる、と書いた。
それは、体幹の運動参加を妨げる要因のひとつであるが、過度なウェイトトレーニング等で肩周りの筋肉が固くなってしまっていても、同様に体幹の動きを制限してしまう。

又、太ももの後ろ側の大腿二頭筋、通称、ハムストリングは全身運動の際、バネの役割を持つ。
この部分の筋伸張反射を引き出すためには骨盤が前傾している必要があるが、肩甲骨の諸筋郡が必要以上に硬化していると、脊柱全体の構造的な問題から、骨盤が前傾しにくくなるとされている。

加えて、肋骨の可動性も問題となる。
これも、ウェイトトレーニング等によって硬化させてしまいがちなパーツである。

肋骨は12本の肋椎のうち、真肋、加肋と呼ばれる10本はカゴ状の骨格であり、肺呼吸の際、胸が大きく動くことから可動性があることが理解できる。
この肋骨も、ある程度、自由に動くことが体幹運動の上ではより望ましい。

この様な体幹運動を有効に活用していくためには、先の肩甲帯、肋椎が柔軟である方が有利であるが、個人的には、それほど以上に柔軟でなくとも、全身運動のレベルを引き上げることは可能であると考えている。
これは、立禅によって各自の関節の可動範囲を認識することによって、その人なりの動きの性質を引き上げることが出来ると考えているからである。

しかし、初心者は、必要とされる体幹部分の柔軟性を向上させることで、全身運動の際、体幹が運動参加していくことがいかに有効であるかを知る必要がある。
そして、これは立禅によって動きの性質を変容させることに比べると、はるかに獲得しやすい。
実践空手道クラスの目的は、早くて1~2年で組み手に参加していけるだけの打撃技術の修得であり、その点、体幹運動は修得しやすく、それでいて太気拳修得の妨げ、つまり、立禅による内勁の開発の妨げにはならないと思われる。

会員各位、参考にされたし。

伸ばす⇔縮める
反らす⇔丸める
捻じる
   (体幹運動の基本3動作)



体幹運動による蹴り(田中旭臣・初段)


参考文献
「スーパーボディを読む」(伊藤昇著/マガジンハウス)
「新トレーニング革命」(小山裕史著/講談社)
「野球トレーニング革命」(小山裕史著/ベースボール・マガジン社)
「黒人リズム感の秘密」(七類誠一郎著/郁朋社)


空手拳法成道会
http://www.joudou.jp/


成道会実践空手道~重心移動~

2009-09-05 11:22:00 | 格闘技、武道
成道会実践空手道で重視している身体操作のひとつに重心移動がある。

鍛えられた筋力を用いた打撃の威力は言うまでも無いが、自身の体重を利用した打撃の瞬間的な威力はそれを上回ることが多々ある。

地球上に存在する物質は全て「重力」の支配を受けている。
重力とは地球の中心に引かれる力、すなわち引力であり、これは地球上のどこにいてもその支配から逃れることは出来ない。
例えば、10kg程度の重さの鉄球を1mくらいの高さから落下させてみる。
するとそれは、堅い材木で出来た床板を破損させるほどのエネルギーとなる。足指にでも落としたら骨にヒビが入ったり、折れるかもしれない。
ただ落下させるだけで、それ程の速度と威力が生まれる。
この当たり前の物理現象を打撃する際のエネルギーに利用してしまう。
重力に対抗することよりも、重力を味方にすることを選択する。

50~60kgの物質が落下する時のスピードは大変なものである。
手元にある適当なもので試してみればすぐにわかる。
体重が60㎏ある人は、60㎏の物質が落下する大きなエネルギーが最初から備わっているわけで、そいつを打撃の威力に転化する。
さてその際、重力の働くラインは常に地面に対して垂直である。
身体のどこかに余分な力が入ってしまうと、落下しようとしている現象に対して身体のどこかでブレーキをかけてしまい垂直落下のスピードが減速され、せっかく発生するはずの大きなエネルギーを減殺してしまう。

垂直落下のスピードを減速させないためには、身体には余分な力みが一切入っていないことが求められる。いわゆる「脱力」である。

力を込めた状態、つまり力んだ状態というのは、実感を伴い、身体で理解しやすい。
反対に脱力した常態、緩んだ状態というのは実感が伴いにくいので、理解しにくい部分がある。
実際には完全に脱力するとその場に立っていることすらできるわけがない。
姿勢を支持するための筋肉が適度に緊張しているのでその姿勢を保てるのであるが、これは緊張の中に弛緩があり、弛緩の中に緊張があり、とも言える。ただ、この場合、知覚しやすい力を込めた状態よりも、知覚しにくい力を抜いた状態を先に身体で理解してしまうことが優先される。
つまり、脱力した状態を先に知る必要がある。

その上で脱力を優先した動きづくりが必要になるのだが、これが簡単なようで難しい。個人差もある。
いわゆる「」の部分の関わりも大きくなる。
よく「肩に力が入ってるぞ!」等と言われるが、肩周辺がガチガチに力んで動きが固くなってしまっている時がある。
これは、より早いパンチを打とうと意識したり、より強いパンチを打とうとしたりすると生じやすい。
つまり本人の意による影響は肩周辺に生じやすいと言える。
そこで調子のよくない時は、意が現れやすい肩周辺を自己観察するとよい。

「飯を食うときに箸を動かすように打て」とは、余計な意を用いずにより自然に打て、ということである。
その様にして、威力と速度ある打撃を自然に打ち出すためには必然的に重力を利用せざる得なくなる。

ある程度、脱力できたら、次に重心を垂直に落下させるコツをつかむ。
次に、重心を前後、左右と瞬時に移動させるコツをつかむ。
ボクシングで言うところのシフトウェイトである。
その際、膝の辺りで重心を捉えてしまうと、太ももの前側に緊張が生じ、動きにロックがかかってしまうので、股関節で重心を捉える必要がある。これにて、太ももの後ろ側、すなわち人体中で最大のバネの役割を持つハムストリングが機能するようになる。
パンチでこのコツをつかむと、自身の体重を利用した打撃が可能となり、自分の体重×落下速度、これに加えて打ち込む角度が加わり、筋力に頼らずともその人なりの強力な打撃を手にすることができる。

一般的なパンチでは、ストレートは後→前に、フックは右⇔左に、股関節での重心移動が利用される。
応用できる様になると、アッパーや蹴りでも重心の前後移動を転換して下から上方向へ、ナナメ方向へといった打撃の威力にすることが可能となる。

筋力による打撃はズシンと重たい。対して重心の瞬間的な移動による打撃はシャープでキレがある。
生涯武道を目標とする成道会では、これを優先的に体得することを求める。
その理由は加齢による筋力の衰えを補って余りあるからである。

さらに立禅による姿勢の変化によって動きの性質が変化するというのは、力の伝達形態が変わる、ということであるが、その前段階で身に付けておいても何ら支障がないと思われる。

内勁が開発され武術としての動きが備わってくると、重心移動、重力の利用は、あって当たり前のごく自然なものとなる。実際に獲得できるものはそれ以上である。
アスリーティックな筋力重視の身体動作から、より武術的な動きへと変換していく上でも内勁の開発の妨げにはならない。

会員各位、参考にされたし。


    (ニュートラルポジション⇔右シフト⇔左シフト)


(組み手立ちによる左右重心移動・ニュートラル⇔右シフト⇔左シフト)




重心移動によるパンチ、右ストレート→左フック・(田中旭臣・初段)



参考文献
「からだには希望がある」(高岡英夫著/総合法令出版)
「ワールドクラスになるためのサッカートレーニング」(高岡英夫・松井浩著/メディアファクトリー)
「スーパーボディを読む」(伊藤昇著/マガジンハウス)
「新トレーニング革命」(小山裕史著/講談社)
「野球トレーニング革命」(小山裕史著/ベースボール・マガジン社)


空手拳法成道会
http://www.joudou.jp/