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成道会の立禅の段階

2023-09-04 08:33:03 | 格闘技、武道

前回までの成道会における立禅の要求段階を整理してみた。

第1段階(一定時間立つ)→第2段階(重みを下におく)→第3段階(膨張感)→第4段階(先端の意識)→第5段階(はさむ意識)→第6段階(吸引力)→第7段階(前方出力)→第8段階(下肢の前方出力)→第9段階(股関節の定中)

こうしてみると全部で9段階あって、第3段階あたりまでを習得すれば打撃の威力は自然と引き上げられる、第5段階あたりではもっと具体的に立禅によって獲得した能力を打撃の動きに適用させてその威力を引き上げることが可能となる。
推手においても第3段階か第4段階あたりでは接触している腕にかなりの重さが現れてくる。
意念による微細な筋肉の活動による微細な骨格の形状変化を把握できれば第6段階まではわりと理解しやすい。

第7段階以降は理解できるかどうかはその人次第であると思う。
それはその感覚がより微細になっていくからであり、そのような微細な感覚を拾えるかどうかは個人の取り組みと求めるところによると思うし、自分ではできているつもりでも後々になってみてみると、その時点では全然できていなかったと思い知らされることも多く、また、思い違いをしたままで進んでしまうことも多い。
しかし、その微細な感覚によって生じる力はわずかであるけれど、あるとないでは全くと言っていいほどの差違が生まれると言っても過言ではない。

各段階において獲得した能力を打撃でも推手でも試してみると、上手くいく場合とそうでない場合があるが、
そのようなテスト、つまり試力において実験してみることでより自身の能力を向上させていくことができる。

どの段階においても、その時点での力がそれなりにしっかりと出ている場合もあるし、そこまでではないけれど、次の段階に進んでみた場合に結果としてよくなっていく場合もあると思う。

しかし、現時点の段階を経ることで次の段階を理解することができるのは間違いないようなので、成道会では今後もこの方法で立禅の能力を引き出していこうと思う。

立ち続ける時間をより多くかけることにより得られるものが多いというのは本当で、時間をかけて立ち続ける耐久力が備わることによって自身の身体の内部状況を観察することが容易になる。
なので、どのくらいの時間、立ち続けることができるのかに挑戦してみるのも初期段階では有意義であると思う。
やがて様々な能力を理解できるようになると質を優先する内容となってくるが、質そのものが不明な場合は時間を量、負荷として、その負荷に対応できるだけの器を作っていくことも必要であり、そのようにして立禅による能力を引き出していくための素地を作っていくことも必要であると考える。

通常の運動における動作獲得においても小脳が記憶している運動機能を上書きしていくことでその質を向上させていくが、そのためには本人が理解できている知識や情報が必要で、特に立禅の場合は自身の知らない未知の能力や感覚を、又、ある意味人体の中に眠らせているような能力や感覚を引き出していき、拾い上げていくことによって上書きを繰り返す作業であるとも言える。

そもそも一見すると不毛としか思えないこの鍛錬法を自身の訓練として採用することができるということは、それそのものがその人の才能であるとも思う。

現在、私自身は第9段階の次の段階に入っている。
来年は57才を迎えようとしている私の身体の中でこのような変化が続いていることに正直、驚いている。

 

太氣拳成道会
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成道会の立禅・9 定中

2023-08-21 09:59:29 | 格闘技、武道

膝の上抜きと前抜きを同時に行なうことで、ブレのない強靭な下半身の軸を作ることができるようになる。

関節の動きは全て円運動である。
指の曲げ伸ばし、膝の曲げ伸ばし、背骨の動きなど、全身の動きは全て円運動の組み合わせであり、武術や格闘技においては、これらの円運動のつながりによって打つ、蹴るといった動きが成立する。

円運動においてはその動きには必ず中心があり、より効率的に円運動から威力を発揮するためには、動きの中でこの中心の位置がより固定されていることが望ましい。つまり、ブレのない状態、あるいはブレの少ない状態である。

人体の骨格の中で最大の大きさを持つ骨盤を力の発生源とすることはどの運動でも追及されていることであり、腰を動かすことの重要性はどの種目でも要求されていることである。

そのような重要なユニットである骨盤はあらゆる動きにおいて力の源泉たる役割を持つ。
その骨盤の動きを横方向に回転させるとして、中心部に軸がある場合、左の股関節に軸がある場合、右に軸がある場合に分類してとらえてみる。

例えば右のパンチを繰り出していく場合、骨盤を反時計回りに回転させていくことになるが、この時、中心の軸に対して右の股関節は前に、左の股関節は後に動く。
拳が目標にヒットした瞬間に左の股関節が後側に動き続けていたら、パンチの衝撃が左側から後方に逃げることになり、目標とする対象に与えるべき衝撃は相殺されてしまう。
これに対して左の股関節が軸となってそこを中心に骨盤が回転して、右拳が目標にヒットした場合、左の股関節の位置がずれることなく骨盤が回転しつづけるとすれば、その威力は前方にのみ働き、衝撃を余すことなく対象に伝えていく。
骨盤の回転する動力はその力を余すことなく対象にぶつけていくことになる。

このように円運動の威力を漏れなく対象に伝えるためにその中心を固定するというのは、物理的に重要な要件となる。

動きの中では中心がグラグラ動いてブレてしまう要素を少なくする必要があり、この中心を定める状態を「定中」と呼んでいる。

武術や格闘技の動きにおいては、骨盤の横方向の回転はあらゆる場面で機能するものであり、その中心は骨盤の間にあるが、左右の股関節にあることでより大きな力を発生させられるものと考えられる。

動きの中で左右の股関節での定中を確立するためには「膝の上抜き」と「膝の前抜き」を作用させることによって、前後にブレることのない軸を作り出すことが可能となる。

これができてくると股関節を中心として回転するような働きが常に確認できるようになる。

実際に動いてみた場合、股関節が後ろ側に動いて軸がブレてしまい相殺的な効果を生み出してしまうが、その動きを抑制させるための下半身の状態を訓練することができるようになってくる。

しかし、その状態が微妙であって確認することすらも難しい。
立禅においてはこのような微妙な感覚をひとつひとつモノにしていく必要があり、段階が進むにしたがって、より微妙となってくる。
それは通常の運動では全くと言っていいほど気が付くことの無いようなものであり、だからこそ、立禅のような静止した状態でのみでしか得られないのかも知れないし、段階を踏んでひとつひとつ進めていけば獲得できる可能性があると思うので、門下生にとっては自身がどのあたりにいるのかを判断してもらうためにも、立禅の段階を示しておきたくてこのような記事を書いてみた。
筆舌に尽くしがたい部分が多いので限界があることを感じながらも書いてみたが、門下生各位は参考にしていただきたい。

 

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成道会の立禅・8 下肢の前方出力

2023-08-07 08:26:47 | 格闘技、武道

前方出力がなされると、それは前側からの負荷を強靭に支えようとする支撑(ししょう)能力であることが理解できる。
肘は落として広げた肩甲骨によってやや前に押し出されて続けている状態となる。

次の段階ではこの支撑能力を下半身、つまり脚に求めていく。

形体運動のひとつに座ろうとしたり立ち上がろうとしたりする運動があるが、膝を上に引き抜こうとすることによって股関節は折りたたまれ座りこもうとする力が働き、反対に座りこもうとすることによって、膝を上に引っこ抜こうとする力が発生するとも言える。
上に行こうとする力と下に向かおうとする力が同時に発生することにより、この動きが成立する。
上下の力であり、その作用として結果としてこのような動きを形成する。
このような動きを筋肉の大きな収縮力にのみに頼ることなく、骨格の相互作用によって繰り広げていく。
私はこれを勝手に「膝の上抜き」と呼んでいる。

この動きの中に存在する膝と股関節の作用と反作用のような力を立禅の中に落とし込んでいく。

立禅の状態は動きが外に出ている状態ではないので、この膝の上抜きも静止している状態で、外見上はほとんどわからないような微妙な動きとして、しかし、自身の身体の中では存在するものである。
客観的には動きとして確認することはできないとしても、その作用、働きは自身の身体の中でのみ確認できると言ってよいものである。

この「膝の上抜き」の状態で立つ。

すると、膝は常に引き抜かれているような、引き抜かれていくような感じがあり、同時に股関節は常に後ろの高いイスに座り込もうとしているような感じがあり、骨格を上下に引き合う力はより強靭になる。

次に、形体運動のひとつに中腰の姿勢で膝を前に突き出してひざまずくような動きがある。
以前はこの動きを自身の骨格を相手に対してぶつけていく際に物理的な力積を生み出すために、安定と不安定の変換を体認するようなものだと解釈していたが、本当の内容はもっと重要なものだった。

膝を前側に突き出していく時に股関節を使って膝を前に押し出していく。
股関節で膝を押し出してくために上体は後方に動いていく。上体を後に動かすことによって股関節は前に動き、結果として股関節で膝を前側に押し出していくような動作になる。
さきほどの上下の動きに対して前後の動きと言える。
さきほどの膝の上抜きに対して「膝の前抜き」と勝手に呼んでいる。

立禅の際に「膝の上抜き」で立つことができたなら、次にこの状態を維持したままで「膝の前抜き」が作用している状態で立ってみる。
これもその動きは外に出ているものではないので、自身の身体の中でのみ確認できるようなものであるが、しかし、間違いなく存在する。

膝を前に押し出そうとする力が働くことによって足裏の重心はやや前側に置かれるようになり、その部分で地面を軽く踏んでいるような状態になり、踵の方はその皮をつぶさない程度に軽く浮いた状態で立つようになる。
これが、踵の下に小蟻をはさんで殺さないようにそれでいて逃がさないようにして立っている状態である。

このようにして、膝を前に押し出そうとする力が常に働くようにして立てるようにしていく。
すると、「膝の上抜き」と「膝の前抜き」とが同時に作用している言葉では表現しようのない独特の状態になる。
実際には実に微妙な感覚なので、そのような力が働いているかどうかをとらえること自体が難しいのだが、これができるようになってくると、動きの中で体軸や股関節のブレを最小に抑えることが可能となってくる。
そして次の能力の獲得に移行する準備が整ったことになる。

 

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成道会の立禅・7 前方出力

2023-07-24 16:59:36 | 格闘技、武道

吸引力を発生させることができるようにっている段階で、骨格の舒展(じょてん)能力は格段に強化されており、意念によるわずかな筋肉の収縮活動による支撑(ししょう)能力はごくわずかな意識によって発現させることができるようになっている。

中国語がわからないので正確ではないかもしれないが、舒展とは骨格を広げるという意味で、立禅における主に背面を広げていくような能力だと解釈しているし、支撑とは舒展により広がった骨格でそこにかかる負荷を支える能力だと解釈している。
腕立て伏せをやっている時に腕の曲げ伸ばしをしている時は辛いけれど、腕を伸ばして背中側は肩甲骨を左右に広げてやると一瞬楽に身体を支えられる。
あるいはウェイトトレーニングでベンチプレスをやったことのある人はわかると思うのだけど、バーベルを上げ下げしている時は大変な労力が必要だけど、腕を伸ばした状態でバーベルを支えると、同じ重量でも全然楽にバーベルを支えることができる。
このような支撑能力を発揮するために舒展能力は必要となる。

吸引力はこれらの能力をより簡単に引き出すことができる意念のひとつであると考えられる。

立禅における能力開発において、左右の手掌、左右の足裏、頭のてっぺん(百会)、みぞおちの6箇所に吸引力の感覚を建立させるのが基本であるが、この感覚に慣れてくると全身のどこでも吸引力を用いて骨格を舒展させることが可能となる。

私の場合、肩の付け根、股関節の前側、膝の裏側、肘の内側、脇、足首の前側、顔面、身体全体の前側などに持って来て、全身の構造能力を強化するために活用している。
吸引力は関節の屈曲側(曲がる方向)に適用される意念であり、その要領を理解すると実に便利である。

吸引力の感覚を利用して内勁を強化していくと、次の段階として肘と膝の前方への出力を強化する段階へと移行する。 

この段階で構造能力はかなり強化されているものと考えられるが、これまでの対立する力、つまり争力が上下、左右、前後の6方向へ平均的に発生されている状態を、前方への力を優先的に発生させる状態へと変えていく。
決して上下、左右の支えが弱くなるわけではなく、これらの強靭な力が前方への出力を強力にサポートする状態に意識的に変えていく必要がある。

武術として骨格を使いこなしてくために、相手の力の向かってくる方向は前からであり、自身の力をぶつけていく方向も前側にあるのであるから、それに利する出力を可能とする形に微妙に変えていく必要がある。
そのために、これまで獲得してきた能力をいったん手離して、新たな骨格形態を再構築していく必要がある場合がある。
これまでの能力をいったん手放したとしても必要であればまた拾いにいけるし、再現することも容易なのだが、ともかく、一旦手離してみないと、次の段階にあるものが理解できないこともある。

多いのが、横の支えが強いがために前方への出力が抑制されている場合である。

なので、これをいったん手離してみて、肘を横に支えずに自然と下に下げた状態に近くして、それでいて横を支えるという状態にしてみる。
これまでのしっかりと支えていた状態がなんとも心もとなくなってしまうので実際に手離せない人も多いかもしれないが、これを手離すことができて前方への出力への再構築が始まると、より強靭な出力形態が自身の身体の中にあることが確認できる筈である。

この前方出力は、王薌齋先生が示した図にあるような円環に対して左右真っ直ぐに力が放出されている状態である。

これが理解できたら、この状態を強化して次の段階への要求を受け入れる準備ができているものと考える。

 

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成道会の立禅・6 吸引力

2023-07-10 09:39:16 | 格闘技、武道

背骨ではさむという意念が備わるだけでも骨格の支持能力は格段に上がる。

立禅によって打撃力の強化を求めるのであれば、この段階までは習得しておかなくてはならないと思う。

この時点で、意念によって身体の内部を調整して微動による力の発揮ができるようになっているのであるが、もっと精密にしていくために次の段階を要求する。
反対にここまでがしっかりと身体で理解できていないと次に進んでも理解できないのではないかと考えられるので、そのため次の段階を要求することもできないと考える。
掛け算の九九を覚えていないと複雑な方程式を使うことはできないのと同様で、それぞれの段階での体認はそれなりにクリアしておく必要があるし、その集積がないと次の段階の要求も理解、発掘することはできないと考える。

骨格を伸ばすという意識と、伸ばすと同時にはさむという意識を持つことによって発生する力は自分にとっては微細であるが、相手に伝わる力としては密で強大なものとなる。

骨格の持つ物理的な特性が相手に伝わりやすくなるためであろうが、これを構造能力と言い、骨格を広げる能力、それによって自身の骨格を支える支持能力を獲得して強化していくのが立禅のこの段階までの目的と言える。

骨格を伸ばすと言ってもストレッチのように筋肉を可動域以上に伸展させるわけではなく、軽く骨格を広げる様なものであるが、その状態、その感覚が難しく、立禅の中から発見していくしかないものと考えられる。

関節の特徴として曲げる、伸ばすという動きも、曲げることのできる方向、伸ばすことのできる方向は決まっており、どの方向にでも自在に動かせる関節は存在せずに、例えば肘や膝は曲げることができる方向、伸ばすことができる方向は決まっている。
曲げることげできる角度、伸ばすことが出来る角度も決まっている。その範囲を超えると関節は壊れてしまう。
しかし、その範囲の中であればかなりの負荷にでも、さらに、瞬間的なものであれば、もっとさらに強い負荷にでも耐えられる構造を持っている。

この特性を意念による微細な筋肉活動をもって、引き出していくのが立禅の特性ではないだろうか。

立禅における能力の開発として次の段階としては「はさむ」という意識をもって骨格の特徴から生じる能力をさらに精密に強化する。
何かをはさもうとすると、はさむ面と反対の面は広がっていく。
手の平で何かをつかもう、はさもうとすると手の平側の面積はわずかに縮むようになり、反対側である手の甲側の面積はわずかに広がったようになる。

それは「吸い込む」という意念でも同様であり、まず両手の平の真ん中あたりで吸い込むとイメージする。
すると、伸ばす、はさむといった意念によって発生していた力がより密になることが確認できる。
次に足の裏で吸い込んでみる。
この時点で手掌と足底の4か所で吸引しているが、これに頭のてっぺんでも吸い込み、みぞおちあたりでも吸い込むイメージを加える。合計6か所で吸い込む。

このようにして骨格に本来由来している物理的な支持能力を引き出していく。

この吸引力の意識をいかに強化できるかが、これから先の勁力の開発を左右する。

 

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