羽島市に羽島市映画資料館という施設があります。
歴史民族博物館が併設された市立の施設です。
映画全盛時代に活躍した映写機やポスター、グッズなどが展示されています。
「映画の街柳ヶ瀬百年展」の一環として、映画「ふるさと」の上映会があり、行ってきました。
映画「ふるさと」は1983年、神山征二郎監督の作品で、岐阜県揖斐郡の旧徳山村が徳山ダムの建設により全村水没し、村が消えてしまう話を題材にしています。
岐阜県を舞台にした映画でしかもフィルムでの上映ということもあり、会場に入りきれないほどの観客が集まっていました。
上映に使われた映写機です。これが最後の上映になるそうです。機械はまだまだ使えるのですが、写すフィルムがもうないのだそうです。
今回上映に使ったフィルムは、最も状態のよい物を選んだそうですが、それでも退色が激しく、全体に赤みを帯びた色彩となっていました。
しかし、作品はそんなコンディションを全く忘れさせるほど素晴らしいものでした。
記録映画的な、村人がダム建設の賛否を巡って対立するような、社会的なテーマが前面に出た作品かと思っていましたが、全く違っていました。ふるさとが失われるという悲しさが根底にはありますが、もっと普遍的な、人が自然に抱かれて暮らすこと、人が人を大切に思い合うこと、毎日懸命に生きてきた場所がふるさとになることなど、しみじみと伝わってくる作品でした。観ていて自然と涙がこぼれました。
1983年というと世の中は、バブルに向かい浮かれ始める頃ですが、地に足の着いたすばらしい映画でした。
映画資料館を出て振り返ると、
建物の意匠が、かつてここにあった朝日館という映画館の外観を残したものだと気づきました。
後生に残しておきたい物はたくさんありますね。
一宮でも、シネコンなどではあまり見ることのできないけれど、すばらしい映画の上映会があります。よかったら足を運んでください。