熱田神宮に行ってきました。
1月も二十日過ぎでしたが、たいした人出でした。さすがは熱田神宮です。
宝物館では「日本の聖地~神々の宝物」展が開催されていました。それが見たくて出掛けたようなものです。
展示の目玉は、平家納経とそれが収められている箱です。
箱は、金銀荘雲竜文(きんぎんそううんりゅうもん)銅製経箱といって、漆塗りの木工品のように見えますが、銅を鍛造したものだそうです。箱の表面には雲と八体の龍が金と銀を使って浮き彫りにされています。
日蓮宗の各寺院では、法華経を上のような箱に収めています。
経箱の中には、法華経の一部八巻二十八品が収められています。
平家納経を納めた箱は、重箱のように四段になっていて、各段に8巻くらいずつ、合計33巻が収められているようです。
数年前のNHK大河ドラマ「平清盛」では、劇中で平家納経を制作する場面があり、そのための小道具としてこの経箱のレプリカが制作され使われたそうです。
この展覧会のポスターにも、この経箱の上面に描かれた龍と多宝塔が使われていました。
展覧会では、平家納経のうち、妙法蓮華経勧持品第十三と妙法蓮華経薬王菩薩本事品第二十三が展示されていました。
薬王菩薩本事品の見返り部分には、阿弥陀如来を見上げる女性が描かれていますが、よく見るとその絵の中に「此命終」「即」「生」「安楽世界」などの文字が書き込まれています。
薬王菩薩本事品には
若(も)し如来の滅後の後五百歳の中に、若し女人あって是(こ)の経典を聞いて説の如く修行せば、此に於て命終(みょうじゅう)して、即ち安楽世界の阿弥陀仏の大菩薩衆の圍繞(いにょう)せる住処(じゅうしょ)に往(ゆ)いて、蓮華の中の宝座の上に生ぜん。
(もし、仏さまがお隠れになった後の世に生まれた女人が、この法華経を聞いて教えのとおり修行すれば、命が終わるとすぐに安楽世界の阿弥陀仏のもとに行き、多くの仏たちに取り囲まれて、蓮の花の上に生まれ変わるだろう。)
と説かれている部分があります。
その「於此命終 即往安楽世界 阿弥陀仏」の文字が書き込まれているのです。
女性は成仏できないとされていた時代に、法華経だけは女人成仏を説き(もちろん女人だけでなく、すべての人が仏になれると説かれています)、多くの人に信奉されました。人々は競うように法華経を書写し、美しく飾り立て、神社に奉納しました。
平家納経も、平清盛が平家一門の繁栄を祈願して厳島神社に奉納されたものです。書き込まれた文字には、当時の人々の切実な願いが込められています。