英作問題『平成史』
6.ベルリンの壁が崩壊した。
⇒ 壁が崩壊したと、ひとくちに言っても、上記の場合、単に物理的に崩れたということでもないだろう。ベルリンの壁とは、一つの大きな象徴である。
世界史という大きな流れの中で、列強諸国が植民地化政策により、アジア、アフリカの国々を支配下に置き、行き過ぎた資本主義の結果、持つ者、持たざる者(the haves and the have-nots)に世界が2分化され、資源もしくは植民地獲得競争は激化し、2度の大戦を世界は経験した。過熱した資本主義は、国の富を増加させた一方、労働者は劣悪な環境における長時間労働を強いられ、権利がないがしろにされ、搾取が横行した。特に産業革命の始まった本拠地であり、世界の工場と呼ばれたイギリスでのその惨状を見たマルクスは、イギリスの大英博物館の図書館にこもって、資本論を完成させた。その社会主義の理論でもって、元々は弱者の救済を目指したであろう社会主義(共産主義)であったが、ソビエトを発足した途端、周辺の資本主義国家は、社会主義の自国への波及を恐れて、対ソ包囲網を構築、その中で、ソ連は警戒を強め、社会主義体制の強化、徹底のために、国民への監視を強め、極端な警察国家、監視社会となった。反対者は次々逮捕、パージ(粛正)された。その顕著な例が、スターリンである。
第2次大戦後、東西両陣営の冷戦が長らく続いた。ソ連は周辺諸国、東欧の国々を社会主義体制下に置いた。ドイツは、東西に分断された。民主主義の西ドイツと、社会主義の東ドイツに分かれてしまった。日本だって、戦後すぐ、東西に分断される話があったという。サンフランシスコ講和条約を経て、日本は民主主義、資本主義であるアメリカと協調して歩むことにして、結果的に国として、現在の経済的繁栄を享受することとなった。戦後処理の過程で、日本が東西どちらの陣営に属してやっていくか、その決定が、その後の国の明暗を分けることになった。
ベルリンの壁は、東西分断の象徴であり、ドイツ国民にとっては、愛するもの、家族、友人が分かたれる、涙の象徴である。どれだけ多くの人たちが、圧政を逃れるため、西への逃亡を試みて、その命を落としたか。
ドイツ国民を分かつ大きな壁は、世界を大きく東と西に分断する象徴であった。
一口に、ベルリンの壁崩壊といっても、そこには、大きな歴史のうねりがあり、ドラマがある。
歴史を考えるのは、そのくらいにして、英作をする。
英作をする、ということは、単に日本語を英語に置き換えることだと考えるのではなく、その背後にある人の想いや歴史を感じることが、大事だと思うし、それによってこそ、自力で、また正確に、より自然に英語で表現することができると私は思う。
崩壊したということは、今はもう存在しない。haveをつかうと
・We have no Berlin wall now.
崩壊した、ということは、以前はあったわけである。
・We had the Berlin wall. But now, we don't have the wall.
こういう対比も、簡単な英語だけで言うにあたっては、大事な発想である。
他にも、ないわけだから、be動詞を使うと、
・The Berlin wall is no longer there.
・The Berlin wall is not there.
・There is no Berlin wall now.
崩壊するということは、視覚的には『見えない』ので、see を用いて
・We can never see the Berlin wall now.
崩壊ということは、自然にではなく、誰かが壊すので、
・They broke the wall.
崩壊する、ということは、我々にとって、それを失くすわけなので、lose を使い、
・We lost the wall. (And we will never have the Berline wall forever)
崩壊と言っても、地震によって崩れるというなら、物理的な意味なので、人が転ぶという時に言う fall downを使って以下のようになる。
・The wall fell down when we had a big earthquake.
・Walls collapsed when a big earthquake hit the area.
・The big earthquake hit the area, and it brought many walls down.
・The earthquake knocked down many walls in the city.
崩壊といっても、どういう文脈で、背景で、そう言っているのか、考えると、より自然に、簡単に、自分の知っている英語で言えるのが実感できるだろう。
史実としてのベルリンの壁崩壊は、通常 the fall of the Berline wall などと歴史書などで、書いてある。何も取り立てて難しくない。
別にベルリンの壁の話をすることもないだろうが、崩壊うんぬんを英語でどう言うということよりも、大切なことは、崩壊って何と言うかわからない時、すぐわからないと投げ出すのではなく、少し考える。考えるということは、自分の持っている知識を最大限生活かすこと。
自分が当該の知識を有していない時、どう身を処するか。英作で問うているのは、その人の、素の力、問題に対応する力である。
the fall of the Berline wall なんか、簡単であるし、本当は、どんどん英語で読んでいれば、身につくだろうし、その意味で、本来的には、大量に英語のインプット(読書)をするべきである。しかし、その一方で、自分が知らない時に、お手上げになるのではなく、自分で、自分の頭で考えて表現する。その、自分で立って、自分で戦う姿勢こそが、英語力をつける、近道だと思う。
せっかく英語を勉強しているのに、いつまでも他人に(辞書、スマホ、先生、外国人等)頼っていても、面白くないと思う。
考えることで、自力で英語を話す。その方が英語は、断然面白い!
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