皆様新年あけまして、おめでとうございます。
英語学習は進んでおられますでしょうか。
当ブログでお伝えしています通り、通常は記憶力がものをいう語学において、考えるという、我々に等しく与えられている能力を駆使することによって、格段の進歩を遂げることができます。
今年こそは、英語をしっかり身につけたいという方は多いと思います。
しかし情報過多の現代において、考えるということが、今ほど困難な時代は、ありません。
ちょうど昨年末ですが、あるオンラインレッスンの生徒様に、(以前にブログでもご紹介した)人種問題の記事を読んで頂いて、いつものように宿題を英語で解答して提出してもらいました。
様々な要因が重なり、野菜の入手が困難である黒人の居住地において、人種差別、愛する人との死別等を乗り越え、貧困にあえぐ大勢の人たちに何とか野菜を供給しようと立ち上がった女性たちのお話です。
野菜が手に入らないため、また貧困から、自ずから不健康な食べ物しか手に入りません。
色々な企業に掛け合って、出店してもらうよう懇願しますが、うまく行きません。
And North Minneapolis — whose 67,000 residents are 90% Black, Latino or
Asian — doesn't fit the typical demographic grocery stores look for, says Steve
Belton, president and CEO of the Urban League Twin Cities.
本文に上のような箇所があり、ここの意味する所が理解されているか、生徒の皆さんに英語でお聞きするのですが、なかなか難しいようで、この箇所の正答率は、かなり低いのです。ところが、今回の生徒様ですが、レッスン前にお送り頂いた宿題の答えを添削のため拝見しましたら、この箇所が完全に理解されているのがわかり、非常に嬉しく思いました。
レッスンで、その生徒様に、難しい箇所なのに、どうやってわかったのですかと、尋ねたところ、『想像力です!』とのこと。素晴らしい。
こういう文章を読む際は、どうしても、ほとんどの人は、難しい単語に目が行くでしょう。ここでしたら demographic という単語がありますが、(英和)辞書で引きましたら、【人口学の、人口統計の】としか書かれてありません。これでは、何のことやらわかりません。
こういった、学校で学ぶ英語とは違う、生の英語は特に、辞書を頼ってはダメです。辞書に頼って、英語を逐語的に訳そうとするのではなく、わかる箇所を見つけて、それらをつなぎ合わせて、まずは流れに沿って読むことが大切です。
難しいdemographic という単語はいったん脇に置いて、North Minneapolis について、他にどんなことが書かれているでしょうか。
North Minneapolis — whose 67,000 residents are 90% Black, Latino or Asian
67,000人いる住民の9割が黒人その他であるとのことです。
ここにスーパー等の店を出店する立場で考えた時に、経営者として、どう思うでしょうか。想像してみて下さい。
North Minneapolis / doesn't fit the typical demographic / grocery stores look for.
North Minneapolis は、fit しない。合わない。grocery store(スーパー)が look for (探す→求める)→スーパーが求める demographic に合わない。出店を考えている経営者の立場を『想像』したら、もうわかりますね。この文脈では、要するにスーパーが求める『客層』というほどの意味にとるのが自然でしょう。
先の生徒さんの書かれた答えは、以下の通りです。
A lot of poor people live around the area and the shop can't get profit. (※profit →make a profit 可)
その地域が、貧しい人ばかりが住んでいるので、店として儲けが出ない、と理解されており、正確に文意に沿った答えを自分なりの英語で出されたのがわかります。
以前なら、難しい箇所には、?マークをつけて、答えをあきらめてしまうこともありましたが、今では難しいと思える箇所も、ご自分なりに考え想像し、ご自身の英語で答えを出されるようになってこられました。
自ら考え、想像する。
英文を読み、理解できないのは、語彙が不足しているからだけでしょうか。わからない単語に圧倒されてしまいがちですが、その英語という壁の向こうにある、人間の営み、思いというものを想像することを、忘れてはいないでしょうか。
言葉の向こうにある人を思う。
英語であれ、日本語であれ、それらの言語を使うのは、同じ喜怒哀楽の感情を持つ人間同士なのです。
単語の不足を嘆く前に、黒人さんであれ、誰であれ、その人の苦悩を思う。
そういった、どこまでも当たり前で、極めて人間的な行為こそが、効率ばかり言う今どきの語学に、一番欠けていて、最も必要とされる事なのではないでしょうか。
今年こそは、英語を話せるようになりたい。そう思われる方も多いことと思います。
道は近きにあり。しかるにこれを遠きに求む。(孟子)
考える、想像するといった、我々のもつ当たり前の能力に、今一度光をあて、安易な効率重視の機械的な学習から、心を用いた、自然で人間らしい学び方をされ、自ら英語を読み、自力で話すという喜びをぜひ味わって頂ければ幸いです。
今年も、どうぞよろしくお願い致します。