付け焼き刃の覚え書き

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「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」 原作:水木しげる

2023-12-15 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「世界は半分隠して見る程度がちょうどいい」
 世の中の全部を見ようとしてもいいことはないとゲゲ郎。

 昭和31年、政財界を牛耳っていた龍賀一族の当主、龍賀時貞が死去。帝国血液銀行で龍賀一族の経営する製薬会社「龍賀製薬」を担当する水木は、次の当主とのコネを強化するために龍賀一族が暮らす哭倉村へと向かったが、同時に龍賀製薬が製法の秘密を握る血液製剤「M」の秘密も探るよう命じられていた。
 その水木は、夜行列車の車中で老人のような髪の青年から「おぬし死相が出ておるぞ」と告げられるのだが……。

「ツケは払わねえとなあ!」」

 最近「これ、マルチバースだよね」と囁かれている、アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』の第6期の前日譚で、「墓場の鬼太郎」の冒頭につながる物語です。山奥にある古くからの因習に縛られた村を舞台に、当主の死による財閥後継者を巡る争い、そして発生する凄惨な連続殺人事件。都会に憧れながらも旧家に縛られる少年少女、行方不明の妻を探す謎の青年と、これぞ正しき伝奇ミステリ。そしてやがて妖怪や幽霊が出現して妖怪ファンタジーの要素が加わり、一気にクライマックスの怒濤の展開へとなだれ込みます。
 これで村を訪れたのが功名心に流行った兵隊上がりの青年ではなく、考古学者の稗田先生とか、民俗学者の宗像教授だったらどうにかなったのかなあと思わないでも無いけれど……無理だろうなあ……。

 誰もが当たり前にタバコを吸い、気軽に吸い殻を投げ捨てる、すっげー昭和感満載の和風伝奇ファンタジーで、戦争の疵痕を引きずる戦後の物語という意味で『ゴジラ-1.0』と好一対(理不尽に死ねという命令から生き残った男が、あらためて死に直面してどう行動するか?)。変に説教臭い演説はないけど、南方での理不尽な兵隊たちの死がカットバックで入る分、物語の流れはこちらの方がスムーズ。あと、要所で映り込む「赤い衣装を着たお人形」の持ち主の運命が気になります。あと、「ある謎の少年」! おまえ、そんなやつじゃなかったろう?
 そして劇中でされる「約束」は、「必ずかなえられる約束」と「叶わない約束」のどちらかなんだけど、どっちかなあと思っていて、ああっ!?……てなりました。

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