付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「魔王討伐から半世紀、今度は名もなき旅をします。」 じゃがバター

2024-06-15 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「あんたら、何の集まりなんだ?」
 スイルーンに庶民の一般常識を教える係に雇われた傭兵タインは、ついにかねてより疑問に思っていることを聞いてしまった。名前まで聞いてしまったら、もう後戻りできない。

 魔王討伐から50年。勇者は戻らず、魔女は森に去り、神官は神殿に入り、俗世に残るのは剣聖と呼ばれるスイルーンだけだが、彼ももう72歳。彼はただ女神との約束が果たされる日を待つだけだ。
 だが、魔王討伐から半世紀を祝うパーティーのための衣装の仮縫いの日、スイルーンは白い光に包まれたかと思うと魔王討伐当時の姿に若返っていた。女神ラーヌの古い約定が果たされるときが来たのだ……。

 勇者パーティの一員だった剣聖は人生の終焉を前に、再びかつての旅路を辿る旅に出る事にした。なぜか女神の力で若返らされ、一人旅のつもりがだんだん同行者が増えてくるけど……という、『葬送のフリーレン』とかとプロットは似ているのに、その骨格にまとわりつく肉とか皮が別物なのでストーリーがまったく別物になっているという、創作論のお手本になりそうな1冊。
 じじいののんびり一人旅のはずが、仕事をほっぽり出してじじいがもう1人勝手に付いてきて、さらにかわいい孫娘たちが追いかけてきて、気がつけば勇者、魔女、神官、剣士に聖獣が加わって旅の仲間がそろってしまいます。そんな一行が、魔王と勇者の戦いが終わって(ほぼ)平和になった世界を旅していく物語です。
 イラストも巧いし、レイアウトも絶妙。中央、上半分が空白の構図でタイトルも何も入ってこないのは珍しくて、そこがなんともいえず良いのです。この先に進むのだというイメージがありました。

【魔王討伐から半世紀、今度は名もなき旅をします。】【じゃがバター】【toi8】【富士見ファンタジア文庫】【『冒険』を終えたあとの方が、人生は長くて、楽しい。】【騒がしくも気ままな“二度目”の英雄譚】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする