付け焼き刃の覚え書き

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「妖魔淫獣」 菊地秀行

2023-11-19 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「100年の知恵は20年の叡智に勝る」
 アドルフ・ヒトラーは淫藤宗光に己の優位を宣言した。

 魔人A・ヒトラーを憑依させた魔道士淫藤宗光が帰国した。自分が高みに至るために必要な試練と認めていた工藤明彦との決着をつけるためだ。
 魔境青木ケ原樹海で、最終戦争を招く邪悪な計画の成否を賭けて、念法の達人と魔人の戦いが始まる……。

 妖魔シリーズ完結編と言いつつ、その後も『妖魔淫殿』以下シリーズは続いて、気がつけば30作近くなっちゃってますが、この三部作は別格かな。日比谷公園でのヒトラー/宗光へのナチハンター&自衛隊の襲撃から、大都市壊滅までエロとグロとオカルトがみっちり詰まったバイオレンスなアドベンチャーです。
 このシリーズの肝は悲劇のヒロイン、南風さんなのです。妖魔と妖怪と超人が誰も彼もが敵ばかりという状況で戦い続ける話なので、ヒロインには可愛さとか健気さとかとは別に、最低限でも戦える能力と主人公の危険な旅に(主人公が断っても)同行する理由が必要なのです。そういう意味で、主人公と離れると狂って妖魔化してしまう、妖魔になりつつあるので力が人間離れしている(禰豆子さんみたいな)彼女にうってつけのポジション。たった3週間の夫婦生活。彼女が幸せになったときが、この話の終わるときなのでしょうけれど。

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