頼子百万里走単騎 "Riding Alone for Millions of Miles"

環境学者・地理学者 Jimmy Laai Jeun Ming(本名:一ノ瀬俊明)のエッセイ

「森林数値情報」商品化計画(小生は富豪になり損ねたか?)

2019-05-31 00:59:43 | 日記

1993年(29歳)に考えていたこと。先見の明があったか?

---

林野庁/国有林野事業版「森林数値情報」商品化計画

 東京大学先端科学技術研究センター 一ノ瀬俊明(元農林水産省林野庁技官)

<背景その1>
 大規模な累積債務(元年度末で3兆円超)を抱え苦しい経営の国有林野事業。
 人員に対し仕事の少ない部署も多い。
 売れるものは石でも土でも売って儲けたい現状。
 木材販売事業そのものでは赤字となるところが多く、他の自前の事業で収益を上げる必要性がある。
 しかし土地の切り売りのみでの対応には限界がある。
 国有林野事業職員の待遇や福利厚生を切り捨てるのも問題。

<背景その2>
 近年の地球環境・地域環境研究の盛り上がりと高まる森林への関心。
 GIS(地理情報システム)の普及。
 水文学者・気象学者・生態学者等の研究にも、土地利用データに加え森林地域の詳細な地理情報データ(樹種・林相等)が要求されてきている。
 従来森林に関しては、メッシュレベルの地理情報が十分整備されておらず、国土地理院の「国土数値情報」(100mメッシュで全国の土地利用をカバー)でも森林か否かがわかるのみであり、森林そのものを対象とした地理学的解析には不向きである。

<提案>
 安易な組織リストラを図る前に新規事業をおこし、人材を活用すべきではないか。
 余剰労働力の多い部署を中心に、「林野庁版/森林数値情報」の作成に取り組み、国有林野事業の財源としたらどうか。

<計画のイメージ>
 日本全国の森林(国有林及び民有林:約2,500万ha)を対象として、流域単位(森林施業計画区単位)でファイル化し、フロッピーに入れる。
 1km方眼(国土数値情報の3次メッシュを用いる。北海道局のフィールド等では幾何補正が必要となるが。)毎に、林相(天・人)(複・単)、卓越樹種(広・針)、林齢、材積等の組み合わせを記号化し、2桁の数値(00~99、ラスター形式)で記述。バイナリー形式(16進法)とすれば2桁でも 65,000通り以上の組み合わせを表現できる。
 全国で 250,000メッシュ( 500キロバイト)となり、フロッピー1枚にも十分入る。

<事業の実行>
 1署当たり約5人(森林官、署係長、局係員クラス)を動員すれば、全局で 1,000人程度が従事することになり、1人当たりの担当は 250メッシュとなる。毎年の更新が可能な分量といえる。1日25メッシュずつ作業する場合、年に10日だけやればよい。(年中行事的に)
 ベテランの基幹作業職員や担当区主任(森林官)には現場をすみからすみまで知っている人が多く、彼らの蓄積を目に見える形で保存するという意義も大きい。航空写真、森林簿及び林班図等を対照しながら正確な情報をメッシュ(コーディングシート)におとし、表計算ソフト等を用いて入力していく。
 事業のコーディングは民間のシンクタンクとかに発注(林野庁関連でも実績のある富士通エフ・アイ・ピーとか)。現場での作業マニュアル(データの並び、入力法など)の作成を依頼するだけなら 200万程度?(データの確認、商品への整形等はすべて局レベルで行う。原図との照合のようなレベルの確認作業は行わない。)
 著作権、所有権等を国有林野事業自身のものとするためにも、この事業は森林総合研究所を使ってはならない。(また極めて雑用的な作業となるので、研究者の手を煩わせるべきではない。)

<運用>
 販売は署別に行い、収入も署別にカウントする。林地開発需要の多い営林署管内のデータはよく売れることだろう。よく売れる営林署は、それだけ潤うことになってもよいだろう。
 全国分を 500万円とすれば、1署あたり約2万円(フロッピー1枚)となる。情報そのものの価値としては20円/km2(メッシュ)となる。(もっと高くてもよいだろうか?)
 ユーザーは登録制とし、シンクタンク、コンサルタント、ゼネコンを相手に100社ほどセット(フロッピーにして約250枚)で売れれば、5億円/年ほどの収益が期待される。
 環境基本法等に手を入れて、「林地開発にかかわる環境アセスメントにはかならずこのデータを購入して使用するべし」としてしまえば、乱開発をも抑さえられないか。
 収益金、反則金等の収入は国有林野事業特別会計へ繰り入れる。

<情報の精度>
 多くの研究者は、250m~500mメッシュの精度を期待しているようである。私信アンケートによれば、全国分の価格を50万円程度とするべきと考えている人が多い。また容量の大きなものはCD-ROMでの提供を望む声が大きい。
 メッシュサイズ、データ容量及び作成の手間の関係は以下のとおり。

   メッシュサイズ  メッシュ数(全国) 全容量   情報の価値(500万の時)
  2km   (400ha)                  62,500     125Kbyte             80円/メッシュ
  1km   (100ha)                250,000     500Kbyte             20円/メッシュ
 500m   ( 25ha)             1,000,000        2Mbyte               5円/メッシュ
 250m (6.25ha)             4,000,000        8Mbyte           1.25円/メッシュ
 100m     ( 1ha)           25,000,000      50Mbyte             0.2円/メッシュ

1,000人で作業する場合
     1km→  250メッシュ/人  毎年更新可
   500m→ 1,000メッシュ/人  毎年更新可
   250m→ 4,000メッシュ/人  隔年更新可
(ここらへんが現実的な線であろうか?)

<問題点>
 数年前に森林総合研究所を中心に進められた「森林情報システム」構想は立ち消えとなったらしい。なぜか?

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 一将功なりて万骨枯る | トップ | 2016年1月28日(劣等生の吹き... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (本人)
2019-08-01 02:26:22
元林野庁(国有林野事業)技官である地理学者のアイデア。
返信する

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事