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▲直木孝次郎 『日本古代兵制史の研究』 1968 吉川弘文館 当時定価1200円
読書 日誌・旧刊・新刊遊歩道
播種のために
飛ぶ鳥が空を飛びながら荒地に落としていった種のゆくえ・・・・・やがて・・・・林が形成され、鳥たちが歌う森となるか
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我が家にある本は第2版1978年発行で定価2500円。1970年代前半のオイル・ショックで、直木孝次郎の本の価格も1970年代末には倍以上になっていた。
1960年末から1970年代初頭の本の値段は、箱入りの専門書でもまだ1000円台で買えた。
ただ、当時つつましい学生(私の知る範囲で地方出身の皆は同じように貧乏だったのだが)生活で、箱入りの専門書は先生指定のゼミで使う本とか、特に愛着のある作家や研究者の本、お気に入りの詩人の新刊書などに限られていた。
1970年代はじめ、考古学のシリーズで、よく読まれていたのは、河出書房の『日本の考古学』。これは必要な巻は買ったものの、全部揃ったのは、1970年代末だった。
角川書店では、1970年代初頭、『古代の日本』が刊行されていた。古代史概説や、畿内地方の巻など、どうしても煩雑に論文に引用されるので入手したのだが。1冊定価1300円というのは1970年代初頭はやはり高く感じられた。本棚を時々整理すると、錆びたホッチキスで留められたコピー資料が出てくるのだが、角川の『古代の日本』に収載された論文が多い。図書館で借り出しては、コピーをとっていたらしい。
角川書店第1次の『古代の日本』に収載の論文は、現在の考古学研究の隆盛とは違って、文献史家のものが多い。
当時から著名だった、古代史家の岸俊男・平野邦雄・八木充・直木孝次郎・上田正昭なども最初は角川書店の『古代の日本』を手がかりに、名前と研究内容を知ったのである。
1970年代末までは私の古代史は学生時代の勉強不足もあって、考古学の知識の習得に力点があったのだが、稲荷山古墳の鉄剣の出土以後は、ようやく、長い研究業績のある古代文献史家の専門性に、敬意をはらって注目することになってきた。
稲荷山古墳出土鉄剣に刻まれた文字の解釈を巡って、多くの研究者がその解釈の正当性を述べ、論争が巻き起こっていた。
ただ、この論争を評価するだけの知恵と情熱は、当時の私にはなく(今も当時と大して変わりはないのだが)、またこの問題に真剣に取り組む余裕もなく、私の取り急ぎの生活の必要もあって、勉強課題の深化もないまま、数十年も過ぎ去ってしまっている。
稲荷山鉄剣銘文の発見から、はや40年になろうとしている。
自由時間だけは健康が許す限りあるはずだ!と自分に言い聞かせ、探せる範囲で収集してきた、稲荷山古墳出土鉄剣や倭の五王を巡る著作やそこでの論争・論点もそろそろ、私のことばで整理しないと、と思うようになってきたのだ。
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稲荷山鉄剣銘文の発見後、直木孝次郎さんの一つの論文が再度注目されたときがあった。
それは、1958年に刊行された『日本古代国家の構造』 1958年 青木書店 で初めて公表された「人制の研究」という、大化前官制の考察・古代における政治機構について書いた論文である。
▲直木孝次郎 『日本古代国家の構造』 1958年初版 青木書店
定価1974年6刷では3000円、オイルショック後の価格だろう
▼『日本古代国家の構造』 目次
▲ 『日本古代国家の構造』 目次
直木孝次郎は『日本古代国家の構造』の「後記」で「人制の研究」は昭和32年8月に脱稿したと記している。
『日本古代国家の構造』の完成にむけて、ひたむきに古代史文献に取り組んだもので、この著作でも重要な位置を占めている。
大化前代の、日本古代の政治機構に関わる官制を、律令官制とは違って、政治機構そのものについての文書が残されていない古代史文献の史料限界の中、それでも、「・・・・・人」として記された、日本書紀の中の記述を手がかりに、古代史史料を丹念に精査し、網羅して、大化前代、考古学でいうと古墳時代として主に記述された時代の政治機構を浮かび上がらせた名論文だったと思う。
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直木孝次郎のテーマ別、文献渉猟の手堅い手法は、統一国家生成にむけての重要事項である、国家の暴力装置・国家維持機構の解明にも向けられる。 それが直木孝次郎 『日本古代兵制史の研究』 1968 吉川弘文館 である。
すでに「壬申の乱」をめぐる考察から、古代兵制の重要性に気がつき、国家の成立、国家の維持機構としても、また国家の存在そのものの中身としても兵制・軍事機構をとらえていた。
直木孝次郎 『日本古代兵制史の研究』 1968 吉川弘文館
▲ 直木孝次郎 『日本古代兵制史の研究』
▼直木孝次郎 『日本古代兵制史の研究』 目次
▲ 直木孝次郎 『日本古代兵制史の研究』 目次1
▲ 直木孝次郎 『日本古代兵制史の研究』 目次2
▲ 直木孝次郎 『日本古代兵制史の研究』 目次3
この項断続的に つづく