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旧刊書遊記 敗戦後70年の年に、『東北古代史の研究』『社会主義の20世紀』を思い出す

2015年08月06日 | 旧刊書遊記

                ▲ 『東北古代史の研究』 1988年 吉川弘文館  当時定価9800円

 

 

旧刊書遊記 敗戦後70年の年に、『東北古代史研究』『社会主義の20世紀』を思い出す

 

毎年毎年、夏になると、終戦後何年ということばがメディアを覆う。いつだったか飯島耕一が書いた「映画芸術」だったか、「映画評論」だったか忘れたのだが、新聞・テレビなどが連日終戦・終戦といいい、インタビューなどの煩わしさからも逃れ、劇場の中の暗闇に紛れて、毎日映画ばかり見ていたという記事を読んだことがあった。その日の番組のあるいは記事の埋草になれば一件落着という報道や、記事を読んでも、怒りがこみ上げる気配。血圧が気になり、しばらく、インターネットの国会審議中継も遮断することに。

戦争が起きたらどうするかではなく、戦争をしない国家にするにはどう外交するかと問わない隷従国家の「安保法制関連法案の政府答弁」

日本は宗主国の軍用犬になるという、もうすでに米軍・自衛隊は一体化しているので、法律をそれに適合させることというのが真相なのだろう。

日本が、アメリカに基地提供をやめ、真に独立するというのは、儚い夢のまた夢の物語ではないようにするとなると、相当な長期展望と戦略が必要だ。アジア・ユーラシアをまたにかけたモンゴル出自の元帝国が衰退するまでおよそ百年。あるいはラテンアメリカが、宗主国スペイン・アメリカの鎖を脱するまで500年以上。日本人はこのような巨大な相手に対して構想を考えられるだろうか。まだ考えたことも、実践したこともない種類の冒険なのだが。

最近、吉川弘文館が、『東北の古代史』 『東北の中世史』の刊行をはじめた。琉球・沖縄の歴史・政治・文化の元気をもらいながら、国家ならざる、原初の古代人の息吹と益荒男ぶりに触れてみようかという気分になってきた。

今年は、『岩波講座 日本歴史』があと数冊、年末に完了するまで配本されるので、これの完了を見届けてからにするつもりだ。岩波の歴史講座、最後の巻は『歴史学の現在』だ。これの感想を年末に記してから、吉川弘文館の古代史・中世史のシリーズに移動することにしよう。

今年後半は、角川書店刊行の『古代の日本』、『新版 古代の日本』などを、整理してから取り組もう。それと、この二つの角川の古代史企画ものの中間に刊行されていた『東北古代史の研究』 1988年 吉川弘文館も「積ん読状態」から脱出させねば。

 

 ▲高橋富雄 編 『東北古代史の研究』 1988年 吉川弘文館  当時定価9800円

論文および著者


1  総論 :東北古代史の位置づけ 高橋富雄著
2  民族論における蝦夷とアイヌ 工藤雅樹著
3  阿倍比羅夫北征記事に関する基礎的考察 熊谷公男著
4  蝦夷の朝貢と餐給 今泉隆雄著
5   蝦夷と蝦狄-古代の北方問題についての覚書 熊田亮介著
6  柵 高橋崇著
7  多賀城創建をめぐる諸問題 進藤秋輝著
8  陸奥国小田郡の産金とその意義 佐々木茂著
9  道嶋宿禰一族についての一考察 伊藤玄三著
10 律令制下における陸奥・出羽への遣使について-鎮守将軍と征東使 渡部育子著
11 九世紀の地方軍制について 吉沢幹夫著 
12  前九年の役見なおしのために 神居敬吉著
13 『吾妻鏡』と平泉 高橋富雄著 
14  境界都市平泉と北奥世界 斉藤利男著
15 奥羽の荘園公領についての一考察-遠島・小鹿島・外が浜 大石直正著
16 諸国一宮祭礼試論 誉田慶信著
17 秋田城介の復活 遠藤巌著
18 糠部の駿馬 入間田宣夫著
19 牛袋の聖考 伊藤信著
20 蔵王信仰・竜山信仰と大山荘 伊藤清郎著
21 津軽山王坊における日吉神社の建築 坂田泉著

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それと、古いVHSやベータビデオテープの山をいずれ片付けなければならないのだが、1990年代初頭に見た記憶があり、家のどこかに、そのいくつかは眠っているはずなのだが、『社会主義の20世紀』というNHKの番組シリーズがあった。戦後の社会主義の歴史の舞台で重要な役割を果たした政治家や、歴史研究者が多数証言していて、今考えれば大変貴重なオーラルヒストリーでもあった。重要証言をもう一度確かめておきたいのだ。

戦後団塊の世代は、社会主義の崩壊を、その前史とともにリアルタイムで生きているのだが、1980年代以降に生まれた世代は、同時代を子供の目で見ているか、生まれていないので当然全く記憶にないわけで、イデオロギーだとか、価値観の相克などは、自分の記憶と判断に照らし合わせることができない。書籍や、ビデオや、映画などが頼りだ。

『社会主義の20世紀』は1989年に崩壊した社会主義体制の直後の調査・証言、編集であること、また、番組放送から25年がすぎた今、当時のNHKの編集と、「社会主義」に対する態度は、どのようであったか、四半世紀の歴史の評価の差異が、製作した側、語った側、また見る側、読む側にも生じているだろう。

また、ソ連の崩壊以後、自由で民主主義の勝利を謳歌しているはずの欧米や日本は、1990年以後、21世紀になって、新自由主義の惨状が一層露わになってきた。フランスのトマ・ピケティが指摘しているように、経済統計や資産の推移から見て、21世紀は、19世紀初頭の、金満階級による寡頭政治と同様の世界に退行しているのだ。10%の資産階層が、国家の富の90%を支配する世界に戻りつつあるのだ。

『社会主義の20世紀』のビデオ映像は、NHKでは、『映像の20世紀』のようにDVDなどで販売されてないので残念だが、幸いに、6巻の書籍にまとめられているので、「証言」を文字でたどることができる。

ただ、ドキュメンタリー全体の番組構成が、何をいわんとしているのかと理解することは、語る側の歴史と、編集する側の意図、視聴する側の意思との共作のようなもので、なかなか仕分けして語れない領域もある。

四半世紀の後に読む、『社会主義の20世紀』は、私にはどう読めるのか考えてみたい。

また、日本共産党が、このNHKのドキュメンタリー番組について、批判する冊子(ブックレット)『社会主義の20世紀の真実 NHKスペシャル批判』(1990年11月、発行)を作成し、販売していたようだ、、私はまだこの本を入手して読んでいないのだが、番組の何について批判していたのだろうか、少しばかり興味がある。これも読んでおきたい。

私は欧米の第2次世界大戦の記述や、世界各国の死者数の取り扱いに、オリヴァー・ストーンやピーター・カズニックが、『もうひとつのアメリカ史』で指摘していたことだが、ドイツを撃破して、戦争を終結させたソ連の役割が軽視され、ソ連国内の死者が優に1000万人を上まった死闘上の末のドイツ敗走の事実の指摘が足りないと書いていた。社会主義の20世紀とは、同時に20世紀の帝国主義の問題でもあったのだからね。19世紀から引き続く、植民地帝国と欧米の帝国主義の実態は、この番組で直接の対象ではないにもかかわらず、それなしには、ロシア帝国から「社会主義」への革命も20世紀に生まれなかったのだ。また共産党のこのパンフレットの表紙には、「レーニンの時代とスターリン以後はどうちがうか」という文字があった。二人のちがいについて、番組の扱いと、ブックレットを比較してみたい。

総じて『社会主義の20世紀』は欧米帝国主義には甘く、ソ連には辛い番組シナリオだったのかどうか、21世紀の新自由主義とISISの狂気の戦争の中で再考すること。

 

 ▲『社会主義の20世紀』 第1巻 1990年 日本放送出版協会  当時定価1600円

守護の壁・恥辱の壁 東ドイツ;反革命か民衆蜂起か ハンガリー (NHKスペシャル 社会主義の20世紀)
永井 清彦 (著), 南塚 信吾 (著), NHK取材班 (著)

目次

第1部 守護の壁・恥辱の壁―東ドイツ(国家の存亡を賭けた「壁」構築
東ドイツの崩壊)
第2部 反革命か民就蜂起か―ハンガリー(「’56動乱」の真実―“操られた歴史”の見直し ハンガリーの社会主義―過去と現在)

 

 

 ▲ 『社会主義の20世紀』 第2巻 1990年 日本放送出版協会 当時定価1600円

和田 春樹 (著), 下斗米 伸夫 (著), ユーリィ アファナーシェフ (著), NHK取材班 (著) & 1 その他

目次

第1部 バルトの悲劇(バルト三国の苦難
帝国的秩序を働くバルト三国)
第2部 一党独裁の崩壊(脱イデオロギーに向かう社会
一党支配の終焉

 

  

 ▲ 『社会主義の20世紀』 第3巻 1990年 日本放送出版協会 当時定価1600円

連帯」10年の軌跡 ポーランド・おしつぶされた改革 チェコスロバキア (NHKスペシャル 社会主義の20世紀) 伊東 孝之 (著), 南塚 信吾 (著), アルクサンデル ドゥプチェク (著), NHK取材班 (著) & 1 その他

 

目次

はじめに 社会主義の20世紀―東欧の呪縛、そして強いられた沈黙
第1部 「連帯」10年の軌跡(ポーランド市民革命
東欧革命の先導役・ポーランド)
第2部 おしつぶされた改革(「プラハの春」ドゥプチェクの証言
チェコとスロヴァキアの社会主義―外からと内からの改革
当事者が明かす「プラハの春」)
おわりに 思いのたけを語ってくれた歴史の証言者たち

 

▲ 『社会主義の20世紀』 第4巻 1991年 日本放送出版協会 当時定価1600円

歴史の空白は埋まるか ソ連 (NHKスペシャル 社会主義の20世紀) ミハイル コルチャギン (著), 和田 春樹 (著), レシェク コラコフスキー (著), 下斗米 伸夫 (著), NHK取材斑 (著) & 3 その他

目次
普通の人々の社会主義
フィルムに刻まれた歴史の真実
記憶の蘇生・ソ連史の70年
自白はこうしてつくられた
ソ連社会はどう確立されたか

 

▲ 『社会主義の20世紀』 第5巻 1991年 日本放送出版協会 当時定価1600円

カストロの選択 キューバ・南北統一・15年目の真実 ベトナム (NHKスペシャル 社会主義の20世紀)
グエン・バン・リン (著), アーサー・M. シュレジンガー (著), NHK取材班 (著)

目次
はじめに 社会主義の20世紀―歴史的条件と現実
第1部 カストロの選択(米ソのはざまの30年
証言・亀裂はなぜうまれたか)
第2部 南北統一・15年目の真実(独自の道を歩むベトナム
証言・それぞれのベトナム戦争)

 

 

 

▲ 『社会主義の20世紀』 第6巻 1991年 日本放送出版協会 当時定価1600円

 証言で綴る20世紀社会主義 (NHKスペシャル 社会主義の20世紀)

和田 春樹 (著), ヴォルフガンク ザイフェルト (著), ロイ メドベージェフ (著), NHK取材班 (著) & 2 その他

目次

はじめに 社会主義の20世紀―なにものも恐れずに語ってくれた人々
序章 社会主義の20世紀とは
第1章 市民流出に悩んだ東ドイツ
第2章 スターリン体制に抵抗したハンガリー
第3章 チェコがめざした民主化
第4章 東欧変革のさきがけ―ポーランドの10年
第5章 大国のはざまでゆれたバルト三国
第6章 弾圧に支えられたソ連の一党支配
第7章 強制収容所の悲劇
第8章 見直される社会主義体制70年
おわりに 歴史を記録する

 

 

今日はここまで

つづく

 

 

 

 

 



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