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平成史の本 平成史年表 平成も四半世紀 驕れる日本から、属国身分感性の完成までの20年 その1

2015年11月05日 | 平成史

   ▲小熊英二編著 『平成史』 河出書房 2012年10月30日 定価1800円+税 現在は2014年に増補改訂版が出版されている。

 

 

平成史の本 平成史年表など 平成をめぐる思考のあれこれを考えるために その1ー1


平成という名のつく年も四半世紀を経過した。すでに、平成年間は、昭和前半の戦争の泥沼から敗戦・占領・名目独立の年の期間より長い時間が経過していたのだ。

昭和前半の戦前期・占領期・独立まで、激動の歳月であったことは、その時代を生きた人は納得するのだろうが、平成時代もまた、その時代を生き、経験した人にとっては、昭和戦前期ー戦後期と同様、激動の年月であった。

この「平成」という時代、一行で約言すると、「驕れる日本から、属国感性の完成までの20年」という感想を抱くのだが、それは、平成史・平成史年表から辿れるのだろうか。

1 小熊英二編著 『平成史』 2012年 河出書房 

2 『年表 昭和・平成史』 2012年 岩波書店

3 『昭和・平成史年表 新訂版』  初版は1997年、2009年に新訂版刊行 平凡社

4 『近代日本総合年表』 2001年 岩波書店 (平成12年までの平成年表)

 

を縦糸として基礎的な手がかりに、1の『平成史』や、2の『年表 昭和・平成史』よりは詳しく、3、4の『近代日本総合年表』、『昭和・平成史年表 新訂版』よりははるかに簡単な情報ををもとに、雑誌の『世界』、『思想』、『現代思想』、『現代詩手帖』、『国文学 解釈と教材の研究』 『ユリイカ』、『美術手帖』、『芸術新潮』など、手元にあるバックナンバーを適宜追加して、極・私的な色の濃い、人文系色眼鏡から見た平成20数年を記録してみよう。

暇をみながら、ブログで間歇的にメモしている1960年代末~1970年代雑誌読書録と合体できれば、私的読書からみた明治101年~150年史ということになる。明治100年の1968年頃、日本は歴史書ブームに沸き、私の読書と本の購入もそのあたりから始まっている。リアルタイムで、記述できるのはそのあたりからとなる。

 ▼小熊英二編著 『平成史』 目次

▲ 『平成史』 目次

 

『平成史』と銘打ってあるからには、巻末の年表もそれなりと私は期待していたのだが、『平成史』の巻末に掲載してある年表はあまりに簡略過ぎた。小熊英二担当の総括的な総説がよいだけに、年表がとても貧弱なのが残念。また各担当の執筆者の論文が、大学の研究論文のように注の数が多いのにはちょっと閉口する。これに多くの頁を割くのなら、平成の経済関係の総括論文が欲しかったような気がするし、また平成時代の理解に利用できる参考文献も掲げて欲しかったなぁ。

増補改訂版ではこの点に配慮して、平成経済関係の論文や、年表が改訂されているのだろうか。

それでもこの本が貴重なのは、平成史の総体を本格的に対象とする意欲的な著作が今まで刊行されていないからなのだ。

序文で編者の小熊英二が記しているのだが

「何を描けば平成史を描いたことになるのか」ということなのだ。

昭和史が描かれたようには平成史は描けないのはなぜなのか。

時代を特徴付ける、また時代を規定するような「代表が成立しない」時代の記述はどうするか。

小熊は、この課題に「社会構造と社会意識の変遷史」として記述する道を選んだ。共同研究の、それも討議中の記録として。

いかに、小熊英二が、『民主と愛国』と『1968』で昭和戦後史の理解を一新する大著をものにしても、時代を代表する、あるいは時代の特徴を定義する対象が何なのか不分明な社会にどのような、観測のものさしをあてて理解するのか。大いに関心がある。

 

さて、平成史の考察の土台になる資料は何なのか、また、記録考察のもとになる、年代史のランドマークになる、平成時代の年表がまず欲しい。これは、『平成史』を買って一読したのだが、資料探索の手がかりとなる年表としてはほど遠かった。

 

ということで、別に平成年表を探すことになってしまった結果、まず入手したのは下の『年表 昭和・平成史』である。

手軽な価格で、平成年表を探すと、岩波書店の「ブックレット」シリーズの844に、下の本『年表 昭和・平成史』があるが、これは1年を1頁2段組にしているので、概略や、担当内閣、大事件はわかるが、年表から考えるような情報を引き出すにはこれでは物足りない。

さらにもう少し詳しい平成年表を探すことになってしまった。

 

 

 ▲『年表 昭和・平成史』 2012年7月5日 岩波書店 定価640円+税

 

  ▲ 『年表 昭和・平成史』  目次

 

 ▼ 『年表 昭和・平成史』 一部見本

▲『年表 昭和・平成史』 一部見本

A5サイズ、1頁2段組で1年にあてられている。誰誰内閣の時に何が起きたか、概括展望するのには便利なのだが、1段36行、2段で計72行で1年を記録するのは到底無理。

 

日本近現代史の年表は、ここまで、第四版まで改訂増補版を出している岩波書店のものが、近い将来第5版として確実に出版されるのだろうが、毎年新年の岩波書店予告にもないので、1984年の第2版以後は、昭和の終わるまでを記録した第3版、2000年までの20世紀までを記録した2001年発行の第4版まで、それぞれ、の根拠で、改訂版が出されている。まだまだ日本の現代史が、戦後70年では区切りが明確につかない状況である。そうなると、明治維新から150年あたりを人工的に区切りとして第5版を出版するのだろうか。2000年の年表の構成を見ると、1年を1頁ヨコ3段組で、6頁ある。

年表項目も、1政治、2経済・産業・社会・技術、3社会、4学術・教育・思想、5芸術、6国外の6項目

年表の内容としては、上記の1、2、3の年表に比べてボリューム・典拠文献の提示、国際政治上の比較など、格段の差がある。岩波書店には早く出して欲しいが、明治150年後あたりまでを対象に年表を編集するのではないかと予想される。しばらくは、詳しい平成年表は、お預けであろう。

とはいえ、平成史はそろそろ、現代史理解の共通の手がかりとなるようにどんどん出版されて欲しい分野であることは間違いない。

10月の読書は、本棚整理に時間を費やしたので、平成史と、平成史年表の通観で終わったのだが、これから11月には、人文系の読書・出版年表のメモも兼ね、平成史理解の俯瞰をしてしていこう。

 

▲『新訂版 昭和・平成史年表』 初版は1997年 新訂版2009年 平凡社 定価3800円+税

▼新訂版 昭和・平成史年表』 目次

 ▲『新訂版 昭和・平成史年表』 目次

『新訂版 昭和・平成史年表』は目下のところ、平成年表では一番詳しい。

A4サイズ,見開き2頁で1年間を扱う。年表の分類項目は、

 政治  経済  国際  文化  社会  世相 の6項目である。

岩波書店の『近代日本総合年表』では、分類項目は6種で平凡社の『新訂版 昭和・平成史年表』と項目数の数は同じであるが、

1 政治 2 経済・産業・社会・技術、3 社会 4 学術・教育・思想 芸術 国外 の6項目で年表が構成されている。

違いは、平凡社の 文化項目では、岩波書店では分けている学術・教育・思想と芸術(文学・美術・音楽・演劇など)を文化として統合して掲載していることである。また、平凡社の年表では世相、として、独立項目として扱っていることである。岩波書店では平凡社の世相の独立項目は社会に分類された項目で、 「この年」という別細目の中に流行語であるとか、ブームになった現象、ベストセラー書目などが掲載されている。

その年の一般的印象の記憶は、大事件とか、流行歌、流行語などで何度もメディアで反復されて記憶にとどまり、想起される面もあるので、平凡社の『新訂版 昭和・平成史年表』は、マスコミで扱う出現頻度に即している面がある。また一般に理解されている時代の記憶に近いかもしれない。

一方、岩波書店の『近代日本総合年表』では、年表の記載項目の典拠となった文献を巻末で詳細に掲げてある。その年表記載が何により、確認されたものであるかがわかり、これは、重要なことと思われる。

いずれ、2020年代には、『近代日本総合年表』の第5版が完成・刊行され、近現代年表の本命・真打ちとなるだろうが未刊なので、今のところ平凡社の『新訂版 昭和・平成史年表』2009年が現時点で使える平成史・現代年表ということになる。その後の1年を確認するには、新聞社の「年鑑」か、インターネットで検索して、追加するしかない。

では平成史年表が手元にいくつか揃ってきたので、平成史とは何か、小熊英二編著 『平成史』に導かれながら、平成の20数年を読んでいこう。

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 



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