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『古墳時代の考古学』 同成社 全10巻完結 

2014年07月20日 | 初期国家・古代遊記

          ▲ 『古墳時代の考古学』 同成社 全10巻 2011年12月ー2014年6月 6000円+税

 

 『古墳時代の考古学』 同成社 全10巻 完結

『古墳時代の考古学』 同成社 全10巻が、2014年6月に完結の記事をインターネットでみかけ、ようやく、新刊図書購入モードに突入した。

東日本大地震のあった、2011年の暮れに『古墳時代の考古学』の刊行が始まったのだが、震災の余波を受けて、物理的にも、心理的にも新刊書をひもとく内発エネルギーが私の中で消えかけていた。

2011年3月より、65歳前の心細い年金暮らしで、読書三昧の贅を尽くす生活! ではないのがとても残念ではあるが。

なぜか、2014年2月・3月のウクライナ政変で、米国・EU諸国に対して怒りを発散しているうち、ようやくにして、「考古学」の読みのモードにも入れるようになってきたのは不思議!私の中の論争・闘争モード復活なのか?

1990年頃刊行していた雄山閣の『古墳時代の研究』以来、まとまった古墳時代の叢書類を買っていない。2011年の震災の直後には、新刊書を読む気力が、絶えざる余震でねじ伏せられていたのだった。

度重なる大きな余震で、何度も本棚から飛び出した本の整理もやがておっくうとなり、2011年は、ほとんど外出せず、新刊書はNHKのラジオ語学テキストを定期購入するのみ。鬱屈した毎日を続けざるを得なかった。この年の古代史の新刊書の購入は、立ち寄った本屋で偶然手にした、都出比呂志 『古代国家はいつ成立したか』 2011年 岩波新書ほか、岩波の「日本古代史シリーズ」だけだったかもしれない。 (古書店では、比較的大量に本は入手していたのだが。)震災の後かたづけも含めて、萎えていた気力が回復するのに3年を要してしまった。

都出はこの本の、やや長いあとがきで、57歳でくも膜下出血で倒れ、長いリハビリ生活を現在もしていることを書いていた。また、60年代の学生時代の雰囲気もよく伝えていた。熱いものが思わずこみあげてきた。都出さんの若い時代のよってたつ位置が見えて、これだけでも都出さんの見直し必読の本となった。左も右も見えない、希望を口にするのも困難極める時代の現在、なぜ、当時の学生は怒りとともに学問に希望を託したのか、考える糸口があった。また都出さんの学問の原点に触れようとする、私自身の自問の数年間でもあった。

国家の起源を考えるということは、これから、どんな国家(死滅の可能性も含めて)を希望し・構想するのかということと深く連動しているのだからね。

2013年、都出比呂志の『前方後円墳と社会』に収められた、未読だった巻頭論文ほかを入手。

元気を回復したら、以前参加していたいくつかの古代史の研究会に復帰したいのだが。

というわけで、7月18日に入手した、考古学研究会の『考古学研究60の論点』2014 と7月19日に最寄りの本屋から配達された『古墳時代の考古学』 同成社 第1巻を皮切りに、私の化石化した頭の中の古代史探求の気力回復へ向けて、一歩を踏み出すスイッチ入れることにしよう。

では今回入手した1巻目の「古墳時代史の枠組み」 の目次 ▼

 

 1 古墳時代史の枠組 

研究の流れを戦前、戦後に分け、概観している。研究史は、専門の研究機関の総括以外に、資料収集の点でも、個人的資料探索でも、無理があると思われるので、それぞれ基幹的研究機関にアクセスしやすい人脈から整理してもらうほうが至当と思われるので、これは何もいうことがない。

興味を持ったのは③の岸本直文 「古墳時代と時期区分」 34頁ー44頁

編年研究と時代区分を図版を入れて僅か11頁で概観するには、大変だが、あえて圧縮して意見を述べている。これはこれで、さまざまな論議の起点となるので大いに歓迎できる。

以前1987年、『考古学研究』誌で、和田晴吾「古墳の時期区分をめぐって」 の論文が掲載され、古市・百舌鳥古墳群の出現を画期として、編年論を表明。

九州前方後円墳研究会のその後の研究集会の資料などでは、和田編年案も併記しながら会をすすめていたようなので、和田の編年案は以外と受け入れられているのかと思っていたのだが、どうもまだ研究者の共通理解にはなっていないようだ。

 ▲ 岸本直文 「古墳編年と時期区分」 『古墳時代の考古学 1古墳時代史の枠組み』 2011 同成社 36頁より

岸本直文の編年案に対する詳細な論考は、「玉手山1号墳と倭王権」に書いているようなので、そちらを読まなければならないのだが、(この論文を含む研究書、早急に入手しなくては) この問題は、中期と後期の開始の画期の評価や、王権を支える各豪族の構造理解にも関わる。

津堂城山古墳が王墓なのかどうかも意見の相違がある。また、日本書紀の記述に、王墓と記述がないからといって大型の古墳を王墓の可能性は排除できるのかも論理と説明が尽くされているわけではないだろう。

副葬品や、個々の出土遺物の研究も精緻になり、その総合から、古墳時代の画期が必然的にあぶり出されてくるのか?

仮説的な試論も含んだ上で、妄想ではない、文献史上での整合性も認められる古墳編年や、時代の史実を提起できるのか。

1の「古墳時代史の枠組み」 はこれからも多くの論考が生まれてくるに違いない。

まだちょっと論点の僅かな隙間も見え、残りの老後、古代史の中の1点に焦点を定めれば、まだ論を尽くさないで取り残されている問題に絡んだ有意味な発言ができるだろうか?

 

『古墳時代の考古学』 全10巻×6000円×1.08=64,800円 財政超緊縮の折、この出費は我が懐には痛いが、何度インターネットの「日本の古本屋」で検索かけても、安い店どころか1件もヒットしない、完結したばかりのシリーズだから当たり前といえるが、それにしても、現役ならともかく、賞与もないので、仮に全10冊格安で古本屋に出ても、すぐに落とせないので、誰かが買うのを眺めるしかないだろう。

親子2代にわたり、つきあいのある本屋に交渉。『古墳時代の考古学』は2ヶ月に1回配本してもらい、月々3000+αの分割にて支払い交渉。先に予約購読している『岩波講座 日本歴史』と合わせ、月7000円は自動的に私の読書購入計画からマイナスすることに・・・・・とほほ・・・・・・これじゃぁ、散歩の折に立ち寄った本屋で手にとった新書も買えないぞ・・・・今一番の注目株、高田貫太の『古墳時代の日朝関係』 12000円、吉川弘文館も、買えるのはうまくいって今年の暮れだねぇ・・・・白石太一郎の論文集のいくつかも入手時期が遠のくねぇ・・・・

3の「古墳時代の実年代」では ③の白井克也 「東アジア実年代論の現状」を面白く読んだ。

誰もが陥りやすい 「自分にとって都合のよい歴史観にそって、資料・史実が選択・優先されていないか」よく論理的に吟味してみる必要を感じる。のは私だけではあるまい。

古墳時代前期と中期の境目の5世紀初頭前後、暗に、好太王碑文や、初期須恵器の開始や、加耶の危機や大和政権から河内政権交替などの言い回しに無意識の予断はないであろうか。私なんか、反省しきりなのだがね!

 

この項断続的に続く

 

 

 



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