▲ 白石太一郎 『考古学からみた倭国』 2009年 青木書店 定価7000円+税
白石太一郎 『考古学からみた倭国』 2009年 青木書店 1-3
今回は、「考古学からみた聖俗二重首長制」 『国立歴史民俗博物館研究報告 第108集』 2003
1996年奈良県川西町にある島の山古墳の調査が行われた。墳丘長約200mの大型前方後円墳。中期初頭。前方後円墳の後円部ではなく前方部の調査が行われたのである。後円部は盗掘を受けており、調査は前方部を行った。
調査の結果、大型の粘土槨があり、木棺被覆粘土上に置かれた車輪石80点、鋤形石32点、石釧32点という多量の石製腕飾類が検出された。群を抜く数の埋葬量だった。
粘土槨の棺内からは三面の獣形鏡、三点の石製合子が被葬者の装身具の玉とともに見つかったが、、武器・武具の副葬は木棺内にはなかぅた。手玉を着装していたことなどから、被葬者は女性で、弥生時代からの司祭者的な人物が想定された。
後円部は盗掘で、破壊されているが、周辺の加工痕を残す大型天井石が遺存することから竪穴式石室があったと考えられ、この古墳の主たる被葬者が埋葬されていたと推定。
従って、島の山古墳は、後円部にある埋葬部とは別に、後方部埋葬施設の出土遺物には武器・武具の副葬を欠く司祭者的な様相が顕著な埋葬施設があったということである。
▼島の山古墳
▼島の山古墳 前方部粘土槨出土腕輪型石製品
白石太一郎は、島の山古墳の特異な事例に注目して、大量に腕輪型石製品を副葬する古墳を集成していき、その集成を通して、古墳をいくつかのタイプに分類した。
A類 大量の腕輪型石製品のみ、武器・武具を持たない事例 俗的首長権を扶ける呪術的・宗教的すなわち聖的首長権を保持する別の施設を持つ例
奈良県・島の山古墳
B類 大量の腕輪型石製品と大量の武器・武具の副葬を伴う事例 政治的・軍事的聖・俗両首長権を兼ねる被葬者が想定できる例
奈良県・東大寺山古墳、 大阪・松岳山古墳
▲ 奈良・東大寺山古墳 粘土槨
▲大阪 松岳山古墳・茶臼塚古墳
▼石山古墳の3つの埋葬施設の事例
▲ 三重県・石山古墳 3つの埋葬施設はほぼ同格、政治・軍事的性格の西棺、 呪術的首長権 中央・東棺
島の山古墳と違い、3棺は同格にちかい
聖・俗二重首長例と思われる事例もいくつかの異なるタイプがある。
4世紀には二重首長制は存在したのではないだろうか。
つづく