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岩波講座 『世界歴史』 全31巻 岩波書店 『第30巻 別巻 現代歴史学の課題』

2015年08月31日 | 文献 岩波講座 日本歴史

           ▲ 岩波講座 『世界歴史』 『第30巻 別巻 現代歴史学の課題』 1971年 定価1300円(第2次予約1975年版)

 

 

岩波講座 『世界歴史』 全31巻 岩波書店 『第30巻 別巻 現代歴史学の課題』

 

前日の朝日新聞の書評欄のことを前回ちょっとだけ引用したのだが、その中で

1 手稿史料を刊行する  凡庸な歴史学

2 史料を時間軸上に並べて物語りを作り、歴史像を復元する → 復元の歴史学

3 暦史学者が自らの解釈にしたがって各々の史料を選び出し、歴史像を構築する → 現代の歴史学

というような、歴史認識の方法に基づいて作られる歴史像の、強引といおうか、粗暴なといおうか、このような分類に、怒りを露わにした人、顔をしかめた人、視点をそらして通り過ぎようとした人、あれ、もしかすると、私も「凡庸な歴史学」やっていたのかと立ち止まり、思案にくれる人、あるいは、私は「凡庸」以前のまだ歴史の研究以前なのだし、そのどれにも属さない、批判以前だと安心する人・・・・・・・・歴史認識とそれによる歴史像は様々であり、その3様態のようにきっちりと研究者が分けられるわけでもない。その3者は、同時に含意され意識されていると考える歴史家もいるかもしれない。

そのようなわけで、フランソワ・フュレの『歴史の仕事場(アトリエ)』をまだ読んでもいない私は、値段もなかなかのものだし、藤原書店のものは、どうも通常の書籍の2倍の値がするように感じているので、いつも買い求める時は、流行がとうに過ぎてから、古書店で入手する。

さて、下の、岩波講座 『世界歴史』 『第30巻 別巻 現代歴史学の課題』は、目次を見てわかるように、1960年代に活躍した、日本史・世界史の歴史家が、ずらり勢揃いして圧巻なのである。この巻は560頁を越えて、結構重量もある。石母田正、堀米庸三、西嶋定生、太田秀通などの大家に交じって、山口昌男が「第三世界」における歴史像ー行為としての歴史ー」を書いている。

この論文群は、1970年前後までの、歴史学の課題と否応なく接触して、火花を散らしている。ように思う。刊行されたのは、1971年11月だが、原稿依頼を受け、各々執筆したのは、1968年から1971年頃ではないだろうか。

大学紛争もあり、学問とは何かという真剣な問いと課題が、個々の研究者にも及んで、それぞれに、その時の歴史意識もかかわっている可能性もなしとしない。第1次岩波講座『世界歴史』31巻はその時代の世界同時進行中の歴史意識の痕跡を残しているのではないだろうか。

「「理論的には」「歴史」と「神話」は相反するものである。歴史は「実際の起こったこと」であり、神話は特定の現在の信念を正当化するために作り上げられた過去に関する仮構である。しかしながら歴史書に現れる歴史は「実際に起こったこと」ではなく歴史家が想像した限りで実際に起こったことについての考えに過ぎない・・・・・・「歴史的」データのそれぞれの一群は激しい選択の対象であった。・・・・・・同時代の一等資料といえども事件を「それが実際に起こったように」伝えはしない。それらは報告者の見た事実についての見解を伝えるだけである。神話の内容は確かに全く荒唐無稽であるが、それ以上の事も以下のこともするわけではないのである。」 E=R=リーチ

山口昌男 「第三世界」における歴史像ー行為としての歴史ー」 岩波講座 『世界歴史』 『第30巻 別巻 現代歴史学の課題』 (135ー136頁)

歴史意識の明晰な内省と課題は、伝統的歴史家の内省から(のみ)生まれたのだろうか?

ナチスの迫害を逃れ、ヨーロッパから、アメリカへ亡命の途にあった知識人たちが、異種交配し、破天荒な発想から、レヴィ・ストロースの文化人類学が誕生したように、歴史学の革新ももまた破天荒な出会いがあったのだろうか。

亡くなった西江雅之さんも、レヴィ・ストロースの『悲しき熱帯』を、人類学の書として学んだというよりも、異種学問が激しく混交する、ニューヨークの亡命知識人の出会いの面白さのことを語っていた。

 

 ▼岩波講座 『世界歴史』 『第30巻 別巻 現代歴史学の課題 』 目次

 ▲▼  岩波講座 『世界歴史』 『第30巻 別巻 現代歴史学の課題』 目次

▲▼  岩波講座 『世界歴史』 『第30巻 別巻 現代歴史学の課題』 目次

▲  岩波講座 『世界歴史』 『第30巻 別巻 現代歴史学の課題』 目次

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 



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