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▲ 考古学研究会60周年記念誌 『考古学研究60の論点』 2014年4月 1200円
考古学研究会60周年記念誌 『考古学研究60の論点』 刊行 その1の2
前回は『考古学研究60の論点』の目次紹介と以前刊行されていた、考古学研究会の記念誌の紹介で頁を費やしてしまったので、今回は、気になる論点のいくつかをピックアップ
第1章では
テーマ10 古墳時代の政権構造とは
テーマ11 古墳時代首長の支配領域とは何か
テーマ12 国家の起源
など
第2章では
テーマ25 首長制とは何か
テーマ26 交易をどうとらえるか
などが私の注意を引いた。
では
テーマ10 古墳時代の政権構造とは
43頁ー44頁 田中晋作
古墳時代の中枢権力の実態について
①古墳と古墳群 ②副葬品 ③軍事と外交 ④生産と交通(輸送)の4つの分析から論じている。
田中にとって、畿内政権とは
「畿内に成立した、複数の有力勢力によって構成される政治体」 と定義。
①古墳と古墳群
大和盆地東南部 → 佐紀古墳群 → 百舌鳥・古市古墳群 → 淀川北岸 → 大和盆地南部
この間の、大型主墳・陪塚・小型主墳などのありかたは「大型古墳への権力集中を示す構造上の飛躍とする。」
②副葬品
大和盆地東南部と三角縁神獣鏡、
佐紀古墳群と石製模造品・新式神獣鏡
百舌鳥・古市古墳群と帯金式甲冑
淀川水系・猪名川流域分布核の三葉楕円形杏葉捩り環刀大刀 への変化
供与・供給主体自体が異なっていたことにより生じた。とする。
室宮山古墳など一部有力古墳で特異な現象もある。
③ 軍事と外交
前期後半、筒形銅器と朝鮮半島東南部、鉄製短甲、畿内の新勢力の台頭と大成洞古墳群。中小規模の武器副葬古墳の増加。日本列島での防塞施設の欠如などからは、日本列島外での軍事活動が想定。
④生産と交通
百舌鳥・古市古墳群周辺の大規模産業基盤の整備。馬の普及。道路交通網の整備。沖ノ島での国家規模的祭祀。海洋交通・運搬技術の進展。
「前期後半以降は、流動化を深める東アジア情勢に即応できる軍事的対応が基軸。」
「朝鮮半島の勢力との連携を含め、これを可能とする基盤を整えることができた勢力により主導された」としている。
テーマ11 古墳時代首長の支配領域とは何か
辻田淳一郎 47頁ー48頁
1 親族関係の変遷と「首長(墓)系列」
かつて、小林行雄が述べた、「男系世襲制」 は5世紀前半までは世代間継承が不安定であること。古墳群の変遷に連動して、各世代で政治関係が更新される変化が見られる点。
解釈の更新が必要。
2 威信財流通と社会的再生産のメカニズム
古墳時代前期威信財システム/求心的競合関係モデル
「古墳の「連鎖的築造パターン」があるからといって任意に統合領域を設定することは困難である、実際には世代交代の進展に伴い(地域によっては文字通り「代代わり」のたびに)、各地域における集団の統合範囲は再編成され、縮小や統合拡大が繰り返された可能性が高い」と見ている。
古墳時代の「首長」 と国家形成
「前期から後期まで一貫して「首長(墓)系譜(系列)」として措定することには躊躇する。」48頁
「求められるのは、古墳というモニュメントを生み出した各地域社会および広域政治秩序の実態に関しての親族関係、世代交代、社会的再生産のメカニズム、社会組織と統合原理のモデル化と、それを基礎とした歴史叙述、という点」 48頁
「こうした点が、古墳時代社会を国家形成論の脈絡で人類史的に理解していく上での鍵になる」 48頁
うーむ、古墳時代首長論も 「脱構築論」 の時代に入ってきているのだな。
この項 断続的に続く