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グランマ号・キューバ革命・ゲバラ・カストロ など  その1-3ー1

2015年07月18日 | 中南米・カリブ海・キューバ革命・ゲバラ

  ▲レヒナルド・ウスタリス・アルセ 服部綾乃・石川隆介訳『チェ・ゲバラ最後の真実』 2011年、武田ランダムハウスジャパン 2200円+税

 

 

グランマ号・キューバ革命・ゲバラ・カストロ など  その1-3ー1

レヒナルド・ウスタリス・アルセ 服部綾乃・石川隆介 訳 『チェ・ゲバラ最後の真実』 

 

チェ・ゲバラに関する本は、ボリビア山中で、ゲリラ戦を記した日記が公開された1968年夏に大きなピークがあった。朝日ジャーナルに4回にわたり翻訳掲載されたのが、1968年7月。私も、最初は、ジャーナル掲載のゲバラ日記が、チェ・ゲバラとの最初の出会い。

もちろんそれ以前はキューバ革命が達成された1959年から、1960年代前半に、キューバ革命の経緯の中で語られていた。アメリカの知識人たちの間にも、ライト・ミルズなどキューバ革命に好意的な論著があった。それらの本をぽつぽつ読み始まったのは、学生時代も終わり、ニクソン・レーガン政権のあからさまな中南米政策で、右翼軍事政権が荒れ狂った時代からである。今考えれば、アメリカはナオミ・クラインの言うショック・ドクトリンを次々と実践していたということだ。

中南米では長い軍政下に置かれた国も多く、ゲバラの死の真相を知る者、ゲバラの思想に共感を持つ者は生きのびるため、その心を長い間封印したまま忍従の日々を送っていた人たちがいる。21世紀には、ようやく死の恐怖から解放され、閉ざしていた真実を語るものがあらわれた。

 

 

 ▲著者プロフィール (本書 表紙カバー裏にある紹介文)

▲ 表紙カバー裏にあるこの本の紹介文

 

 ▼ 『チェ・ゲバラ最後の真実』 目次

 

 

 翻訳者が、あとがきで触れているのだが、本書は、原著の構成を変えている。また、最終章の「チェ・その神話」については割愛している。

それでもなお、この本が、従来のゲバラ伝を越えて、真相に迫っていると感じるのは、著者が、ボリビア出身の医師であり、記者でもあったこと。ゲバラの死から時間もあまりたたない身体に触れていること、ゲバラの身体に残る銃弾跡に火薬が付着しているのを確認して、法医学上の考察をしていることである。ゲバラはボリビア軍との戦闘で死亡したのではなく、至近距離から銃殺されていることを、観察所見から記者団に向かって告げていることである。著者が触れた時には、死後硬直がおきていなかったと記している。

 ▲直上の写真 ゲバラの奥に立ち、ゲバラの傷跡を指さしている人物がこの本の著者レヒナルド・ウスタリス・アルセ

1967年10月10日 『チェ・ゲバラ最後の真実』 (265頁)より

レヒナルド・ウスタリス・アルセは、この勇気ある発言で、世界に、ボリビア政府が発表した件、「ゲバラはボリビア軍との銃撃戦の中で死亡した」という嘘を曝いたのである。

この重大な見解の発表の結果、アメリカ政府に臣従していたボリビア軍国政府やアメリカに敵視され、著者は国外に脱出し、ブラジルになかば亡命的に生活空間を変えざるを得なかったのである。

中南米諸国の民主化が1990年から21世紀にかけて進み、差し迫った身の危険から解放された著者は封印していたゲバラの研究とその死の真相解明に取り組み、キューバ人、ボリビア軍人など、事件の関係者ひとりひとりに徹底取材して書き上げたのがこの本。

 

ボリビア軍ホアキン・センティノアナジャ大佐にゲバラ銃殺を命じられた、ウエルタ少尉は処刑を拒否、その後、チェ暗殺の経緯を記した回想録を書いていることを、複数の者に漏らし、軍に知られることとなり、

「1969年ボリビア軍はウエルタの回想録を消却し、さらにはウエルタを、ラ・パスとオルロを結ぶ幹線道路で自動車事故にみせかけて殺害した」 『チェ・ゲバラ最後の真実』 (39頁)

ウエルタ少尉は、捕らわれの身となったゲバラに強い感動を呼び覚まされ、見張りを命じられた僅かな時間の間に、ゲバラの思想に共感を示し始めていた。一度はゲバラの縄を解き、逃がそうと同僚に持ちかけている。

友人たち複数の証言取材から、22歳のウエルタ少尉の煩悶が見えてくる。

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 



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