井波律子さん逝く あるときある日『世界古典文学全集 三国志』三巻がなかなか完結せず、どうしてだろうと調べてみたら、翻訳は京都大学の高橋和巳さんが中心に担当していて、故人となったため、翻訳担当も代わり、今鷹真・小南一郎・井波律子さんが参加して完成に至ったようだ。『三国志』(中国正史)の翻訳全訳完成には取り組みから数十年の歳月がかかってしまったが、待ちくたびれて読み終わることなく鬼籍に入られた人もいたことだろう。
中国正史の主な日本語訳が終わる前に、世界すべてがフェイク・ニュースのようで、日本史そのものの崩壊すらある実感を伴ってきている気配。
このような時代にあっては、井波律子さんのようなエピキュリアン的態度こそ、根底的かつリアルな認識態度であるのではないか。
▲ 朝日新聞 2020年5月19日訃報 ・2020年5月23日(土)天声人語
▲左から 井波律子さん共訳の『三国志』三冊 ほか井波律子さん著書
『世界古典文学全集 三国志』24-a~c 1977・1982・1989年 筑摩書房
『中国のアウトサイダー』 1993年 筑摩書房
『酒池肉林 中国の贅沢三昧』 1993年 講談社 講談社現代新書
『中国的大快楽主義』 1998年 作品社
『中国文学の愉しき世界』 2002年 岩波書店
『中国名言集 一日一言』 2008年 岩波書店
『一陽来復 中国古典に四季を味わう』 2013年 岩波書店
つづく