最近、熊本城周辺や上通り、下通りで、あるいは熊本駅に向かう電車の中で、その様子からドイツからの観光客かなと思うことが増えました。しかし、阿蘇で、それも中岳火口周辺以外で正真正銘のドイツ人に出会い、会話することがあろうとは思いもしませんでした。事の次第は次のとおりです。
友人夫婦と私ども夫婦で烏帽子岳(えぼしだけ)に登りました。友人の高性能デジカメで記念写真を撮るためシャッターを誰かに頼もうと周囲を見渡し、奥さんが選んだのはスラリとした外国人の若い女性。カタコトの英語でお願いされると快諾。かしこまった私たち4人に向かって「せーの、チーズ!」。「もう1枚。せーの、チーズ!」。空の色に溶け込む上着に白いスカートの彼女はどこで「せーの」の掛け声を覚えたのでしょうか?連れの男性にも「ありがとうございます。」と、口々にお礼を述べて別れた。
山道を下りながら奥さんは「色白のロシア美人に撮ってもらった」とご満悦。確かに東欧系に見えた。軽装の人々が次々に追い越していく。後ろからの会話のかすかな響きに「え、ドイツ語?」と注意を引かれた。振り向くと先ほどシャッターをお願いした二人連れだ。近づくのを待ち思い切って尋ねた。「ドイツ語を話していませんでしたか?」、「ドイツからですか?」「はい、そうです。」ときれいな日本語。友人夫婦はおいごさんが東京エレクトンの社員でドイツで5年間働いていると話す。彼女はハノーバー出身で、観光で来ているが、日本が大好きなので、いつか日本で働きたいと思っていると語り、仕事は?という質問への答は「エー・エル・ディー」と聞こえた。恐らく「ARD(ドイツ公共放送連盟)」のことだろう。ここで、友人が「この彼もドイツと日本のお世話をしているんですよ」と言い、彼女が「へー」という表情をしたのでついしゃべってしまった。
” Ich bin Mitglied der Japanisch-Deutschen Gesellschaft Kumamoto. Ich interessiere mich fuer Deutschland, deutsche Kultur, deutsches Bier und besonders deutschen Wein. " すると男性が初めて口を開いた。" Japanisches Bier ist auch gut. " " Danke. Aber・・・. Na, gut. Viel Spass noch ! " 男性は " Deutsches Bier " と苦笑しながらお嬢さん?と足早に下って行った。
これが阿蘇山上で思いがけなくドイツ人に出会いドイツ語に接したお話です。
この日は快晴に恵まれ絶景を堪能しました。ドイツとは離れますが、いや、wandern というドイツ語もあるので、写真を添えてそのお話もいたします。
5月29日(水) 小学校時代の友人夫婦の案内で阿蘇へ。友人は阿蘇ジオガイド協会に所属。二日間降り続いた激しい雨も止み絶好のトレッキング日和。友人が選んだのは初心者向けの「草千里・烏帽子岳(えぼしだけ)コース」。午前10時過ぎの早い時間にもかかわらず草千里ヶ浜駐車場はすでに混雑。奥様が山登り前の水分と糖分の補給用にと用意されたメロンをいただく。友人から靴紐の結び方の手ほどきを受け出発。準備運動を兼ねゆっくりと歩を進める。10分程でしだいに勾配がきつくなり早くも息切れ。「4本足にしたら」とストックを渡される。「きつい時はお茶休憩と言えばいいですよ」と奥様のアドバイス。草千里から標高差わずかに200メートルの山頂まで幾度もお茶休憩。澄み渡った青空。湯の谷の向こうに金峰山と雲仙のシルエットが重なり合ってくっきりと見える。
福岡からの同年輩の7~8人のグループと先になり後になり声を掛け合いながら脚を持ち上げる。ミヤマキリシマの見ごろは残念ながら過ぎていた。予定より15分ほど長くかかり標高1337メートルの烏帽子岳山頂に到着。360度のパノラマ。北向いは杵島岳(きじまだけ)1326メートル。その右手に久住連山が望める。山行きの服装に身を固めたグループ。Tシャツと短パンにサンダルの二人連れ。山上の人々のスタイルはまちまち。大きなおにぎりの昼食。
記念写真を撮り逆時計回りで下山開始。つま先に力を入れ小幅で降りる。次々に追い越される。また、上りの客ともすれ違う。色々な服装と言葉。規制で中岳の噴火口には近づけないこともあり、草千里付近で遊ぶ人が多いとわかる。草千里ヶ浜の水溜まりは阿蘇ジオガイド暦の長い友人も初めてというほど水量が多く湖面が広がっている。噴煙の向こうは高岳(たかだけ)かと尋ねたら、あれは中岳の山頂、高岳はその背後で見えない、と優しく諭された。(M.S.)