シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

川島雄三監督「青べか物語」(東宝、1962年、100分)☆☆☆☆

2021-08-18 21:25:36 | 日本・1960年~
山本周五郎による同名随筆の映画化です。脚本は新藤兼人。

舞台は昭和30年代前半の江戸川河口の浦粕(現・浦安)集落。

題名の「ベカ」とは「貝や海苔採りに使われる一人乗りの平底舟」です。

「沖の100万坪」と呼ばれる風景が気に入って漁師町・浦粕にやってきた小説家の「先生」(森繁久弥)は、芳爺さん(東野英治郎)の勧めにほだされて「べか舟」を買わされます。「青べか」と名付けられたその舟で日々釣りをする「先生」。

貧しくも素朴、常識外れの人々の行動が「先生」の目を通して描かれます。登場人物がユーニークな人ばかり。

堤防に程近い、しもた屋の二階では、怖い顔をした増さん(山茶花究)と、根はやさしく、足の悪い女房・きみの(乙羽信子)が貧しくもけなげに暮らしています。わけあり夫婦です。

理髪店・浦粕軒に集まる人々は変人、奇人揃い。消防団の親父・わに久(加藤武)、五色揚げの惣菜屋・勘六(桂小金治)、芳爺さん(東野英治郎)。この町の噂は、すべてこのオヤジたちから発信されています。

「ごったく屋」では、おかみ(都家かつ江)はじめ、酌婦のおせいちゃん(左幸子)と朋輩のおきんちゃん(紅美恵子)とおかっちゃん(冨永美沙子)がはじけています。

これらの下町の面々がすさまじいバイタリティで、人間くさい生活をしていて、「先生」はそれを観察しながらエッセイにしたためるのでした。
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