チャップリンのユーモア,ヒューマニズム,才能とセンスのよさが凝縮した作品である。
舞台はロンドンの裏町。画家の恋人に捨てられた貧しい娘(エドナ・パーヴィアンス)は,慈善病院で産まれたばかりの父なし子を,路上駐車していた自動車のなかにこっそりと置き去りにした。二人組の泥棒は,何も知らずその車を乗り逃げした。二人がスラム街で下車して一服していると車中の赤ん坊が激しく泣き出し,赤ん坊はごみ箱のわきに捨てられた。
この赤ん坊を拾うハメになったのがチャーリー。朝の散歩中,空き缶に詰めたシケモクをうまそうに吸い,すったマッチを捨てたところでふと目をおとすと,赤ん坊が捨てられていた。慌てたチャーリーは乳母車をおした婦人に「落し物です」と赤ん坊を手渡すがことわられ,次に杖をついた老人におしつけたがうまくいかず,かといって見捨てるわけにもいかず,結局自分の家に連れていって育てることになった。おしめを作ったり,ハンモックのなかの子をあやしたり,チャーリーは懸命の子育て。さて、この話の結末は?
チャップリンの自伝的要素の強い映画である。「チャーリー」とキッドはじつは一体である。孤児のキッドは20年何年か前の『チャーリー』,そして育てる『チャーリー』はいまの彼である。