いせ九条の会

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歴史の事実判断を正すことがなぜ政治介入にあたるのか/山崎孝

2007-10-12 | ご投稿
【「絶対に撤回させる」/「自決」体験者怒り】(2007年10月12日付沖縄タイムス)

「要請行動で絶対に撤回させる」「大臣の資質に欠ける」―。検定意見撤回を求める県民の要請に対し、かたくなな姿勢を崩さずに国会答弁をした渡海紀三朗文部科学大臣に対し、十五、十六の両日に上京して検定意見撤回を訴える県民大会実行委員会の関係者や「集団自決(強制集団死)」の研究者や体験者からは怒りの声が上がった。

県民大会実行委副委員長の玉寄哲永県子ども会育成連絡協議会長は「審議委員をひな壇のお飾りにした上で審議をせずに教科書調査官の検定意見を通していながら、撤回に応じないのは絶対に許せない」と憤る。「国会の場でもうそを突き通すなら誰が文科相でも変わらない。政府の大うそ、不正を撤回まで追及したい」と要請行動に向け、決意を新たにした。

同じく副委員長の小渡ハル子県婦人連合会長(78)は、「ばかにするにもほどがある。どうしても納得がいかない」と語気を強めた。小渡会長自身は、新潟県で行われる全国地域婦人団体研究大会に出席し、教科書問題で検定意見撤回を求める決議を提起するため要請行動には参加できない。「全国の会員三百五十万人の総意として決議し、総理や大臣に声を届けるようにする。全国に支援を広げていくことも必要」と多方面から声を上げることの重要性を指摘した。

座間味島での「集団自決」の体験者、宮城恒彦さん(73)は「ただ『撤回できない』と言われても、納得できる県民は誰もいない。過ちを直すだけなのに、なぜ素直に、元通りにできないのか」と反発。「沖縄を見下しているような、差別的なものを感じる。沖縄戦の専門家を審議員に入れるという話も、沖縄だけの問題に封じ込めようとしているようだ」と怒りをあらわにした。「教科書が元通りになるまで、徹底して戦うしかない」と力強く話した。

「政治介入はできない」とする渡海文科相の姿勢に対し「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」事務局長の山口剛史琉球大准教授は「歴史の事実判断が間違っているのを指摘することがなぜ政治介入にあたるのか」と批判。「行政の長、監督責任者として審議会の運用の間違いを正すことがまったく理解できないのは資質がない証拠だ」と分析した。

【仲里県議長が依頼文を送付 44都道府県議会へ】

高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」をめぐる日本軍強制の記述が削除された問題で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員長の仲里利信県議会議長は十一日までに、四十四都道府県議長に対し、政府に検定意見撤回と記述回復を求める意見書可決を求める依頼文を送付した。

送付先は八日までに意見書を可決した奈良県、京都府を除いた。

【「沖縄条項」新設 実行委が要望へ】

「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会が十一日、県議会で開かれ、十五、十六日の要請行動で、面会を求めている福田康夫首相や渡海紀三朗文部科学相、町村信孝官房長官への要望書を確認した。検定意見撤回と記述回復、審議会の再審議、沖縄戦研究家の参加に加え、沖縄戦に関する記述に配慮する「沖縄条項」の新設などを求める。十一日までに百二十一人が東京での要請行動への参加を決めている。(以上)

教科書検定に意見がついたのは、極めて政治的な背景があります。2006年9月26日、安倍政権が誕生します。安倍晋三氏のブレーンの一人で後に官房副長官になる下村博文代議士は、安倍政権発足直後の集会で「自虐史観に基づいた歴史教科書を官邸のチェックで改めさせる」と述べています。

2006年12月末、教科書会社の編集者が文部科学省に呼ばれ、文部科学省の教科書調査官から沖縄戦の住民集団自決死について「軍隊から何らかの強制力が働いたような受け取られる方をしてしまう。この表現は、ちょっと避けてもらえませんか」と言われ検定意見が示されます。

この調査官の一人は藤岡信勝氏が会長を務める「新しい教科書をつくる会」が作った扶桑社の歴史教科書を監修した伊藤隆・東大名誉教授の推薦により教科書調査官になった人です。沖縄問題の専門家が居らなかったその時の教科書審議会は教科書調査官の考えをそのまま是認しています。

この経緯を見れば先に教科書の記述に介入をしたのは、政権の意向を汲み歴史の負の事実を述べることを自虐史観と考える文部科学省の役人が、今までと変わらない教科書会社の記述、20年間続いてきた記述に介入して起こった事柄を元に戻せと要求することは政治介入ではありません。