いせ九条の会

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米国の「対テロ戦争」は結果としてテロ支援者を増やす/山崎孝

2007-10-09 | ご投稿
私は一昨日、韓国外交安保研究所助教授で、専門は中東政治とテロリズムの研究している印南植(インナムシク)さんの《アフガン国民は疲弊し、秩序回復に手をこまぬくカルザイ政権への信頼は失墜。政権や国際社会に対する国民の不満がタリバーン支持に流れるという悪循環が続いている。一部ではイスラム系のテロリスト教育が続き、「戦士」が量産されている。結局、貧困や飢餓、識字率、乳児死亡率の改善など国民生活向上へ向けた直接的アプローチが不可欠だ。駐留部隊を撤退させる韓国に今後できるのも、そうした部分だと思う。

 日本も現地の治安維持のために戦闘部隊を直接、派遣することはできないだろう。だとすれば、テロとの戦いで日本にできることは、我々と同じ部分ではないか》という意見を紹介しました。今日はこれと共通する意見を紹介します。

【米はイラクから即時撤退を 英シンクタンクが報告書】(2007年10月8日付中日新聞)

【ロンドン8日共同】英シンクタンク、オックスフォード・リサーチ・グループは7日、世界規模でのテロ封じ込めで成果を挙げるには、米軍主導の多国籍軍がイラクから即時撤退することが必要とする報告書を発表した。

イラク政策は来年11月に行われる次期米大統領選の最大争点の1つ。ブッシュ政権が米軍駐留継続の方針を堅持する中、これに真っ向から反対する今回の指摘は注目を集めそうだ。

報告書は2001年の米中枢同時テロを受けた米国の「対テロ戦争」は結果としてテロ支援者を増やしており、戦略を根本から再考することが求められていると指摘。イラクからの多国籍軍撤退と同時に、イラン、シリアを巻き込んだ集中的な外交努力を展開すべきだとした。

アフガニスタンでも軍務を縮小し、市民生活への支援や、武装グループ各派に政治参加を促すための交渉へのてこ入れを強化することが重要とした。(以上)

次に10月8日の衆院予算委員会で述べた福田首相の意見を紹介します。

【首相、給油活動の継続強調 野党と協議、衆院予算委】(2007年10月9日付中日新聞)

衆院予算委員会は9日午前、福田康夫首相と全閣僚が出席し、福田内閣発足後初の基本的質疑を行った。

首相はインド洋での海上自衛隊による給油活動について「憲法違反にはあたらない」と指摘した上で、「わが国の安全を守る意味でも大事だ」と述べ、日本が輸入する原油などのシーレーン(海上交通路)確保のためにも活動継続が重要との認識を強調。

また参院での与野党逆転を念頭に「国民の生活、国家の利益という点では野党も同意してくれると思う」と述べ、重要政策課題で野党との協議を重視する考えを重ねて示した。

石破茂防衛相は、防衛省が2003年2月の米補給艦への給油量を約4倍に訂正した問題を陳謝するとともに、「服務上の問題として考えないといけない。適正かつ厳正に対処する」と述べ、関係者の処分を検討していることを明らかにした。(共同通信配信記事)(以上)

福田首相は《日本が輸入する原油などのシーレーン(海上交通路)確保のためにも活動継続が重要との認識を強調》しました。この意見は警察力や民生支援政策で可能なことを軍事と関係させた問題のすり替えです。日本は海上交通路の要衝 マラッカ海峡が、テロリストではなく海賊行為が頻発した時があったため、海賊を取り締まる国に対して装備の整った高速船を供与しています。また、次のような取り組みをしています。

2007年10月7日付朝日新聞で述べている、東南アジア広域研究をしている竹田いさみ独協大教授の意見です。

(前略)これらを踏まえ、日本はこの地域(東南アジア)の国々に対して既にテロ対策の協力を行っている。

 例えば、海上テロ対策のために海上保安庁がマラッカ海峡沿岸国と連携訓練を行ったり、インドネシアの治安能力を向上させるために警察庁は専門家を派遣したりしてきた。またインドネシアでは、宗教・地域対立で社会の混乱が続いたマルクやアチェに国際協力機構(JICA)が専門スタッフを派遣し、平和構築のあり方を最前線で模索してきた。フィリピンのミンダナオ島では、貧困対策、平和構築のための支援活動に着手している。

 しかし、問題はこれらの支援が質量ともにまだ十分とは言えないことだ。東南アジア向けでは一番多いインドネシアでも、日本が行ったこの分野の無償資金協力は合計14億円余り(05年度実績)。インド洋での給油活動にかかった費用(燃料費と海自の活動費)は、6月末時点で累計560億円を超す。単純に比戟は出来ないにしてもけた違いである。

 テロリストが生まれてくる原因は国や地域によって多様だ。現場での十分な情報収集を踏まえたうえで、それを冷静に分析する必要がある。原因の特定を誤れば、テロ対策も誤ることになるからだ。

 インド洋上での自衛隊の給油活動は米国主導の有志連合各国から大いに感謝されている、と政府は強調する。数字を挙げて評価するのは無理だとしても、テロ組織の監視に貢献しているのは事実だろう。だが、それに劣らず関係国が日本に期待しているのは、もっと息の長い地道な支援ではないだろうか。

 その国の健康状態をよく見つめて、弱い部分を治療する。外科手術のような即効性はないが、着実に社会を改善し、テロ活動の温床を断ち切っていく。漢方療法にも似たそういう後方支援こそ、日本のお家芸ともいえるテロ対策のあり方であり、それこそが日本の矜持である。