いせ九条の会

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最近の6カ国協議の情報/山崎孝

2007-10-01 | ご投稿
朝日新聞10月1日付は、6カ国協議に関する報道を次のようにしています。

北京で開かれていた北朝鮮の核問題をめぐる6者協議全体会合は30日、非核化に向けた「次の段階の措置」の具体的な内容を定めた共同声明案で合意した。議長国の中国は、各代表団が本国の承認を得た後に声明を公表するとして2日間の休会を宣言した。協議筋によると、声明案は年内に北朝鮮の核施設3カ所を無能力化することやウラン濃縮計画も含めた核計画の申告を明記する一方、米国が北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除する方針も盛り込まれているという。

年内の無能力化の対象は北朝鮮・寧辺にある5千キロワット級の原子炉、核燃料再処理施設である「放射化学研究所」、核燃料加工施設の3カ所。核兵器の原料となるプルトニウムの抽出を防げるため非核化に向けた進展といえるが、すべての核施設の無能力化をうたった2月の合意の完全な履行とは言えず、解消すべき課題は残ったままだ。

休会後、ヒル米国務次官補は「とても詳細で包括的だ」と共同声明案を評価した。韓国の千英字・朝鮮半島平和交渉本部長によると、声明案で北朝鮮は「今年12月31日までに」との期限をつけて核施設の無能力化と核計画の申告を行うと表明している。協議筋によると、申告すべき核計画として、北朝鮮が存在を否定してきた「ウラン濃縮計画」にも言及している。

日米中韓ロの要員が近く訪朝し、3施設の無能力化の作業について技術的な協議をする。

一方、千氏は30日、北朝鮮の金種寛外務次官が6者協議の際に開かれた南北接触で、寧辺の核施設で生産したプルトニウムの保有量や用途を年内に申告する考えを明らかにした、と述べた。韓国政府当局者は「プルトニウムの量がわかれば核兵器を何個持てるのかある程度推測できる」と指摘した。ただ、北朝鮮は保有する核兵器は申告しない考えとみられる。

北朝鮮が米国の敵視政策の一環として解除を求めてきたテロ支援国家指定と対敵国通商法による制裁についても、声明案で米国は解除する方針を表明。その時期は明確にしていないという。

核施設の無能力化と核計画の申告の見返りとしての経済エネルギー支援については、提供の時期を特定せずに重油50万トン相当のエネルギー施設を提供することが声明案に盛り込まれているという。

共同声明案(骨子)●北朝鮮・寧辺の原子炉など3核施設を年内に無能力化、●北朝鮮はウラン濃縮計画を含む核計画を、年内に申告●米国の北朝鮮に対する対テロ支援国家指定と対敵国通商法の制裁を解除する方針、●非核化措置の見返りとして、北朝鮮に重油45万トンと重油50万トン相当のエネルギー施設の提供(以上)

《すべての核施設の無能力化をうたった2月の合意の完全な履行とは言えず、解消すべき課題は残ったまま》という欠点のある暫定合意ですが、朝鮮半島の平和的統一を目指す韓国にとっては今回の暫定合意は大きな意味がありました。

【韓国、対北支援に弾み 6カ国協議、合意文書案で】(2007年10月1日付中日新聞)

【北京=中村清】北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議が三十日、核施設の「無能力化」と核計画申告の「年内完了」を明記した合意文書案をまとめたことは、二日から平壌で開催される南北首脳会談への追い風となりそうだ。北朝鮮の非核化プロセスを前進させる今回の成果を受け、韓国は対北支援や経済協力を一層進めることになる。

「六カ国間の集中論議を経て、合意文書案で劇的に妥結した」。韓国首席代表の千英宇(チョン・ヨンウ)外交通商省平和交渉本部長は休会後、記者団に満足そうな表情を見せた。

対北融和策を掲げる盧武鉉政権は、休戦状態にある朝鮮戦争を終結させる平和協定締結問題や南北の新たな経済協力モデルの確立などが首脳会談の最重要課題になると判断。具体的な提案ができるよう準備を進めている。

平和協定も経済協力も、六カ国協議を通じた北朝鮮の非核化が大前提。今回の六カ国協議で成果がないまま、盧大統領が経済協力などを提起すれば、韓国内だけでなく日米などからも反発を買う可能性があった。

一方の北朝鮮も、七年前の首脳会談を機に開城工業団地や金剛山観光などの南北経済協力事業がスタートした実績から、今回も韓国からどれだけの大型支援を得られるかが最大の関心事だ。会談直前に「核」で前向きな姿勢を見せ、より多くの「見返り」を韓国から得ようとの思惑がのぞく。

一層の交流と経済協力を進めたい南北にとって、合意案は絶好の大義名分となる。韓国政府当局者は「六カ国協議で生じた非核化へのエネルギーが、南北関係の発展に新たな力を与えてくれる」と強い期待感を示した。(以上)

【北朝鮮経済制裁を延長へ 町村氏「拉致で進展ない」】(2007年9月30日付中日新聞)

政府は30日、北朝鮮に対する同国籍船舶の入港全面禁止や全品目輸入禁止など、10月中旬に期限を迎える日本独自の経済制裁を半年間延長する方針を固めた。北朝鮮による日本人拉致や、核開発問題を進展させるには「対話」とともに引き続き「圧力」が必要と判断した。

町村信孝官房長官は30日、都内で記者団に対し、北朝鮮との関係について「基本的に拉致問題で何ら進展がない。制裁をやめたり、緩和する客観情勢にはない」と表明。その上で「(拉致問題に)前進があれば条件は変わるが、今の時点ではそう(継続の方向)だ」と強調した。

北朝鮮籍保有者の入国原則禁止、高級食材など24品目の輸出禁止、ミサイルや大量破壊兵器開発との関係が疑われる口座の凍結を継続することについても「同じだ」と述べた。(共同)

【ライス長官:拉致未解決でも解除可能…テロ国家指定で示唆】(2007年9月25日付毎日新聞)

ロイター通信は9月24日、ライス米国務長官が同通信とのインタビューで、日本人拉致問題が完全に解決しない場合でも、北朝鮮のテロ支援国家指定の解除ができることを示唆したと伝えた。

長官は拉致問題について「恐ろしい人権問題であり、解決しなければならない」と強調。日本政府には「拉致問題を忘れない」という米国の立場を繰り返し示しているとして、北朝鮮に対しては「これからも強く(解決を促す)圧力をかけ続ける」と言明した。

その上で「しかし、北朝鮮に関連したすべてのステップが動かなくなるような状況には陥りたくない。米国は(北朝鮮に対し)適切な見返り措置を使うことができるようにしておかなければならない」と述べ、拉致問題とテロ支援国家指定解除問題を切り離して考える方針を示唆した。

ライス長官は22日の町村信孝外相との会談で、北朝鮮との関係発展のために「日本との関係を犠牲にすることはない」と述べている。(共同)

【参考情報】6カ国協議は、無能力化の手順をめぐって、9月半ばに北朝鮮で行われた米国、中国、ロシアの核専門家らの調査団と北朝鮮との実務協議の報告を受け、どの程度の水準で実施するかについて調整が行われたが、北朝鮮と米国はじめ5カ国の意見の違いがありました。

北朝鮮は核施設の主要部品を取り外して保管することで無能力化するとの単純な方法を主張しているのに対し、米国などは除去した部品に化学的処理を施し管理することなどを要求しています。核施設の主要部品を取り外して国際機関が管理する案も考えられています。

ライス国務長官は《北朝鮮に関連したすべてのステップが動かなくなるような状況には陥りたくない。米国は(北朝鮮に対し)適切な見返り措置を使うことができるようにしておかなければならない》と述べています。これは2月の6カ国協議の合意にそった発言です。2月の6カ国協議は、一つの作業部会の進展状況が他の作業部会の進展を妨げることがないという事項が入っています。ブッシュ政権は9月11日、バルカン地域の債務救済予算として確保していた2500万ドル(約29億円)を北朝鮮への重油5万トン支援に振り替える意向を議会に通知。議会が法的に定められた「5日間以内」に反対しなかったため、支援が承認されています。中国は重油5万トンを北朝鮮に提供済み、ロシアも同じ意向です。そして韓国は一番手の約5万トンの重油を供給済みで、更に《韓国は対北支援や経済協力を一層進めること》になります。

これらを見れば日本政府が従来どおりの圧力主体の北朝鮮政策で、拉致問題の前進が出来るとは考えられません。日本は東アジアの平和と安定という大局に立って、北朝鮮との国交回復を目指さなければなりません。北朝鮮と国交正常化している国は、国連加盟国192中、162カ国あるのです。

周知のように改憲を考える勢力の一番の宣伝材料は「北朝鮮の脅威」です。最近の新聞報道に見られるような情報を「九条の会」が宣伝していけば、その脅威の宣伝の神通力は極めて弱くなると思います。