いせ九条の会

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安倍首相 自ら火中の栗を拾う考えを示す/山崎孝

2006-11-16 | ご投稿
11月15日、安倍首相は、少数の意見(公立小中学の校長の66%が反対で少数意見ではない)も尊重しなければならないとした民主主義の理念を無視し、教育基本法改定案を与党だけで可決しました。

そして、憲法を守る立場におかれていることなど一つも念頭にはなく、盛んに憲法を破壊する言葉を述べています。共同通信のニュースを見てください。

【狙ったミサイル迎撃も、首相研究の必要性主張】

 安倍晋三首相は11月14日午後、米紙ワシントン・ポストのインタビューに官邸で答え、政府の憲法解釈で禁じられている集団的自衛権行使に関連して、国内で進めているミサイル防衛(MD)システムに触れながら「米国に向かうかもしれないミサイルを撃ち落とすことができないのかどうかも研究しなければならない」と主張した。

 首相は9月の所信表明演説で集団的自衛権行使に該当する分野としない分野ついて研究する考えを表明したが、その具体的対象としてMDに言及したのは初めて。日本上空に飛来し、日米のどちらを狙ったか判明しないミサイルを迎撃しても、集団的自衛権行使に当たらない可能性があるとの認識を示したとみられる。北朝鮮による7月の弾道ミサイル発射が念頭にあったようだ。

さらに「海外でのPKO(国連平和維持活動)の際に、一緒に作業している外国部隊は攻撃された時に救出することが憲法に反するのか」とも述べ、この点についても研究の必要性を指摘した。その上で「あまり幅を大きく広げず、具体的なケースについて研究を進める」と強調した。

首相は官房長官当時の9月に(1)日米艦艇が公海上で並走している際に米軍が攻撃された(2)イラク派遣の陸上自衛隊を警護した英豪軍が襲撃された―場合をそれぞれ挙げ、日本としても「自衛権」を行使できるよう事実上の憲法解釈変更を研究すべきだと主張していた。

これに関連しシーファー駐日米大使は10月の講演で、日本上空を米国に向かうミサイルを日本が撃ち落とすことについて「解決されなければならない重要な課題だ」と期待感を表明していた。

このほか首相はインタビューで現行憲法について「時代にそぐわなくなった条文もある」として自民党総裁任期2期6年間で改正を目指す考えを重ねて示した。(以上)

安倍首相は、東アジアの平和と安定を勝ち取ろうとする6社協議の成功に努力することより、成功しないと決め込んだ主張ばかりしています。日本の安全保障にとっては軍事を語ることより、6社協議を成功させることの方が遥かに合理的な方策です。国連加盟国も同じ考えです。それゆえに北朝鮮に関した安保理決議は二度とも6者協議への北朝鮮の復帰を呼びかけ、国連憲章の第42条の軍事制裁を避けて復帰への扉を開けていました。

与党だけで教育基本法改定案を可決したことは、子どもたちを平和的な国家と社会の形成者として育てるのではなく、「愛国心」を「国家及び社会に形成者として必要な資質」と規定して、再び国のために戦う若者を育てることを目標とする国家の方向です。安倍首相の米紙ワシントン・ポストのインタビューと共通する軍事志向の心を表しています。

安倍首相は「海外でのPKO(国連平和維持活動)の際に、一緒に作業している外国部隊は攻撃された時に救出することが憲法に反するのか」と述べましたが、日本のPKO活動はこのような事態には直面していません。PKO活動そのものが紛争当事者同士の紛争終結後を前提にした活動なので、仮に他国部隊が攻撃を受けた場合も偶発的で小規模なもので日本が救援しなくても、当該の外国部隊だけで対応できるものです。それにPKOは様々な分野があり、後方支援の分野を選ぶことが出来ます。

日本は国連加盟時に憲法の規定との整合性をとるため、武力の伴う国連活動を行えないと申請して了解され、このことに関して国連から異を唱えられたことはありません。

安倍首相は「米国に向かうかもしれないミサイルを撃ち落とすことができないのかどうかも研究しなければならない」と主張していますが、何もこのようなことを主張して、日本がわざわざ初めから攻撃の対象とされることになることを誘導する主張を述べる必要がどこにあるのでしょうか。自らが火中の栗を拾うものです。米国は巨大な軍事力を持っており、単独で他国の攻撃には対処できます。覇権国家の米国を攻撃するような国は自殺行為をすることと同じなのです。

米国が日本に集団的自衛権行使の要求をするのは、先制攻撃をしたイラク型戦争の占領作戦に日本を使いたいためです。安倍首相は様々なケースを言い立てて、米国に協力するための集団的自衛権行使を行う突破口を開こうとしています。