いせ九条の会

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ベトナムのドクさんの訴え/山崎孝

2006-11-15 | ご投稿
【枯れ葉剤被害:ベトナムのドクさん、米大統領に訴え「これ以上戦争しないで」】(毎日新聞 2006年11月14日付け)

ベトナムのハノイでアジア太平洋経済協力会議(APEC)が15日に開幕する。ベトナム戦争中に米軍が空中散布した枯れ葉剤の被害者とされる結合体双生児「ベトちゃん、ドクちゃん」の弟、グエン・ドクさん(25)は「(APEC出席予定の)ブッシュ米大統領に会えるなら、僕ら患者たちと会ってほしい。これ以上戦争を行わないで」と訴えた。ブッシュ大統領は17日、ホーチミンを訪問する予定だ。

ベトナムは、既に人口の約6割がベトナム戦争(60~75年)後に生まれた世代だ。政府は若年層の雇用促進と経済成長を図るため、00年に100%外国資本の導入を認め、05年の新規投資件数は過去最高の922件に上った。今年7月に北朝鮮がミサイルを発射した後には、国内の北朝鮮口座を凍結し、米国との関係改善を進めている。

一方で枯れ葉剤の被害者は国内に数百万人いるとされるが、公式の調査は行われず補償もない。

88年に兄ベトさんとの分離手術を受けたドクさんは、乳児の時から住み続ける国営病院の職員として働きながら、被害者支援を世界に訴える「象徴」として活動してきた。そのことにストレスを感じ、周囲に不満をぶつけたこともある。病院を離れて「好きな仕事で生きたいと思う時もあった」。

ドクさんはボランティアを通じて知り合ったグエン・チ・タイン・テュエンさん(24)と12月に結婚する。「悩みや葛藤を乗り越える力を与えてくれた人」だという。

結婚を考えた時、枯れ葉剤の影響を思って「将来授かるかもしれない子供や自分の責任を考えた」。しかし「障害児でも大切な我が子。自分の役割から逃げ出せば、兄や同じ被害に苦しむ人々の叫びが消えてしまう」と考え直した。「ブッシュ大統領を前にしたら、怖くて何も言えなくなるかもしれない。でも、僕たちを一度見てほしい」

若いカップルの夢は「小さくてもいいからベトナム民芸品の店を持つこと」だという。(以上)

グエン・ドクさんの、「これ以上戦争を行わないで」という訴えを正面から受け止めているのは、日本国憲法の前文と第9条です。

ベトナム戦争で掲げた米国の大義は、共産主義者から自由と民主主義を守るためでした。しかし、米国は南ベトナムの軍事独裁政権を支援する。それに抗議して僧侶は焼身自殺を図る。トンキン湾事件の謀略を起こして、それを口実に北ベトナムまで戦争を拡大させた。南ベトナム解放民族戦線のゲリラ戦に対抗するため森林に枯葉剤を大量に散布して森林を裸にする。その結果、村民の健康に大打撃を与えた。人間性を失った米兵はソンミ村虐殺事件を起こします。

イラク戦争で米国が掲げた大義は、大量破壊兵器の脅威除去からイラクに民主主義を植えつけることに変更、テロとの戦いも掲げます。しかし、イラク戦争に参加し、中間選挙に立候補した元米兵は、共和党の立候補者とのテレビ討論で「自分たちの戦いがテロリストを生み出した」と発言。米国国家機密文書「国家情報評価」の結論は「イスラム世界への米国の干渉は深い恨みを生み、地球規模のイスラム過激派運動への支持を拡大させた」と分析。そしてイラクの政治家からは「ラムズフェルド氏が行ったことは倫理、そして人間としての姿勢にもとるものだった」と言われました。

このように戦争は見栄えの良い大義は掲げますが、行うことはそれと裏腹のことをもたらします。ベトナム戦争の教訓を忘れさせたのが、9・11テロ事件からの米国人の熱狂的愛国心です。そして米国はイラク人に大きな犠牲を払わせ、自らも大きな代償を払って愛国心の熱狂から醒めました。

未だにイラク攻撃は正しいとする国家の指導者や政治家たちがいる日本は、教育基本法改定や改憲をされたら、戦争の轍を踏まないとは言えません。北朝鮮のミサイル発射と核実験を好機と捉えて、軍事議論に走ったことでもこのことは言えます。