いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
会の趣旨に賛同される方、メールでご投稿ください。

韓国の宥和政策が揺るがないのは韓国民の支えがある/山崎孝

2006-11-17 | ご投稿
【北朝鮮追加制裁行わず 韓国、米要求を拒否】11月14日共同通信ニュースより

韓国政府は11月13日、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議に基づき制裁委員会に提出する決議履行計画などを発表、実質的な追加的制裁措置を取らない方針を明らかにした。

 北朝鮮の核実験後、米国は勧告の融和政策への批判を強め、大量破壊兵器の拡散防止構想(PSI)参加拡大と南北経済協力事業見直しを求めていた。発表は、北朝鮮を刺激するのを避けるため、要求への「ゼロ解答」に近い内容で、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を前に日米との足並みの乱れが露呈した。

 発表によると、韓国としてはPSIへの正式参加を拒否する従来の立場を維持。PSIの「目的と原則は支持する」とする一方、朝鮮半島周辺海域での貨物検査は、南北の海運合意書に従って対応するとしている。

 南北経済協力事業のうち、金剛山観光に対する政府補助金の支出は中断するが、補助金の額は過去2年間で計約80億ウォン(約10億円)と少額で、事業自体は継続することも決めた。

 開城工業用地開発については、追加分譲の停止措置を継続。資金の行き先が不透明と批判される北朝鮮当局を介した労働者への賃金支払い方法の改善に取り組むと強調するにとどまった。

 韓国は、北朝鮮船舶に対する臨検活動への関与は軍事衝突を招く恐れがあるとして、PSI参加は域外訓練へのオブザーバー派遣程度にとどめてきた。南北海運合意書は2004年に締結されたが、船舶検査が行われたことはない。(以上)

米国の圧力に屈せず、南北宥和政策を基本的に維持する韓国政府の態度を支えている、次のような韓国国民の考え方があります。

「世界」12月号のインタビュー記事で、作家の山口泉さんは、韓国の思想家で民主化運動を戦い何回も投獄され、韓国の人たちに強い影響力を持っている李泳禧(リヨンヒ)さんの次の言葉を紹介しています。

 氏は語った。「二十五、六年前だったら、三十八度線の周辺でいざこざがあっただけで、韓国ではアメリカへの移民申請がどっと増えた。ところがいまでは、北が核を持ったと発表してさえ、誰も驚かない。移民なんて考えない。北が南を攻撃すると、まじめに考える人はあまりいない。北に対しても、彼らの窮状をなんとかしてやらねばならないという思いが大衆の間に拡がりつつある。アメリカはそこが、非常にいやなんだ。逆に金剛山ツァーはどんどん増えている。核政策に関しても、盧武鉉大統領は、同族内部の戦争につながることはしない。その点が、また国民に受けている。最近では“北は戦う相手にならない。彼らをなんとか食わしてやらなければいけない”―そういう機運が、国民の間に出てきた。ある意味では合理的な。それは、アメリカの思惑と大いに異なるところだ。アメリカとぐるになった反共右翼によって作り上げられる、増幅された恐怖に真に受けてばたばたしなくなった。北からの亡命者の言葉に、いちいち踊らされたりしない。(抜粋)

韓国の人たちは、北朝鮮に攻撃され戦争をした。大統領選挙の前も南北の軍事衝突が海域で有りました。それでも宥和政策を主張する盧武鉉大統領を選んでいます。北朝鮮の脅威を根拠に民主主義を弾圧した幾つかの政権と韓国民は戦い、自らの力で民主主義を獲得した韓国人の、肝の据わった考えを改めて感じる言葉です。

それに引き換え、《反共右翼によって作り上げられる、増幅された恐怖に真に受けてばたばたしなくなった。北からの亡命者の言葉に、いちいち踊らされたりしない》と、反対の現象が日本の映像マスメディアに見られます。

日本の政治家たちは、北朝鮮がミサイルに核兵器を搭載する技術を確立していないのに、今にも攻められるような雰囲気を煽り、日本の先制攻撃論さえ唱えました。無理に周辺事態法を適用して米軍の船舶検査に協力し、そこで起きる米軍への攻撃を想定して自衛隊が参戦することさえ主張しました。これは国連加盟国に求めた、安保理決議の紛争を拡大させないようにするとした精神に反して、極めて軍事に偏る姿勢です。憲法解釈を変更するのに北朝鮮問題を利用する態度です。北朝鮮と積極的に対話して平和と安定を勝ち取ろうとする姿勢は、ほとんど見られません。このような政治家に日本国民は同調してはなりません。