いせ九条の会

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戦争は傲慢を恋い慕う/山崎孝

2006-11-11 | ご投稿
朝日新聞11月10日付け「天声人語」より抜粋(前略)▼多くの人命と国の命運がかかる戦争は、政策を超えた歴史にかかわる選択だ。その選択に対して国民が投げかけた大きなノーの行き先が、イラク戦争の担当閣僚にとどまるはずはない。戦死した米兵や各国の兵だけではなく、おびただしいイラク人の犠牲とどう向き合うかが大統領には問われている▼イソップに「戦争と傲慢という話がある。神々が結婚式を挙げ、各々伴侶が決まった時、戦争(ポレモス)は皆に遅れて到着した。そして、一人しか残っていなかった傲慢(ヒユブリス)をめとる▼戦争が傲慢を恋い慕うこと一通りではなく、この女神の行く所どこへでもついていった。「されば、傲慢が民衆に笑みを振りまきながら、諸国民諸都市を訪れることのないように。その後から、たちまち戦争がやって来るのだから」(『イソップ寄話集』岩波文庫・中務哲郎訳)▼ラムズフェルド氏については、以前から、おごりともとれる姿勢が指摘されていた。大統領は、その「傲慢」を常にそばに置き、称賛してきた。どこか、ポレモスと重なってみえる。(以上)

「天声人語」の指摘にはとても鋭いものを感じます。「傲慢が民衆に笑みを振りまきながら」というイソップの寓話を、傲慢なのに人々には笑みを振りまきながら大切なものを破壊すると捉えて発想してみると、石原都知事を思い浮かべます。古い排ガス装置のトラックを東京に乗り入れさせない排ガス規制とか、銀行に対する特別課税とかで都民の人気をつかみながら、一方では障害者に対する人格への疑問発言や三国人発言、中国を昔風に支那とかと軽蔑的に呼んで、人を傷つけ、日本の国際的な信用を落としています。

小泉前首相も金権体質とか派閥談合体質の自民党をぶっつぶすといいながら国民の支持を獲得する。しかし、大切な国是である憲法の精神は破壊します。イラク戦争を支持して挙句の果てに、国際的には否定された米国のイラク戦争の正当性を証明に手を貸するために、重装備の自衛隊をイラクに派遣し、結果として国際テロ組織や反米武装勢力から日本人が標的にされます。靖国神社も幾度も参拝します。海外でも武力行使を可能にした自民党新憲法草案を作成します。これらは隣国との友好関係を破壊し、隣国に警戒感を抱かせ、日本の国際的な信用を落としています。

傲慢な心は、事実を正確に把握できず、また、正直に見ようとしません。ラムズフェルド国防長官の傲慢な発言を挙げてみます。

2003年1月 イラク攻撃に反対姿勢をとる仏独に対して記者会見で、「欧州全部が仏独のようだと思っているかも知れないが、そうではない。あれは古い欧州だ」。しかし、事実は古いと言った欧州の方が情勢と成り行きを正確に捉えていました。イラク戦争は泥沼化して、イラク戦争前に欧州で行われた世論調査は、国際的な安定にとって、サダム・フセイン大統領よりも、アメリカの方がよほど脅威であると多くの欧州の人々が回答していました。

2003年4月 米英軍がバクダッドを制圧した時の記者会見で、「イラクの人々は、米英軍が空爆で行った正確さに敬意を持っていると思う」、「イラク国民にとって素晴らしい日だ。戦闘が続いているが、解放の過程にある」。当時の新聞は、米英軍とフセインの親衛軍隊との激突を予想していました。しかし、イラク正規軍はまともな戦闘をせずどこかへ消えてしまいました。あまりにも早いイラク正規軍の崩壊の裏には、勝ち目のない正規戦である正面戦争を放棄、組織を分解・分散させていたのでした。イラクの軍人たちはゲリラ戦に方向転換をしていました。フセイン政権崩壊の混乱に乗じて、国際テロ組織はイラクに侵入してきました。これらを米軍の諜報機関は把握していなかったのでしょうか。ブッシュ政権は自分たちの政策目的に合うイラク情報のみを重視したといわれます。

2004年2月 イラクで大量破壊兵器が発見されない状況下の、上下両院の公聴会で、「世界はフセイン大統領に欺かれたかも知れない。地中に隠されたら発見は難しい」。でも、米軍は地下に潜むフセインを発見しました。それは確実に「存在」していたからです。

次の文章は「FMCULB」(音楽雑誌)2003年6月発行「社交の部屋」欄に掲載してもらったものです。

【漂う雲に想いを寄せて ―雲と大衆歌謡―】蝸牛氏は「FMCLUB」No.35号「雲散」の中で、「何の感情を持たない微粒な雲散霧消する水滴達に物理的なもの以外の感情を持たないのは自由ですが、むしろそうすることが難しそうです」と述べておられます。そして、イラクの空に想いを馳せています。米軍は人の多く住む地域に親爆弾一発で200個もの子爆弾をばら撒くクラスター爆弾の投下や、ピンポイント攻撃といっても10%の確率で目標から外れるのを承知で猛爆撃を行いました。朝日新聞報道ではバクダッド主要6病院の医師の証言だけでも攻撃開始の2003年3月20日から4月10日までに民間人死者数約1000人、ケガ人6000人前後生まれています。

それでも「イラクの人々は、米英軍が空爆で行った正確さに敬意を持っていると思う」(米国防長官4月9日記者会見)と語る政治指導者は、鉄面皮で想像力を欠き、雲に物理的なもの以外の感情しか持たない人だと思います。(以下略)私の文章は雲という言葉が入った日本の歌謡曲を取り上げて日本人が雲をどのように表現し、どのような想念を抱いたかを書きました。

政治指導者の傲慢な心は事実を正確に捉えることは出来ません。時にはデマゴギーを使います。国民の多くがこれに絡め取られると戦争に持っていかれます。そのためにも歯止めとして、現行憲法の政府の行為により再び戦争の惨禍が起こらないようにする。国際紛争を武力で解決してはならないとする決意と規定を失ってはならないと思います。