いせ九条の会

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教育基本法改定案は「新たな理念」とは/山崎孝

2006-11-23 | ご投稿
共同通信のニュースの抜粋です。【国旗国歌尊重は重要―首相 教育基本法改定案「新たな理念】安倍晋三首相は11月22日午前の参院教育基本法特別委員会で、教育現場での国旗国歌への対応について「学枚のセレモニーを通じて敬意、尊重の気持ちを育てることは極めて重要。政治的闘争の一環として掲揚や斉唱が行われないとすれば問題だ」との見解を示した。

また、同法改正案に「公共の精神」などを盛り込んだことに関し「新しい時代に合った理念、原則を定めた。戦後60年たった今こそ改正し、新しい理念の下で再スタートを切る必要がある」と意義を強調した。自民党の舛添要一氏への答弁。(以下略)

9月21日、東京都立の高校や養護学校などの教職員が都教委などを相手に、起立や斉唱義務がないことの確認を求めた訴訟の判決を下した東京地裁の難波孝一裁判長は、日の丸や君が代が皇国思想の精神的支柱として用いられてきた経緯に言及。式典での掲揚や斉唱に反対する主義・主張を持つ人の思想・良心の自由も憲法上保護に値する権利だと述べました。

東京地裁の難波孝一裁判長が言及した、日の丸や君が代が皇国思想の精神的支柱として用いられてきた経緯を見ると、戦前の教科書には「日本人のいるところには、かならず日の丸の旗があります。(中略)敵軍を追いはらって、せんりょうしたところに、まっ先に高く立てるのは、やはり日の丸の旗です。兵士たちは、この旗の下に集まって、声をかぎりに、「ばんざい。」をさけびます。日の丸の旗は、日本人のたましいと、はなれることができない旗です。」と書かれていました。

この歴史を教えることは、教育基本法に決められた教育の目的「平和的な国家及び社会の形成者」を養うことと合致した教育です。

安倍首相こそ幹事長時代に、首相になってから封印せざるをえなくなっている、従来の教科書を自虐史観と批判してそれにかわるものとして作った、扶桑社の教科書を各地の教育委員会が採択するよう、自民党の各支部に“激”を飛ばしています。これは明らかに教育現場に対して特定の思想を持ち込もうとする政治闘争です。

教育基本法改定案で養うとした「公共の精神」は、人と人との対等平等の関係の社会の公共を言うのではなく、縦関係の国家と個人という対等平等ではない関係における「公共の精神」を指します。だから教育に国家の介入を否定した現行教育基本法を変えて、国家の介入が出来るように条文を変更しました。

教育基本法第10条(教育行政)は「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対して直接に責任を負って行われるべきものである」と定めています。それを教育基本法改定案第16条(教育行政)は「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、…」と書き換えています。

他の法律とは東京都教育委員会が発した通達の類も含まれ、裁判所から「教育の自主性を侵害し、一方的な理論や観念を生徒に教え込むに等しい」と指摘され、国旗掲揚の方法まで指示するなどは「必要で合理的な大綱的な基準を逸脱した」として、校長への「不当な支配」に当たると指弾されたものです。

このようなものが「新しい理念」ではないことは明らかです。戦後60年たった現在から、戦前の「国家主義教育」へ逆戻りをしようとするものです。