いせ九条の会

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とても気前の良い話とその他/山崎孝

2006-02-24 | ご投稿
麻生太郎外相は、2月20日の衆院予算委員会で、沖縄の米海兵隊約7千人のグァム移 転費用を日本 が負担することを「日本 の国益につながる」と述べました。

移 転対象とされているのは、米海兵隊の司令部要員や後方支援部門が中心です。しかし、実際に県民の重圧になっている部隊は、臨戦態勢維持のために横暴な訓練を繰り返す実戦部隊です。これを麻生外相は「7千人減るというのは極めて大きな数字だ」と沖縄の負担軽減になると強調しますが、沖縄県民にとって、移 転計画は「負担軽減」といえるものではありません.

沖縄の実戦部隊は、いまも数々の被害と苦痛を与えています.

例をあげれば、∇米海兵隊普天同基地のヘリが市街地にある沖縄国際大学に墜落(2004年8月)

∇金武町では住宅地と隣り合わせにあるキャンプ・ハンセン内で都市型戦闘訓練。

日米両政府 が移 転方針を打ち出した際、地元紙は社説で「歩兵や砲兵など実戦部隊が残るのであれば基地の『危険性』はそのまま残る。数さえ減れば負担軽減になるという考えは欺瞞と言うしかない」(沖縄タイムス、昨年10月30日付)と批判。基地を抱える自治体の首長からは「将校がいなくなり前線兵士だけが残れば、沖縄はサファリパーク状態だ」(辺土名朝一北谷町長=当時)という声まであがりました。

更に日米両政府 は名護市沖には海兵隊の航空部隊のために最新鋭基地の建設の負担も検討しています。(以上「しんぶん赤旗」電子版を参考)

日本 政府 は在日米軍のために「思いやり予算」を組んでいます。2005年度の「思いやり予算」は、2378億円です。これは中小企業対策費の1・4倍 だということです。

「思いやり予算」の使い道は、米軍基地で働く人の給与と社会保障費など、基地施 設の建設費(米兵の住む住宅も含む)、米兵が使用する水道・光熱費などです。

このような日本 が負担をしている在日米軍は、国際法違反といわれたイラク戦争に日本 から出かけています。

共同通信の電子版は、イラクなどを管轄する米中央軍のキミット計画副部長(陸軍准将)は2月21日・ワシントンで記者会見し、イラクで活動する自衛隊に関し「(航空自衛隊の)C130輸送機の活動変更に関する決定がなされるだろう」と述べ、空自の活動拡大に期待感を示した。

米側としてはイラク南部サマワで活動している陸上自衛隊の撤退を想定、クウェートを拠点に主に自衛隊の物資を輸送しているC130 3機がバグダッドなどの米軍拠点まで活動範囲を拡大することを示唆しているとみられる。

キミット准将は日本 の貢献に謝意を表するとともに「日本 政府 がサマワから撤退する決定をしても、将来も貢献を継続すると理解している」と述べ、日本 の貢献継続を暗に要精した、と伝えています。

日本 政府 はイラクでの航空自衛隊の後方支援活動は継続するとの方針と朝日新聞は既に報道しています。

小泉政権はイラクの人道復興支援を看板にイラクに自衛隊を派遣しましたが、米国がイラクで日本 に本 当に行なって欲しいことは、治安維持活動(戦闘行動)であり、米軍の後方支援活動なのです。



私の自民党改憲の狙いという文章に対して、このブログに改憲派のコメントがありました。自民党の改憲目 的は、国際社会の平和と安全を維持するための活動に参加するだけ…誇大妄想は止めてとあります。

誇大妄想とは一人或いは極めて少数の人が抱く現実とかけ離れた想念をいいます。しかし、「九条の会」は2004年6月10日にアピールを発表して以来、1年半余りで全国に4000を超す組織が結成されて、その組織には多くの人たちが結集しています。アピールには、改憲の意図を『日本 をアメリカに従って「戦争をする国」に変えるところにあります』と書かれています。これを見れば誇大妄想という表現は妥当ではありません。

「九条の会」の発起人のひとり大江健三郎氏はノーベル文学賞を受けて世界的に評価されて、外国の大学の講義を受け持ったことがあり、昨年は外国講演を行っております。「九条の会」が述べていることが誇大妄想と思うのであれば、誇大妄想を抱くような人物を外国の大学が招くはずがありません。

「九条の会」の発起人のひとり加藤周一氏は、朝日新聞に毎月文章を書いています。新聞の連載タイトルは「夕陽妄言」ですが、新聞社が毎月文章を書いてもらっているということは、読者にその考えが理解されている証左であります。大江健三郎氏の文章も毎月連載 されています。

2006年2月22日の「夕陽妄言」は「人生3期」というテーマで次のような文章を書いています。

『幼年では家庭、中年では職場、どちらの場合にも集団の圧力は圧倒的である。したがって行動様式も相似る。子供の場合には、社会化の不十分のため、与えられた文化の受容へ向かう(「良い子」の定義)、中年の場合には、社会化の行き過ぎのため、大勢順応主義へ向かう(かつての組織への忠誠、今日の個人の安全保障)。そこから大勢順応保守主義を破る個人の、市民としての、独立の精神は、容易に成立し難い。もし一身独立しなければ、福沢諭吉が指摘したように、一国独立することもないだろう』。

この文章は市民意識がしっかり確立されていない現在の日本 社会で生きる日本 人の精神形成を分析しつつ、日本 の外交課題である自主独立の問題を指摘しています。「妄言」とは逆の文章です。

国際法違反と国連事務総長に言われたイラク戦争に、日本 政府は米国を支持し自衛隊を派遣した行為が「国際社会の平和と安全を維持するための活動」でないことは明らかで、将来的にもこのような活動が「国際社会の平和と安全を維持するための活動」になりうる筈がありません。

小泉首相は2005年9月28日の衆議院の代表質問に改憲について次のように答弁しています。

憲法9条や自衛権のあり方には様々な議論があるが、戦後60年のわが国の歩みを振り返れば、国民が軍国主義を否定し、国際的な平和と安定に積極的に寄与していることは国際的に理解が得られている。憲法改正議論も、この方向を堅持しながらわが国の実態に合致するものを模索すべきだ。大いに国民的議論を深めてほしい。

首相が言うように「国民が軍国主義を否定」仕切ったといえるでしょうか。先にブログで紹介した小泉政権の閣僚の歴史認識ではそうとはいえません。

東京裁判に関する麻生外相の答弁は「少なくとも日本の国内法では犯罪人扱いの対象になっていない。戦争犯罪人とは、極東軍事裁判所の裁判によって決定された犯罪者だ」朝日新聞の記者は、日本が責任を問うた人たちではないというわけであると書く。安倍官房長官も「まさに戦勝国によって裁かれた点において責任を取らされた」と述べ、同じ認識を示したとも書いています。

「国際的な平和と安定に積極的に寄与」も、外国から、日本 を安全保障理事会に加えると米国の票をもう一票増やす。また米国のポチなどと言われていますから、日本 の外交的権威からは余り誇れることをしているとは思えません。

小泉首相の考え「わが国の実態に合致する」憲法という考えを、現在の自民党政治の実情と結びつければ、2006年1月18日の日米防衛首脳会議で、ラムズフェルド国防長官にイラクの治安維持に参加を要請されたように、日米協調を将来的にも保つためには、外国での武力行使に参加する現実的な課題があります。この課題を果たすことの出来る憲法にすることが「わが国の実態に合致する」憲法と言えます。

「九条の会」はこのような自民党政治の現実から出発して、憲法を守ろうとしています。